元のスレッド
吸血大殲第42章 殲鬼を駆り立てるは千の軍靴
- 1 名前:アルクェイド ◆aRCueIdY 投稿日:02/09/28 08:32
- このスレは、吸血鬼や狩人、あるいはバケモノやそれを狩る者達が闘争を繰り広げる場よ。
もちろん、闘争だけじゃなくて名無しのみんなの質問も随時受け付けてるわ。
遠慮せずに質問してみて、きっと答えが返ってくるから。
新規参戦者は『吸血大殲闘争者への手引き』のルールに眼を通しておこうね。
その上で>2のテンプレ使って自己紹介もちゃんとやってほしいな。
後、このスレは完全にsage進行よ、協力お願い。
■『吸血大殲闘争者への手引き』
ttp://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/vampirkrieg.html
■専用掲示板(雑談・闘争の打ち合わせなどはこちら)
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後は関連リンクね。
■参加者データサイト『吸血大殲 Blood Lust』(左手作成・過去ログも全てこちらにあり)
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『From dusk till dawn』 『戦場には熱い風が吹く』 (仮閉鎖中)
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■前スレ
吸血大殲第41章/血桜之巻
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/
■太陽板の質問スレ
吸血大殲/陰 其の15 混沌屋敷『眩桃館』地下 〜大殲資料の間〜
http://www.alfheim.jp/~narikiri/narikiri/test/read.cgi?bbs=TheSun&key=1021881487
- 2 名前:アルクェイド ◆aRCueIdY 投稿日:02/09/28 08:32
- 出典 :
名前 :
年齢 :
性別 :
職業 :
趣味 :
恋人の有無 :
好きな異性のタイプ :
好きな食べ物 :
最近気になること :
一番苦手なもの :
得意な技 :
一番の決めゼリフ :
将来の夢 :
ここの住人として一言 :
ここの仲間たちに一言 :
ここの名無しに一言 :
- 3 名前:シュレディンガー准尉(M)投稿日:02/09/28 08:32
- ロシアンルーレット 導入
「ってワケで、お三方には今から殺し愛をしてもらいまーす。ちょっと違うけどね♪」
半ズボンのSS制服を身につけた猫耳の少年が、ターンテーブルを囲んで座る三人の真ん中で喋っている。
つまり、ターンテーブルの上にあぐらをかきながら、だ。
手の中には小柄な身体にはあまりにも不釣り合いに巨大な一挺の拳銃が、収まり悪そうに存在している。
そのリボルバーに込められているのは、対化物仕様にヘルシングで製造される爆裂徹甲弾。
あのにっくき鬼札(ジョーカー)、アーカードの使用する破壊のためにある銃弾だ。
それが、今はシュレディンガー准尉の手の中の銃に一発だけ込められている。
一発だけ――――そう、シンプルな殺し合い。
命を賭けたゲーム、ロシアンルーレット。
それを行うために三人の人外と人間が椅子に繋がれている。
一人はヘルシングの鬼札の二、アルカード。
もう一人はどこかの真祖の継嗣だとかいうチンピラ吸血鬼、名を確かフロストと言ったか。
三人目は浅倉威と言うらしい、よくは知らないが脱獄犯らしい。
何故、彼らがこうして対峙しているのか理由は知らない。
ただ、彼らの見届け役を准尉は命じられただけだ。
少佐の命令は絶対だ。
クソ狭い部屋の中で、その命令を果たすべく准尉はそこ存在していた。
「――――――じゃ、三人とも頑張ってね〜、一人は約束通り解放してあげるから」
軽薄に准尉は始まりを宣告し、銃をコトリ、と置いてターンテーブルを降りた。
そのまま壁にもたれながら、にやにやと三人を見物する。
「誰が先に行くのかなー?」
- 4 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/09/28 08:33
- そして伝説へ・・・
- 5 名前:説明投稿日:02/09/28 08:42
- *ロシアンルーレット ルール
判定はトリップで行われる。数字・記号が出た場合、ハズレとなり、弾丸発射。死亡。
六回目の判定は行われず、自動的に死亡となる。(絶対にハズレを引くため)
- 6 名前:ディーコン・フロスト ◆F/BoKuQw 投稿日:02/09/28 08:52
- >3>5 ロシアンルーレット
静けさが沈殿する、海溝のような部屋。中央からは折々ぶつぶつと点滅する古びた裸電球。
煤けた壁面が、うっすらと浮く埃の向こうにゆらゆらと闇を漂わせている。飛び交う蝿がたかる
のを、掴み取っては舐め取る。
陰気なところだ。それがフロストの第一印象。
ターンテーブル越しに向かい合う影ふたつ。まるで動かない。
一丁の拳銃を前に、影は微動だにせずに止まっている。
――おまえら、深海魚か。
「おいおい、ブルってんのかよ」
軽口を叩き、フロストは銃を取り上げる。無骨で長大な銃身は、振り回せば棍棒と等しく人体を
破砕できるだろう。
ただし、今の使い方はそうじゃない。銃口を顎の下に当てる。
ハンマーを引いて、セット。
「俺はな。吸血鬼の神になるんだよ。てめえらみたいな三下とは格が違うってのを」
ニヤ、と嗤う。黒い自信に満ちた、悪意を隠そうともしない喜悦。
「見せ付けてやる」
銃爪が、引かれる。
- 7 名前:ディーコン・フロスト ◆F/BoKuQw 投稿日:02/09/28 08:57
- >6 判定:F ――生存
がきん、と響く金属音。
それが聞こえて、フロストは哄笑する。
「ハ、ハハハ! ヒヒッな!? 俺はこんなことじゃ死なないのさ」
拳銃を投げて棄てる。ターンテーブルの上で踊る銃身。
「ほら、次はあんたらの番だ。さっさとやりな」
椅子にふんぞり返った姿勢で、フロストが嗤う。
- 8 名前:浅倉威 ◆OUJAvZZs 投稿日:02/09/28 09:14
- ロシアンルーレット
>6>7
「ハァ―――――――」
口元を歪めて、蛇柄の皮ジャンを着た男、浅倉の視線は黒光りする大きな銃に向けられている。
昏い部屋の中で、欲情したような、凄惨なその瞳の光は際立っていた。
生と死のギリギリの境界線、そこに立っていない限り満たされない、狂人の目。
その目が、そばに座っていたコートの吸血鬼、アルカードの手が銃に伸びるのを捉えた。
浅倉の手が素早く伸び、アルカードの手と重なる。
とはいえ、どっちも慌てて手を引っ込めるような思春期の男女ってわけじゃない。
「俺にヤらせろ・・・・・・」
餓えた獣のような、擦れた声。
その声に大げさに肩をすくめ、アルカードは浅倉に銃を譲った。
銃口をこめかみに貼りつけ、浅倉は引きがねを引く。
死が発射される寸前まで、浅倉の目はただ歓喜に光っていた。
- 9 名前:浅倉威 ◆sO6m8sK6 投稿日:02/09/28 09:15
- >8の判定用だ―――――――
- 10 名前:浅倉威 ◆sO6m8sK6 投稿日:02/09/28 09:18
- >8>9 判定:s ――生存
が、そのデカイ銃口は何も吐き出すことはなかった。
「は、デカイだけかよ」
落胆したような拍子抜けしたような表情。
しかし笑みは崩さないまま、テーブル上へと乱暴に銃を放り投げた。
- 11 名前:アルカード(M) ◆/.uiBII6 投稿日:02/09/28 09:34
- >6>7>8>9>10 ロシアンルーレット
酷く滑稽な話だ。
アーカードを殺すための銃、その試験場に集められた三人の死に損ないと一匹の猫。その中に自分が、ヘルシングの鬼札
の為り損ない「アルカード」が混じっていることが。命じられた? オーダー? 違う。ただ、愉しそうだったから。
珍しく、お手当の出ない時間外労働だった。重い、吸血鬼にしてみれば羽根の如き頼りなさだが、ヒトからすれば破壊の
代弁者たる銃。それを手に取り、こめかみに押し付け――――――外す。
「おっと、いけないいけない。ここじゃ吸血鬼は死にきれない」
銃口を自らの胸へ、コートを破り皮を破り筋を破り、直接心臓へ銃口を埋める。溢れる鮮血に銃はたちまち染まるが、
意にも介さない。壊れる肉体の感触と零れる動血の冷たさに凄惨な笑みを浮かべ、脈打つ鼓動へ狙いを定めた。
「しっかりやらんと、ね」
トリガー。
- 12 名前:アルカード(M) ◆/.uiBII6 投稿日:02/09/28 09:44
- >11 ロシアンルーレット
/:記号 →死亡
ドム。
くぐもった銃声。肉と血の壁に阻まれ、奏でるべき轟音は殺されて散る。
ただ、その銃弾だけは事実。事実は吸血鬼の心臓を喰らい、食いちぎり、噛み砕く。
炸裂し、弾け、広がる銀は瞬時に肉の塊をクラッシュし、ミンチへ変える。あとはただ、血が広がるばかり。
「――――――――――――は、ハハハッ」
口からも血が零れた。
不死者に死を与える銃弾。
あの不死の王相手に正面から挑み、死の固まりに死を与えようとする荒唐無稽。
だがそれは、為り損ないを殺すには十分すぎる代物だった。
「思ったより・・・」
膝が崩れる。その先も灰と化し、砂塵に帰す。
「愉しいじゃないか、ええ?」
猫擬きへ視線を移す。指先から崩れ落ちる手を最後の力で振るい、手にした銃を放り投げた。
「さあ、続きだ。続きを――――見せ――――ろ――――――――――」
それが両腕に抱えられるのを見届け、吸血鬼は消えた。跡に鍔広の赤い帽子だけ残して。
(アルカード:死亡)
- 13 名前:シュレディンガー准尉(M)投稿日:02/09/28 09:54
- >11>12 ロシアンルーレット
「あれぇ、アーカードの銃弾でアルカードが死んじゃったよ? あはは、つまんなーい」
皮肉気な言葉と裏腹に、准尉の口調には何処までも邪気がない。
「わっと……あんまり乱暴に扱わないでよ、この銃は結構貴重なんだから。
続きが見たいって、それじゃ無理でしょ鬼札もどきさん?」
アルカードから投げ渡された銃を、手をわたわたさせながら何とか受け止めた。
相変わらずアンバランスなそれを、何事か両手であちこちいじくっている。
数分の悪戦苦闘の末に、横にずれたリボルバーに新たな一発の銃弾を差し込んだ。
「残ったのはフロスト、そして浅倉さんかぁ。うわぁ、お兄さん荒んだ目つきしてるね〜? 電波?」
カラカラ、カラカラと回るリボルバーに目もくれず軽口を叩く。
「こっちのお兄さんは……何だか伊達男(トバルカイン)と同じ匂いがするなぁ。
自信満々なくせにツメが甘いタイプって言うの?」
回り、回り、回り……リボルバーが納まった。
改めてその銃をターンテーブルに置いて、また壁際に下がる。
「それじゃ泣いても笑ってもこれが最後のラウンドツゥー――――ファイッ♪」
おどけた様子で、死の宣告を下す准尉。
たった一発の銃弾が、一回のトリガーが二人の生死を分ける――――。
- 14 名前:ディーコン・フロスト ◆ara86QfU 投稿日:02/09/28 10:09
- >13 ロシアンルーレット
ハズレを引いて、ぶっ倒れる吸血鬼。くはは。お似合いだ。三下。
フロストは嗤いながら血濡れの席を睥睨する。
これで、残るのはあとひとり。
イカレた眼つきはしてるが、ただの脆弱そうな人間だ。まともに殺しあえば二秒かからず八つ裂
きに出来る。少なくともフロストにはその自信があった。
だが、これはゲームだ。愉しもうじゃないか。
フロストはターンテーブルに手をかけ、思いっきり廻す。
吸血鬼の膂力でかけられた回転が、渦潮を髣髴とさせる。
手を伸ばす。フロストの掌中に、銃は吸い込まれるように入ってきた。
「俺の数多い自慢のひとつが――賭けに負けたことがないってもんでね」
こめかみに銃口をあて、おどけた顔で舌を突き出すフロスト。
相手を馬鹿にする仕草が、この男がすると何倍もの悪意を感じさせた。
「つまり、この勝負、てめえの負けなんだよ」
銃爪が引かれる。
撃鉄が稲妻のように走り、そして――
- 15 名前:ディーコン・フロスト ◆ara86QfU 投稿日:02/09/28 10:12
- >14 判定:a ――生存
渇いた金属音だけが、また響く。
死の鉄槌は、またもフロストには落ちなかった。
「ほら、撃てよ」
ターンテーブルに銃を乗せ、回転させるフロスト。
拳銃はきっかり男の前にと運ばれ、止まる。
- 16 名前:浅倉威 ◆zbbhCfko 投稿日:02/09/28 10:22
- ロシアンルーレット
>14>15
くつくつと、浅倉の喉が鳴った。
拾い上げた銃に、熱い銃弾が詰まっているのがわかる。
映画やらでしか知らなかった吸血鬼、その本物すら殺した弾丸が。
目の前で死を見たせいか、銃は死を与える道具だという当たり前の事実が、
やけにリアルに感じられた。
ぶるっ、と浅倉は身を震わせる。
怖い。とてつもなく怖い。
その恐怖こそ、浅倉にとっては快感なのだ。
「いいぜ……ゾクゾクする。死ぬか、それとも死ぬかだ」
浅倉はワケのわからないことを口走りながら手を素早く動かした。
そして、あっという間に激突が落ちる。
- 17 名前:浅倉威 ◆zbbhCfko 投稿日:02/09/28 10:27
- ロシアンルーレット
>16 判定:z ――生存
かちん、と乾いた金属音。
は、と乾いた声。
銃はまだ、死をもたらさない。
全く――――――冗長だ。
「ま、その分愉しめると思うか……」
誰に言うとでもなくそう呟いて、銃を机に置く。
- 18 名前:ディーコン・フロスト ◆eFVFfOpk 投稿日:02/09/28 10:46
- >16>17 ロシアンルーレット
「ほう。なかなかしぶてえじゃねえの」
リボルバーの弾倉は六。
つまり、残り確率は四分の一となる。四回に一回は死ぬわけだ。
「くく――くくく。ひゃあっはっはっはっは!!」
生ッちょろい。
こんなのはギャンブルのうちにも入りやしない。
フロストは牙をむき出して威嚇すると、そのまま銃口を口の中に突っ込んだ。
「ま、見ろ。格の違いって奴を、な」
躊躇うことなく、銃爪を一気に押し込む。
- 19 名前:ディーコン・フロスト ◆eFVFfOpk 投稿日:02/09/28 10:51
- >18 判定:e ――生存
また響く、鈍い金属音。
次に伴うはずの轟音は来ない。
今回もハズレ――くく、当然。フロストは嗤った。
「そら。今度こそ当たるかもな。んん?」
テーブルを介さず、拳銃を直接投げて寄越す。
そろそろ死んでおけ。な?
- 20 名前:浅倉威 ◆9ObKLZjE 投稿日:02/09/28 12:02
- ロシアンルーレット
>18>19
未だに弾丸は吐き出されない。
少しだけ、退屈になってきた。
「ひょっとして俺らは不死身か? イラつくねぇ・・・」
そう嘯いて、浅倉は銃口を舌で軽く舐める。
そのまま撃鉄を起こす。
舌を銃口に付けたまま、引き金に指を挿入する。
「は、これで失敗したら痛いな」
それくらいのスリルがないと、滾らないがな。
そう付け加えて、トリガー。
- 21 名前:浅倉威 ◆9ObKLZjE 投稿日:02/09/28 12:12
- ロシアンルーレット
>20 9:数字 →死亡
浅倉の口の中が真っ赤なのは、何もトマトを食いすぎたせいじゃない。
マジで痛い。痛いよこれ。こんなに痛いとはな。最高。
ぼたぼたと赤い雫を垂らし、粉々になった舌を吹き出しながら嗤う。
ごぼごぼと赤い泡が口中に立った。
息ができなくなるが、急所は外したのでなかなか死ねない。
激痛と酸素の不足に悶絶/陶酔しながら、ばったりと倒れる。
痛みで気絶、痛みで覚醒のサイクルを何度も続けて、結構長い間浅倉はジタバタしていた。
そう、死んで動かなくなるまで。
(浅倉威・死亡)
- 22 名前:ディーコン・フロスト投稿日:02/09/28 12:50
- >20>21 ロシアンルーレット・終幕
狭い部屋。
天井近くでは裸電球がぶらぶらと揺れながら朧な光をばらまき、それにたかる蝿蟲ども。未だ
からからと廻るターンテーブル。たなびく硝煙の臭いに、ふと煙草の味を思い出す。
二発の銃声が押し込められている帳。
二体の遺骸を詰める、この部屋は棺。
「はっはあ……これで、晴れて自由の身かい?」
気だるい身体を起こして、床に落ちている銃を拾い上げる。
ふたつの命を奪った銃口は、濃密な重厚感のまま、血と肉片にてからせている。
フロストは耐え切れず、舌先でぺろりと舐めた。
「けどな。俺は俺を侮辱する奴は」
>13の言葉が、フロストの脳裏でこだまする。
「殺すって決めてるんだ」
フロストは振り向き様拳銃を投げつける。
吸血鬼の膂力で投げつけられた鉄塊は、淀んだ空気を破裂させて一直線に少年に走った。
狙いはボディ。上半身と下半身泣き別れにさせて、そのあとずたぼろに切り刻んでやろう。
フロストは殺ったと確信した。
- 23 名前:シュレディンガー准尉(M)投稿日:02/09/28 13:16
- >22 ロシアンルーレット終幕
「最後まで生き残ったのはディーコン・フロストさんでした〜! さぁ皆さん拍手拍手♪」
やる気のなさげな、たった一人の拍手が狭苦しく不衛生な部屋に響く。
顔には無邪気な笑みを浮かべたままの准尉が、だからこその空寒さをもたらしている。
二つの死骸は片づけられもせずに、血と死臭で存分に室内を汚していた。
「それじゃ、晴れてフロストさんは自由の身……ってうわ!」
言葉を言い終わる前に飛来する鉄塊。
唯の拳銃も、吸血鬼の膂力で投擲されれば凶悪な破壊力を誇る銃弾と化す。
すっかり油断していた准尉はそれを真正面から喰らい――――胴体が下半身から千切れた。
切断面から内臓と大量の血をまき散らしながら、上半身が勢い余って前方へくるくると飛んでいく。
「いったいなぁ、いくら死なないから、吸血鬼だからって痛くないワケじゃないんだよ?」
その言葉が終わらない内に、そこに准尉のいた証は全て消えていた。
あれほどまき散らされた血も、離ればなれになったはずの下半身も、今し方宙を舞っていた上半身も。
忽然と、音もなく、跡形もなく、確かに准尉は消えた――――。
(僕は何処にでもいて、何処にもいない。じゃあね♪)
そんな言葉を、フロストは聞いたような気がした。
- 24 名前:ディーコン・フロスト投稿日:02/09/28 14:15
- >23 ロシアンルーレット・閉幕
どこへ消えたか――?
フロストは狭い室内の全てを見渡し、十分に渡って警戒を続け、ようやくそれが高速移動や身を
隠しての効果でないことに気づく。
「はっ、ひゃはっ、舐めた真似してくれる」
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も床を蹴り飛ばし、あたりが軽い陥没だらけになった
ころ、ようやくフロストは正気を取り戻し、乱れた髪を指先で整えた。
まあいい。
これで一応、奴等、ミレニアムからは解放されたわけだ。
評議会の連中を生贄に、血の神を復活させれば、世界が俺の思うがままになる。
フロストは含み笑いを漏らし、足取りも軽やかに部屋から出て行く。
扉に手をかけ、身体も半分乗り出したとき、不意に室内を振り返り、ウインクと投げキッス。
あばよ、俺のための子羊ちゃんふたり。ひゃはは。
さて、とフロストは出て行く。
その脳裏には、明滅するひとりの男。計画の要であり、宿命の強敵である、デイウォーカーの
名を持つ狩人。
炯々と眼を赤くたぎらせ、フロストは嗤う。
「待ってろよ、ブレイド。次はお前が、俺のための生贄になる番さ」
- 25 名前:ディーコン・フロスト投稿日:02/09/28 14:19
- ロシアンルーレットのレス番まとめだぜ。
>3>5>6>7>8>9>10>11>12>13
>14.>15>16>17>18>19>20>21
>22>23>24
華麗なる俺様への感想?
こっちに書くんだな。
ttp://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=029002304
- 26 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/09/28 21:20
- もっとも軽蔑すべきものはなんですか?
- 27 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:23
- バンパイアロード vs オーフェン 〜導入〜
それは俺がとある町で、ある噂を耳にしたことから始まった。
この街の近くにある迷宮の奥に、強大な力を持つマジックアイテムが存在している―――
いつもなら、聞き流している、どこにでもあるような突拍子も無い噂。
だが、妙にその話が気に係った。
(どうせあての無い旅の途中だ、噂の真偽くらいは確かめてもいいか……)
俺は数日間その町に止まって、噂の出所と真偽を確かめることにした。
そして今―――俺は件の迷宮の中を、数日かけて得た情報を反芻しつつ先に進んでいる。
遺跡内部は罠や化け物が生息していて非常に危険であること。
マジックアイテムらしきものは最深部の玄室と呼ばれる広間にあること。
そしてその前には番人が存在し、その力は人間の理解を超えていること。
その三つを念頭に置き。
どんどん迷宮を突き進んでいく。
――――そして、時間は流れていく。
数限りの無い罠と、化け物との死闘を乗り越え。
ボロボロになりつつも、俺は玄室と呼ばれる部屋の前に立っていた。
「ここが……玄室。
この部屋にマジックアイテムがあるのか……」
傷を魔術で癒し、体調を出来る限り万全に整える。
そして、中にいるはずの魔物との戦いに身を緊張させながらも。
力を込め、ゆっくりと扉を開いていった。
- 28 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:29
- >27 バンパイアロード vs オーフェン
淀んだ空気が地に溜まり、湿った腐臭を漂わせていた。それが脳の奥までつん、と染みる。人の世
の果て、野望の底。ただ静寂と共にあり続ける玄室に、重く扉の開く音が響いた。
かつて、全てを手にせんとした魔術師が居た。
絶大なる魔力を持った『魔除け』を手に、数多の魔物を生み、迷宮の奥深くに潜み、その力を命を
求める者全てを手にかけた男。だがその姿も消えて久しい。かつての魔は、もはや居城になかった。
それから一体、どれほどの時が流れたか――。
事実が伝説へと変わる頃。それでもそこには不死の魔人が座していたのだった。
「おや」
男が、立っていた。
「この地に人が訪れるのとは、実に久方ぶりですね」
紫の外套を下げ、金の髪を揺らし、赤の眼差しを闇に鈍く光らせる。
「主もなく、枯れた遺跡に何のご用でしょうかな」
微かな衣擦れと歩き、柔らかな笑みを湛える。血の通わぬ、死を連想させ続ける笑顔に、どれほど
の意味があるか知れないが。
「まさか、魔除けをお望みですか? はは、これは滑稽だ。未だあのような世迷い言を真に受ける者
が居たとは。未だに力を欲する愚物は絶えぬ、と言うことでしょうか……」
笑みが凄絶の色へと移る。
嘲笑から歓喜の色を含んだ、濃い赤を伴った笑顔へ。
- 29 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:29
- >28
「ここまで来たことを誇りに、帰りなさいと言っても聞きますまいな」
男の――吸血鬼の王が放つ、妖気の前に大気が凍えた。
淀みを薙ぎ、微かな対流を起こす冷気が玄室の壁を白く染める。
「ならば、ここで果てるまで……」
紫の残滓が尾を引く中、不死者は薄く嗤った。
長い長い、沈黙と静寂と意識を解き放つ感触が――その身を満たそうと、駆けた。
- 30 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:30
- バンパイアロード vs オーフェン
>28
この世のものとは思えぬ、整った顔立ち。
そして、見るものに死を連想させる、冷たい笑顔。
その外見とは裏腹の、鳥肌が立つほどのプレッシャー。
間違い無い。
こいつが、番人だ。
体が震える。
今にも逃げ出したいほどの恐怖が、全身を支配する。
(だが、ここで逃げるわけにはいかねえな……)
俺が旅をしていた理由の一つ……
ここにあると伝えられているマジックアイテムが“それ”なのかも知れない。
だとすれば、引くわけにはいかない。
手を握り締め―――震えを止める。
歯を食いしばり―――恐怖を押し殺す。
目を細め―――意識を集中する。
さあ、これで準備は完了。
駆けてくる化け物に向けて手をかざす。
魔術の構成を瞬時に編み、呪文を唱え、解放する。
「我は放つ光の白刃」
- 31 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:31
- >30 バンパイアロード vs オーフェン
暗闇が爆ぜ、閃光と爆風に辺りが充たされた。凍える呼気が流され、静寂ばかりが支配していた玄
室を打ち砕く。荒々しい熱に嬲られ、金の髪と外套が微かに揺れた。
揺れた。
それだけ。
「なるほど、なかなかの力」
魔力の奔流が消えた時、吸血鬼は笑みを浮かべたままだった。
傷すらもない。
魔法無効化――古き者の力は、容易く魔術を歪めていた。
「ですが、まだ」
その顔が、ふいに霞む。
残滓を引き、姿が青の風となった。
「未熟!」
一呼吸の間に地を蹴り、間合いを無にする。
二呼吸目に鋭き爪を振りかぶった時、赤の口蓋は歪みきって、鋭き牙を覗かせていた。
- 32 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:32
- バンパイアロード vs オーフェン
>31
頬を掠り、爪が通り過ぎていく。
突如襲う脱力感。
恐らく爪が掠ったせいなのだろう。
そして、まともに先刻の魔術を受けたはずなのに、まったくの無傷であることから、魔術を無効化したであろう事もわかる。
魔術を無効化し、掠るだけで相手の力を失わせる―――まさに化け物というのにふさわしい力。
だが、だからどうしたというのだ。
負けられない理由がある。
相手が例え誰であろうが、倒すまでだ。
―――こいつがどんな化け物であろうが関係ない。
力尽くで、脱力感を抑える。
そして、相手の懐へ踏み出すと同時に、拳を突き出した。
- 33 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:32
- >32 バンパイアロード vs オーフェン
突き出された拳が肉体を抉る。
肌を破り骨を砕く、鉄の如き拳。
打ち据えられ、揺れ、半身がぶれた。
ザッ、靴が鳴る。
堆積した埃を払うように滑り、下がる体を支えた。
「どうしました、表情が冴えないようですが」
おそらくは、並みの人であれば一撃の元打ち倒されたであろう、強打。だが、吸精――エナジード
レインによって奪われた力は、徐々にその動きを狂わせる。自覚の裏から攻め寄り、根こそぎ奪う。
不死の者の魔力は命を喰らい、また、膨れ上がった。
その奥で、吸血鬼は嗤う。
微かな笑みでもない、哄笑。
肩を震わせ、呪詛を編み、魔法を練り上げる。
刹那を縫う狭間に腕を翳し、ロードは火炎を呼び起こした。
「――――ラハリト」
掌から炎が巻き起こる。
闇を浸食するように、ラハリトの呪は辺りの可燃物全てを紅蓮に染めながら、広がった。
- 34 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:33
- バンパイアロード vs オーフェン
>33
炎が化け物の手から広がる。
まともに食らえば自分など、墨と化すだろう。
魔術で防ぐ?
―――視界が魔術で覆われ、相手に隙を見せることになる。
避ける?
―――避けられるような規模では無い。
なら、どうする?
―――他の手を考えるまでだ。
無限にも感じられる一瞬の中、もっとも有効と思われる手段を限界まで加速した思考で考える。
自分がこの化け物とまともに戦うには、この化け物の考えを上回る手を常に使うしかない。
既に最初の攻防で大きなハンデを背負っている。
これから先は気ほどのミスも許されない。
そして、一つの手が脳裏に浮かんだ。
瞬時に魔術の構成を編み、呪文を唱え、それを発動させる。
「我は流す天使の息吹」
腕の先から放たれた暴風が、炎を巻き込み、化け物に向けて逆流していく。
それを眺めつつ、俺は懐から短剣を取り出していた。
- 35 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:34
- >34 バンパイアロード vs オーフェン
紅蓮が視野を覆う。まさか、自らの炎が返されるとは。突風と荒れ狂う炎の中、吸血鬼の王は口の
端を微かに持ち上げた。熱を伴いだした外套を振るうと、玄室に新たな旋律を響かせる。
大気の威を削ぐ魔法。真空と言われる空間を作り出す絶滅の手段。
「ラカニト」
炎と。
風と。
大気が。
刹那、消失した。
それはほんの一時のこと。
だが、真空と真なる静寂に包まれた玄室は、生き物全てを拒んだ。
男の足が自然と止まる。
そこ目掛け、再び地を蹴った。
両の手には爪。光条の如く伸びた必死の刃は、微かな尾を引いて、胸へと喉へと眼窩へと飛んだ。
- 36 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:36
- バンパイアロード vs オーフェン
>35
化け物が何かを呟く。
刹那、炎と突風が消え、息が止まる。
真空が生じ、呼吸が止まり、視界がブラックアウトする。
だが、それも一瞬―――刹那の間の出来事。
すぐに視力は戻り、周囲の状況が目に入る。
視力の戻った瞳に写ったのは、二筋の流星。
とっさに、両腕に持っていた鋼鉄の鞘と、短剣をそれに向けて突き出す。
キィン。
甲高い音を立てて、鞘と短剣が流星―――化け物の両の手―――を受け止める。
「ハァ…ハァ…」
息が荒い……
まるで体中の酸素が無くなったかのように体がだるい……
今の攻撃を受け止められたのは奇跡に近いだろう。
正直、今の自分の状態で同じ攻撃を防げる自信は無い。
対する相手は無傷。
力の差は歴然としていた。
(くそっ……何ならこいつに通用するんだよ!?)
- 37 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:36
- バンパイアロード vs オーフェン
>36
苦し紛れに、化け物の腹を蹴飛ばし、間合いを開ける。
尤も、無理な姿勢で蹴ったので効いてはいないだろう。
だが、相手は僅かに体制を崩した。
(何が通用するのかもわからないなら―――やれるだけやるしかねえな!)
俺は後ろに跳びさりつつも、魔術の構成を編む。
自分が考えられる限り、最大の威力を持った魔術の構成を。
そして、呪文を唱え、それを放つ。
「我は砕く原始の静寂!」
化け物の周囲の空間に波紋が走り、そして―――爆発が起こる。
空気が。
空間が。
爆炎が。
まるで、偽りの生を受けたかのごとく踊り狂った。
- 38 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:39
- >36>37 バンパイアロード vs オーフェン
胎動。
玄室の中に低い呻きが木霊し、延々と響き渡る。冷たく凍てつく、石の部屋の中――――――
「酷いことをしますね」
そこに、居た。千切れた腕と欠けた頭部と焼けた外套と、人の体を成さない塵と化した吸血鬼が。
体液すらも流さず、半分になった顔が歪な口を動かし言葉を紡ぐ。
「玄室ごと崩壊させる気ですか」
一歩、踏み出す。炭化した足ががさりと崩れ、砂になって広がった。
それも意に介せず、逆の膝までとなった足を出す。
「まったく、荒々しいお客人だ」
もう一歩、三歩目の足。その足が、靴が、玄室の床を叩いた。
下がった視界は立ち戻り、翳す腕には五本の指と爪が並び、紅い瞳は並んで存在した。
不死者は、そこにいた。何も変わらず、その姿で。
「そろそろ、お引き取り願いましょう――――――」
詠唱、ラダルト。
絶対零度近い大気が、水分を白の粒へと変える。
玄室の壁が白く氷った時、それはあたかも死の世界のように存在した。
- 39 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:41
- バンパイアロード vs オーフェン
>38
見るも無残な姿になった化け物が、瞬きする間に元の姿になっていく。
それは、悪夢じみた光景。
起死回生の一撃と思えたものが無駄となることによる、精神的ダメージは計り知れない。
普通の人間なら、恐慌を起こし、そのまま自滅の道をたどるだろう。
だがオーフェンは薄く笑った。
まるで、その事態を喜んでいるかのごとき笑みが、その顔に刻み込まれる。
「安心したぜ―――」
低く呟く。
その呟きは打ち消されることなく、玄室すべてに広がっていく。
緻密な構成が編まれ、空間に射出される。
開放された魔術が、化け物の使った魔術を形どる魔力を霧散させる。
そして、白く冷たい死の世界の進行が止まった。
あたかも、目の前に立つ、魔術士を恐れているかのように。
「―――手前を傷つけることが出来るとわかってな」
有効な手段が一つでも見つかれば、打つ手は無限に広げられる。
打つ手がまるで無かった、先刻までの状況との違いはたった一つ。
だが―――その差は無限。
「お前だけが有利なゲームはもう終わりだ」
一言ごとに、意識が冴え渡っていく。
目の前に居る相手を絶命させるための数百もの方法が、脳裏に描かれていく。
「お前はもう、俺から逃れることは出来ない」
- 40 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:45
- >39 バンパイアロード vs オーフェン
「はは」
哄笑。
「ははは」
群青の外套を揺らし、金の髪をたなびかせ、赤の双眸を伏せ。
「ははははははははははははははははははっ!」
肩を震わせ頬を歪め手を振り上げて、嗤う。どうしようもない話だ。
手? まさか、あれが手か?
だとすれば、吸血鬼の胸にあるのは暗澹たる思い。希望と熱望を歪める、確固たる事実。
「ゲーム? なるほどゲームですか」
声色が、変わった。笑いが止まり、体の動きが緩慢から白刃のそれへ。
眼差しの朱がより赤く鮮烈へ染まり、一つの意志を紡ぎ上げた。
殺意。退屈なる任務への、幕引きの現れ。
「逃れる必要など、ありはしない」
身を屈める。左の手を貫手へ、如何なる魔剣さえも越える万物を切り裂く刃へ変えて。
それを妄執するが如く一心に突きだし、貫き、抉る。
「断てば、終わる」
それだけを意識に焼き付け、吸血鬼は翔た。数のメートルが数のセンチになり、見る間にミリへと転じる。
言葉より、声よりも疾き、群青の死。
それが魔術師に迫った時――――――金なる光が爆ぜた。
- 41 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:48
- バンパイアロード vs オーフェン
>40
―――手段が見つかったからと言って実力差が縮まったわけではない。
目前に迫る、金色の爪を見ながら胸中でオーフェンは呟く。
挑発するように笑ったのも、先程の言動も全て相手から冷静さを奪うため。
(今の状況で実力差を埋めるには、それしかない―――――)
どんな相手だろうが、冷静さを失って放つ攻撃は予想ができる。
そして予想された攻撃をかわすことは非常に容易だ。
極限まで意識が細められ、ただ一点に集中される。
―――――必要のない感覚がどんどん消えていく―――――
光のごとき速度の貫手を、しゃがむ様に屈みこんでかわす。
髪が数本巻き込まれ、宙を舞った。
―――――味覚と嗅覚が消えた―――――
- 42 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:49
- バンパイアロード vs オーフェン
>41
右腕に持っている短剣を自分を見下ろすように見ている、顔目掛けて投げる。
―――軽く顔を動かすだけで、それは避けられた。
左腕に持っていた短剣の鞘を、目に突き立てる。
―――何か柔らかい物を潰したような音とともに、鞘が眼窩に埋まる。
化け物の左腕が振り抜かれる。
―――受け止めた左手と肋骨が砕かれ、吹き飛ぶ。
右足を床に叩きつけるよう振り下ろす。
―――数メートル吹き飛んだところで、砕けた床に足が埋まり、骨が折れる鈍い音とともに止まる。
何モ感ジナイ。
―――――痛覚が消えた―――――
視線を向ける。
俺を弾き飛ばした体勢のまま、奴は佇んでいた。
姿を確認すると同時に、“折れた左腕”を掲げ呪文を唱える。
「我が左手に冥府の像」
掲げた腕の先から、黒い因子が放たれる。
―――――視覚と聴覚以外の全ての感覚が閉ざされる―――――
- 43 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:49
- >41>42 バンパイアロード vs オーフェン
一つ、腕を伸ばす。
一つ、刃を伸ばす。
一つ、死を伸ばす。
朽ちる体こぼれ落ちる時流れ出る魔力霞消えゆく妖力。
だが、
だが、
吸血鬼は、
吸血鬼の王は、
赤い瞳を輝かせ、
金の髪を靡かせ、
抉れた眼窩を震わせ、
牙を幽かな闇に踊らせ、
笑う。
嗤う。
狂笑う。
絡みつく魔を妖力でいなし、交わす。左の手先より光条を伸ばす。
疾い一撃。
疾いだけの死。
どこまでもどこまでも、最短で進む”滅び”のライン。
それに男を捉えた。光りに等しき速度で翔る、死と魔力にまみれた爪を奔らせる。
「くっ、はっ――――――――――――――――――」
肺からの呼気、それを一つ残して。
爪は真っ直ぐに、胸へと飲み込まれて行った。
- 44 名前:導入投稿日:02/09/28 21:50
- ファントム・ドライvs板東英二 導入
新宿区歌舞伎町は、国境を越えた犯罪都市である。人種、国籍の概念など、この街には無い。
その犯罪を牛耳るのは、中国人。台湾人、上海人、北京人。日本人……“やくざ”は、いない。
警察が敷いた対暴力団の法律が彼等を縛り付け、自由の身である中国人との競争をさせないでいるのだ。
その常識に真っ向から勝負を挑んだ組織があった。“梧桐組”。日本の中でもトップランクの一家である。
近年、梧桐組は独自の麻薬ルートを作りだし、中国マフィアよりも安く薬を捌き始めた。
歌舞伎町は金が全てだ。金を持てば自然と力もつく。梧桐組はぐんぐんと歌舞伎町の中で力を伸ばしていった。
しかし、梧桐組が力を伸ばすことによって、一つの大きな問題が生まれる。
決して避けることのできない問題が。
『抗争』
食い扶持を取られた中国マフィアは、いつか必ず仕掛けてくるだろう。
そうなったら、どう転ぼうと梧桐組が終わりだ。
歌舞伎町でやくざが鉄砲一発でも撃ってみろ。すぐに警察が飛んできて、全ての事務所を家宅捜索。
あることないことでっち上げて、組が潰れるまで寄生するだろう。
中国マフィアは、警察が来ても「わたし、日本語分かりません」。不法入国の者達は、踵を返して母国に戻る。
それだけで済む。勝負にならない。
梧桐組を此処まで大きくした若頭・志賀透は悩んだ末、ある結論を導いた。
“殺し屋を雇って、北京系、上海系、台湾系のマフィアのボスを全て殺ろう”。
気休め程度のことに聞こえるが、そうなればまず間違いなく歌舞伎町は混沌と化す。
中国人同士の抗争が相次ぎ、警察も重い腰を上げることとなるだろう。
全てが終わったあと、残るものは殺された中国人と強制送還された中国人が消えた歌舞伎町。
もはやマフィアは街を統べるだけの力は残っていない……はずである。
志賀は決めた。苦渋の決断である。なぜ苦渋なのか。
それはマフィアのボスを全殺しなどという不可能を可能にする殺し屋を、彼は二人しか知らなかったからだ。
一人は“変態”で、一人は“悪魔”。こんな奴等に組の命運を賭けねばいけないのか。
- 45 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/28 21:51
- >44 vs板東英二
インフェルノからの命令で日本に来たのは二日前。
空港から新宿には直行せず、途中、台場に寄ってそこで一晩を過ごした。
気の乗らない仕事だった。あたしの腕を見込んで、と言うのは分かる。
が、正直こんな窮屈な国で自分ができることなど限られている。銃を持ち込むのにも一苦労だ。
何とかアメリカでの仕事道具を一式揃えることができたが、その為にかなりの金が流れたらしい。
鼻“だけ”肥えた警察も気に入らない。弱い癖に、犯罪の臭いを嗅ぎ取る能力だけは超一流だ。
そして、何よりも気に入らないのが――――
「何で、あたし一人じゃねえんだ?」
梧桐組の事務所につくなり、開口一番であたしは言う。
残虐性だけが売りの中国マフィアなんて、物の数ではない。あたし一人で十分皆殺しにできる。
しかし、こいつ等は他にもう一人殺し屋を雇いやがった。あたしを信用してねえ、てことだ。くそが。
事務所の奧から知った顔が出てきた。志賀透。組の若頭だ。
志賀はなだめるようにあたしに冷たい瞳を向けて言った。
「何もコンビを組めと言っているんじゃない。あんたの腕を信用してないわけでも無い。効率の問題だ」
阿呆が。あたしは即答する。
「馬鹿を言うんじゃねえ。何処のチンピラかしらねえが、そんな雑魚とこのファントム様が、何で同じ仕事を
しなくちゃならねえんだ。あたしをあんまり安く見るなよ?」
志賀はやくざの癖に、“面子”の問題に疎い。
インフェルノは、梧桐組の発展のために虎の子のファントムをわざわざ派遣したんだ。
それなのに、他にも殺し屋を雇ったとなると、これは沽券の問題になる。
インフェルノの力を信用してない。そう見て取られて当たり前だ。
あたしはソファに座り込み、足を組んで志賀の顔を見上げた。相変わらず、氷のように無表情だった。
- 46 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:51
- バンパイアロード vs オーフェン
>43
オーフェンの放った黒い因子を避け、まるで一陣の旋風のように化け物は疾走する。
因子が進む斜線上の天上に短剣が突き立ち、今にも崩れ落ちそうになっているのがちらりと視界に入る。
一瞬だけそちらに意識を向け、再び化け物へと意識を戻す。
聴覚が閉じられる。
―――光にも等しき速度で疾る爪の軌道を見るために。
全ての感覚が視覚に集中する。
―――この一撃を見切り次の手に繋げるために。
僅かに体が動き、ほんの少しだけ致命的な場所を外して胸に爪がめり込んだ。
他人事のようにオーフェンはそれを認識する。
胸に刺さった手はそのままに。
右腕に握った石が、相手の胸に当てるように掲げる。
体に残っていた力を、全て注ぎ魔術を唱えた。
―――――我は踊る天の楼閣―――――
- 47 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:55
- バンパイアロード vs オーフェン
擬似空間転移によって質量を無くし、限りなく光速に近い速度で転移した石が、化け物の胸を貫く。
刹那の沈黙。
沈黙を破り、貫いた箇所を中心に大穴が開き後ろに吹き飛んでいく。
しかし、あの化け物がこれだけで殺せるはずは無い。
空中で化け物が止まる。
そして胸にあいた大穴が塞がっていく。
化け物の胸に開いた穴から、瓦礫が落ちてくるのが見える。
先程投げた短剣の付いた瓦礫。
物質崩壊の引き金である黒い因子と交わるように、それは落下していく。
―――そう、それは奴を殺すために、俺が考え出したイカサマを完成させるための最後のピース。
全身から力が抜け、その場に崩れ落ちた。
それを見て化け物が嘲け笑う。
真っ向からそれを受け止める。
もはや身動きすら満足に取れそうに無い状態で。
それでも、唯一まともに動かせる目で、正面から化け物を見返した。
絡み合う二つの視線。
人間と化け物という種族の差を越えて、二つの意思がぶつかり合う。
一秒にも満たない刹那の時間。
しかし、睨み合う互いにとっては永遠よりも長い時間。
- 48 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:56
- バンパイアロード vs オーフェン
>47
視線がそれる。
化け物の視線が俺から逸れた。
胸に開いた穴から、見える光景。
ゆっくりと進む因子に、瓦礫が当たる。
そして、瞬時に分解された。
―――――無数に散りばめられた、イカサマと言う名のパズルのピースが、その瞬間に全て合わさった。
刹那の間。
一瞬の停滞の後、爆発が起こる。
突如巻き上がった爆炎は、瞬きをする間も無く、化け物の全てを飲み込み。
その圧倒的な熱量と衝撃波で、その存在をこの世から消滅させた。
巻き上がった爆発は、荒れ狂う嵐のように暴れ狂う。
まるで、飢えた獣のように、更なる獲物を求め爆炎が玄室を飲み込んで行った。
- 49 名前:バンパイア・ロード投稿日:02/09/28 21:57
- >46>47>48 バンパイアロード vs オーフェン
世界が朱に染まる。
何もかもが炎に置き換わり、崩壊のうねりをあげた。
空間は砕け、大気も燃え盛り、世界はすべてを終焉へと導く。
ただ残るは一匹の不死者、不死者共の王。
すべてが焼けて、すべてが滅び、すべてが息絶える中――――――
それでも王は微かに嗤っていた。
微かに、本当に幽かに。
安心するような、落胆するような、満足するような、入り交じり釈然としない表情。
そんな中で嗤った。
口を開く。
その口内すらも燃え上がる。
息を吐く。
その息すらも炎に変わる。
眼光も滅びに囚われた時、吸血鬼の身体は灰燼へ帰していた。
其処にいた証拠すら残さず、砂と消える。残るは焼け崩れ、原形すら留めぬ玄室。
静寂ばかりが始まりと同じで、張り付くような硬質さだけが悠然と佇んでいた。
(バンパイアロード:殲滅)
- 50 名前:オーフェン ◆STABbERo 投稿日:02/09/28 21:59
- バンパイアロード vs オーフェン
>49
焼けた肉の臭いが鼻をつき、俺は目を醒ました。
薄っすらと目を開き見た、自分の体。
それは、想像を遥かに絶した有り様だった。
全身が焼け爛れ、所によって肉は炭化し、
蛋白質の焼けた臭いを、辺りに充満させた。
折れた骨が所々の肉を突き破り、
自己の存在を主張しながら、身じろぎをする毎に蠢いた。
―――――四肢がまだ付いているのが、不思議に思えた。
俺が目を醒ますのを待っていたかのように天上が崩れ出す。
ずるりと、床にこびり付いた皮膚を、肉もろとも引き剥がして立ち上がる。
余りにも酷い怪我が、痛覚を麻痺させている。
きっと気が狂うほどの走っているのだろう……
そんなことを考えながら、折れた足を引きずって歩く。
崩れた天上の破片が、背に、肩に、全身に、ぶつかり、めり込んでいく。
だが、俺は止まらない。
ある一点を目指して、歩き続ける。
崩れていく玄室の中。
目指していた場所にあるものを、俺はその手の中に握り締める。
化け物が爆発に飲み込まれた場所に、ぽつんと落ちていた一個の魔除けを、手の中に収めた。
そして天上が崩れ落ち―――――――――――――――
End
- 51 名前:悪アギト ◆XAGITO1o 投稿日:02/09/28 22:02
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
(前スレ吸血大殲第41章/血桜の巻
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/531から)
「ああ、もっともっとだ…。これじゃ腹には溜まらんな…!」
大きく弧を描くように両手に持った斧を投げる。
迫り来る光、ニセモノの存在には進化できるか分らない。
力が欲しい、より強い力を。
燃え盛る業火を繋ぎとめるモノリスに気付く。
そうか、これが邪魔だったのかと狂える竜は己の胸の石板、
アギトの力を制御するモノリスを自らの手で破壊する。
制御しきれなくなった炎は光すら焼きつくすほどに猛る。
消え行く夜魔の女王を見て竜は思う。
「ああ、イったか?あの白く柔らかい肌を噛み破り、
切り裂いたらどんな味がしたんだろうなぁ?」
寸前まできた光に対し、足を開き腰を落とし拳を構える。
灼熱を超えた炎にて、光すら焼かんとするかの如く正拳を放つ、
放つ、
放 つ !
- 52 名前:名も無き墓標投稿日:02/09/28 22:06
- 再び、深い静寂に包まれた迷宮。
魔物の気配すらも消え去った深い地の世界は、ようやくその役目を終えようとしていた。
そこへ、幽かな風がながれる。一つの紙切れを乗せて。訪れた者の遺品か、
かつて支配した魔術師の名残か、一枚の羊皮紙にはこんな事が書かれていた。
(レス番纏め)
>27 >28 >29 >30 >31 >32 >33 >34
>35 >36 >37 >38 >39 >40 >41 >42
>43 >46 >47 >48 >49 >50
(意見、感想などはこちらへ)
http://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=029002304
動くものはもはや、無い。
あとは身を切る風が過ぎるばかりだった。
- 53 名前:名も無き墓標投稿日:02/09/28 22:08
- (>52 訂正)
バンパイアロード vs オーフェン
再び、深い静寂に包まれた迷宮。
魔物の気配すらも消え去った深い地の世界は、ようやくその役目を終えようとしていた。
そこへ、幽かな風がながれる。一つの紙切れを乗せて。訪れた者の遺品か、
かつて支配した魔術師の名残か、一枚の羊皮紙にはこんな事が書かれていた。
(バンパイアロード vs オーフェン レス番纏め)
>27 >28 >29 >30 >31 >32 >33 >34
>35 >36 >37 >38 >39 >40 >41 >42
>43 >46 >47 >48 >49 >50
(意見、感想などはこちらへ)
http://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=029002304
動くものはもはや、無い。
あとは身を切る風が過ぎるばかりだった。
- 54 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/28 22:36
- ファントム・ドライvs坂東英二
>44>45
その日、俺様はゲームボーイアドバンスのボタンをダーラダーラとぶっ叩いていた。
人間遊ぶ時には遊ばなきゃ、悲しくてポックリ逝ってしまうと巷では評判なので、渋々と。
それはもう嫌々ながらだね。仕事中だが。ゴルフバック肩にかけて歩きながらだが。
グゥルァアアアァ、れれ連邦の白い悪魔め。ウハハ見えるぞ、俺にも時が見えるぞ。
ヨッシャ来たぁ、ピキーンと額に電波来たぁ。そこら辺じゃあ。
思わず考えてる事全部、叫んでたらしい。
廊下にいた、誰よ悪魔召喚に失敗したのっつうヘモヅラどやくざの群れが、全員微妙な目で
俺を見てるから多分そうだ。
殺っちまうぞコラ。こっちがうぜえわ。
ここ梧桐組の事務所だもん、しゃーねえっちゃあしゃあねえけどな。
俺タン、ステキバイセクガンマンこと坂東英二地獄大総統は、今はこの組に雇われてんの。
もっとも、今度の仕事に呼ばれたのは俺だけじゃないらしい。
志賀の兄貴は一緒にやっておくれと言ってたけど兄貴、冗談はケツの穴だけにして下さいよ。
何で白人スメルプンプンのヤンキーと手ェ組まなきゃならんのよ。大体何だっけ、そいつの名前。
ファンキー末吉。いや、マンダムだったかな。どっちかなのは確かなんだが。
まあいいや。殺す前に訊いとこう。
液晶画面から目を離さずに、俺は足で応接室のドアを蹴り開けた。
うあ。その拍子にボタン押し間違えちまったじゃねーかああああ。
い、い、いやあああああ、死ぬ死ぬ死んだゲームオーバーなのぉぉぉぉ。お、お、お前ぇぇ。
泣きながらヘナチョコマシンを投げ捨てる。両手は腰のホルスターへと飛んで飛んで飛んで、
「お前をそんな腑抜けに育てた覚えはないッ、母さん悲しいよ!」
右手ー、トカレフ。左手ー、マカロフ。発砲ー、全弾。
床へ落ちるまでに叩き込んだ9mm弾は計十六発、てか落ちる前にバラバラにしてやったワハハハ。
- 55 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/28 23:12
- >54 vs板東英二
扉が音を立てて開かれた。志賀とあたしとの間に走った緊張がぶち壊れる。
ドアを潜り抜けて姿を見せたのは東洋人。全身から溢れ出す――――殺気。
あたしは腰を僅かに浮かせて、尻のホルスターに手を滑らせた。
――――間に合わない。既に東洋人の両腕には二丁の拳銃が納まっている。
この野郎、殴り込みか? どちらにしても、気付くのが遅すぎた。
姿を見せるまで気配を感じ取れないなんて、どうやら日本の空気はあたしの五感を鈍らせるらしい。
高級そうな絨毯を敷き詰められた床を蹴って、跳躍。ソファの後ろに転がり込んだ。
同時、耳に響き渡る銃声。雷鳴のように連続して鳴り響く銃声と共に叫び出される悲鳴のような男の声。
暫くして、志賀の怒声。銃声はもう鳴りやんでいた。
恐る恐るソファから顔を出す。見ると、志賀が声を押し殺して、乱入者に説教をかましていた。
「板東さん、俺はあんたを一流の“ガンマン”と見込んで雇ったんです。……その結果がこれですか?」
志賀の突き出された指が、床をさした。目で追うと、そこには機械の残骸。
木っ端微塵に撃ち抜かれ、何の機械かを判別するのは不可能だ。
ああ、何だ殴り込みじゃなかったんだね。そいつは安心安心。しかもお仲間ときましたか。もっと安心デス。
「――――て、おい。ちょっと待てよ」
志賀が振り返る。侵入者は……なんかよく分からねえ。
「おまえ……何だ? こんな奴とあたしを組ませようとしたのか?」
「だから、コンビを組ませるとは――――」
黙れ。一喝した。回りの若衆がどよめく。てめえ、志賀の兄貴になんて口をききやがる。もう一度一喝。黙れ。
「志賀、あんたトチ狂ったのか? こんな原始人にてめえの組の命運を託す、てのはどういうことよ」
冷たい声音で言い放つ。志賀は肩を竦めるだけで、返事は無い。そう“志賀”の返事は無かった。
- 56 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/09/28 23:14
- (ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/541 より)
吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
目的地はそう遠くもない。
半ブロック走った先、半地下式のそこは、吸血鬼禍まっただなかの今でも盛況だ。
いや、だからこそ、というべきか。
客引きらしき黒服に「よう」と挨拶、ついでにその頭を壁にたたきつけ、
赤いだんだら模様を壁に描いて入場。
ま、コレ見りゃ奴が迷うことは無いだろうさ。
階段を降り、内扉をくぐると、スポットライトと音の乱舞が押し寄せてきた。
薄暗い照明に、汗とドラッグの刺激臭。
リズムに合わせ、体を揺らす男女。若い連中ばかりだ。
吸血鬼の闊歩する夜を恐れてはいても、だからといって家に閉じこもってはいられない。
発散の場、か。
吸血鬼に出くわすかもしれない、というスリルも、連中の高揚に一役買っているのだろう。
――若いねぇ。
人いきれの熱気に入り込む。
速いテンポのリズムに体を揺らし、見た目だけは連中の真似をして――
- 57 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/28 23:21
- ファントム・ドライvs坂東英二
>55
あーらら、志賀の兄貴に怒られちゃった。てへっ。そんな怖い目で見ちゃイヤーン。
「いやーすんません志賀さん。小指の先ほどはっちゃけちゃいましたよ」
にへにへ笑って両手の指で左右の銃のマガジンキャッチを押し、空の弾倉を床に落とした
俺様の目は、そこで兄貴の向こうに釘付けになった。
ソファーの陰から出てきた女。
黒いライダースーツ。赤ジャケ。
緑の瞳。金髪。
おお、ベイベ。美少女ちゃんだ。それも極上の。
ゴミ捨て場で見つけたエロ本を心臓バックンバックンさせて覗く厨坊みたく、思わず
「アム口、ガソダム行っきまーす」気味に前屈みになってしまった俺チャマなのだぜい。
ヤバいよ、この美少女ちゃん。ヤバ過ぎ。
ウフフフフーッ。
まあ、周りの有象無象どもを叱ったかと思ったら、初対面の人を原始人ですって。
キキマシタオクサマ!
「お黙り小娘」
ハハーン、この美人ちゃんが誰か判ったぞ。俺の怒りを鎮める為のお布施だな。
実に憎い心配りだねえ兄貴。
両手の銃に新しい弾倉を叩き入れつつ、だから優しく言ってあげましょう。
「おぜうさん、キサンに命じます。お仕事の時間です。
俺に犯られろ。
異論反論オブジェクションは大却下」
- 58 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/28 23:23
- >57 vs板東
「あぁん?」
反射的に言い返す。この野郎、いまなんて言いやがった。
静かに立ち上がり、一歩二歩と侵入者――じゃないから、ただの日本人か――に近付く。
ゆらり、とあたしの腕が流れたかと思うと、尻のホルスターに突き刺さっている拳銃が……。
「やめろ!」
掴まれた。志賀に。腕を。
「……離せよ」
とか言いつつ、志賀に掴まれた腕を振り払い、自分で解き放った。
少し痛む腕をさすりながら、志賀に言葉を重ねる。
日本人は駄目だ。こいつと会話するのは、なんか無理。通訳係っぽい志賀に全ての感情をぶつける。
「大体、世の中を知らない小僧に、社会の厳しさを教えてあげるのは、あんた等やくざの仕事じゃねえのかよ」
志賀は無言で、あたしを見つめる。
眼鏡越しに光る冷徹な瞳は、しかしあたしを黙らせるには、まだまだ修行が足りない。
時々、怒りの炎が瞳から垣間見える。クールぶってはいるが、こいつも結局はアウトローだ。
あたしはその視線を流しつつ、言葉を続けた。
「このあたしを“殺る”だって? 日本人ってのは、謙虚と聞いたんだけど、あれは嘘なのかねえ」
視界が動く。翡翠の瞳が日本人を捉え、睨み据えた。
猿が、身の程を知れよ。深緑に輝く眼光が、無言でそう語る。
- 59 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/28 23:26
- ファントム・ドライvs坂東英二
>58
「面白い事言うねチミ、面白い事言うね」
いい加減タルいんで、肩のゴルフバックは床に落とす。中身ごっつりだから重い音。
「ちょっと志賀さぁん、このアマっ子物凄くお口が悪いじゃないッスか。
下の口もこん位五月蝿いと、俺様ウシシシではありますけどもねえ」
荒んだ言葉を使うと心まで荒んじゃいそうで、僕悲しい。
銃を握ったまま、指で黒シャツの胸ポケットからMDのイヤホンを取り出し、耳に当てる。
再生スイッチを押すとイントロがブリブリ流れ出し、ウラ、ハッ、イヤ。
兄貴はと言うと、じと目をセニョリータから俺に移しただけで答えない。ムフ、照れますな。
恥ずかちいから二挺拳銃を指でクルクル回す。紳士の嗜みです。
「大体、そこのキャンディキャンディちゃん。人の話聞いてまッすッかッマックッフッラッイ。
“殺る”じゃねえんだよ“殺る”じゃ」
緑の視線が憎悪と侮蔑と罵倒をてんこ盛りにして俺を射る。うわ、たまんね。子宮に響くなあ。
いや、もしあったらって話よ。
そんな彼女のジャイアントなミステイク、でも誰しも間違う事はある。
こういう時は唇ひん曲げ片眉上げて、ニィッと笑ってレクチャーレクチャー。
「俺はな、姦って犯って殺って嬲ってやるぜって言ったんですよドットファック」
両の掌で回転は止まり、ぴたり二つの銃口は美少女ちゃんへ――
「――Let slip the dogs of war!!」
叫びながら横っ跳びに跳んで、ついでに引き金を絞り込む。
跳ね返る炸裂音と一緒に俺はダンシング、ヤーッ!
- 60 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/28 23:41
- >202 vs板東英二
志賀の腹を蹴り飛ばし、その反動で逆方向に跳ぶ。志賀の身体が“く”の字に折れ曲がり、背後へすっ飛んで
いくのが見えた。
事務所の窓ガラスが音を立てて砕け割れる。あたしと志賀が居た位置を突き抜けて、銃弾が窓に着弾したのだ。
銃弾……そう銃弾が。――――この野郎、撃ちやがった! あたしは機械なんかじゃねえってのに……!
足が床に付いた。すかさずもう一度小さく跳躍。倒れ込むように、取り巻きのやくざの群れに背中から突っ込んだ。
若衆は未だ事態を察していない。志賀は腹を押さえながら、やめろ、やめろ、と低い声で叫んでいる。
志賀ちゃんよぉ―――そいつは無理だって、あんたも分かっているだろう?
跳ねるように飛び起きると、尻のホルスターから黄金に輝く拳銃を引き抜き、三連射。
空いている左手も、同じく拳銃を引き抜いてひたすらにトリガー。
あたしの獲物は旧ソ連の流れ物とは値段も、破壊力も、天と地ほどの差がある。
金色の二丁拳銃はスプリングフィールドのV12。
昇竜を彫り込んだ象牙のグリップを握りしめ、撃つ、撃つ、撃つ。
く、は。―――チンピラ相手に、ちょいとばかし大人気無かったかね。
だけど、な。日本さんよお。
「セクハラはまずいぜ?」
- 61 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/28 23:41
- >60は、>59な。
- 62 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/28 23:58
- ファントム・ドライvs坂東英二
>60
うお、あのゴールドクロスなスプリングフィールド、めっさ格好いい。
後でゲットしようと心に決め、両腕を胸の前で交差させた。
右手のトカレフを左横へ、左手のマカロフを右横へ。
ボニータが撃って来るのに合わせて引き金を引き、そのまま俺大回転しつつまた横っ跳び。
ローリングローリング。こっちも撃てー撃てー撃てーッ。
痛、痛。向うの弾が肩やら脇やら腿やら掠めちった。やーめーろーよー。
「アホーッ、野郎は殺して女は姦すんが万国共通のツフフ条約だろがい!」
しかし俺の銃撃で、周りの三下どもが端から吹っ飛んで行く。
ビバブラボー、ビバハラショー。
どやくざが何億万匹泣こうが死のうがウンコ洩らそうが、俺にゃ関係ないもんね。
ああ、志賀の兄貴に当たったら嫌かも。ちょっと。
でもま、血塗れ兄貴もそれはそれで捨て難い。だからオールオッケイ。キャー。
耳は銃声、鼻は硝煙と血のオイニーで一杯だ。
おまけにワンダホーな脳内で駆け巡る曲、歌詞、音楽。
さあ皆さん、一緒にシャウツ。
「人間んん花ァ火が、打ち上がりィィ、紳士とォ淑女のッ、うんどォォかァァい。
針ィとびィィマーチも、高らかにィィ、狂ゥったァかけっこ、よぉいドンんんんんぅあ!」
音が回る、目玉も回る。
「堕落のゴールへまっしぐらァ、奈落のゴールへまっしぐらァァ」
きっとあのライダースーツの下は、スッポンポンでビローンなのじゃよ。
剥けーッ、剥くのォーッ。
- 63 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 00:01
- >262 vs板東英二
うおおおおおおおおお! 背中に冷たいものを感じつつ、吹き荒れる銃弾の嵐の中を、駆け抜ける。
足下が、脇のソファのマットが、頭上のシャンデリアが弾丸に貫かれ、弾け飛んだ。
冗談じゃない、と舌打ち。こっちが一発撃ったら、向こうは三発返してくる。しかも全方位に。無差別に。
チンピラ達が血煙を吹き散らしながら次々と倒れていく。
何だ? 何なんだ? ――――何であたしはこいつと撃ち合っているんだ!?
どうしよもない大馬鹿野郎を、決め台詞と共に蜂の巣にしてやって、はいお終い。
そういう流れだったはずだ。はずなのだが――――
「うわああああああ!」
銃口があたしに正確に向けられた瞬間、床を蹴って開き放しのドアの奧に転がり込んだ。
くそ、あいつ狂ってやがる。ヒットとは言わないまでも、一発か二発は掠っているはずなのに……。
薬か? 薬でも決めているのか?
馬鹿を言うな。ラリったガンスリンガーに、あんな素早い動きは不可能だ。
じゃあ、何なんだ。あいつは一体、何なんだよ!
「こういうときは―――」
身体を引き起こしながら、足を動かす。重心が安定しないうちに駆けだしたせいか、二、三回よろめくが、
何とか未だ銃声鳴り響く応接室に背を向け、ダッシュ。
「―――逃げるが勝ちなんだよね」
プライドとか、そういうのは人間相手に使うものだ。
津波が目の前に迫ってきて、「おれは逃げるのが嫌いなんだ!」とか叫ぶ馬鹿はいねえ。
馬鹿相手に真面目に命を賭ける奴もいねえ。
頭の中で、数多の言い訳を生み出しながら、あたしは転げるように駆けた。
しかし、見た目とは裏腹にその動きに無駄は無い。
- 64 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/09/29 00:04
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>56
走り続けた末に辿り着いたのは、飾りっけの薄い入り口。
辛うじて掛けられたちっぽけな看板が、ここがどういう場所なのか教えてくれる。
彩りに添えられた血の華が、何の気なしの美しさを感じさせて、そのセンスに唾を吐く。
狭いダンスホールは、芋を洗うような混雑だった。
こいつら、本当に今の状況ってやつをわかってるのか――いつ夜に取り込まれるとも知れない
ってのに。呑気なもんだ。
――いや、こいつらも、結局オレとそう変わりはしない。
動いていないと、動けなくなりそうで、怖いんだ。
濃厚に漂う煙草とドラッグと、の臭いに辟易しながら、人型の壁をかきわける。
どこかに奴がいるはずだ……
死臭とでも呼ぶべき、奴の臭い。確かに感じる。
隅に隠れているような気も、すぐ背後に潜んでいる気もする。
つう――と汗が顎に滴る。
奴は――どこだ。
- 65 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 00:06
- ファントム・ドライvs坂東英二
>63
このセニョリータ、なんてマーベラス。
最強最高絶好調のガンマンであるオイラさんと、まともに殺し合い出来る女がいたなんて。
しかもシャチョサーン、ベリーベリー美人ネ。
タマランだろ、男として。
も、洩れ、洩れちゃう。エンドルフィンが耳からだだ洩れて来ちゃうよ。
まさにゴーゴーヘヴン。直訳すると逝ってよし。
さあもっとだ、もっと殺ろ――って、ハァ!? 逃げんなゴルァ!
火薬とか血とか色々混じってる煙を突っ切って、美少女ちゃんは飛ぶように駆けて行っちゃった。
俺絶叫。
丁度弾の切れた銃を両方とも捨て、俺はさっき床に放ったゴルフバックへと馳せ寄った。
素早くジッパーを開ける。中から引っ張り出したのは自動小銃AK47カラシニコフ、それと
自動拳銃のスチェッキンだわ。得物は二つで鬼ごっこ、フハッ。
お嬢たんを追っかけ廊下に飛び出すと、丁度ヤー公の群れがこっちに走って来た所だった。
銃声聞いて出あえ出あえってやつか。はいはい雑魚どけ。
やくざを殺して平気なの? 平気じゃボケ。
俺は走りながらスチェッキンをぶっ放した。
アブトマディック・ピストレット・スチェッキナ略してスチェッキンは、イイものだ。
響きが特に。
なんつーの、こう初出港した潜水艦の中でオロシャ人水兵ズが声を嗄らして国歌斉唱な感じ?
あともう一つイイ所。
フルオートで撃てんだよフルオート。引き金絞ったら弾出っ放し。
括約筋の切れた肛門から糞柱がズバー、ズバー、ゴンヌズバーってぐらい止まらんのじゃよー。
それはもう、止められるかこの俺の青春をっつって反語形で盗んだバイクで走り出してしまう
くらいな。モキモキ。
ハハハハーッ、見ろー。人間がゴミのようだー。
- 66 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/09/29 00:15
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>64
傍らをすり抜けながらその首に一瞬、牙を埋め、ついで、囁く。
「合図をするまで、”吸う”な」
牙による接触感染から、吸血鬼として活動を始めるのには多少のタイムラグがある。
それを誤魔化し、タイミングを合わせるためのタネだ。
同じことを4度繰り返し、ついでにもう一つタネを仕込む。
背格好の似た相手を人間のまま魅了してやり、そいつと上着を取り替えて準備完了。
ちょうどのタイミングで、入り口で気配が乱れる。
ま、大剣もって入ってくりゃ、そりゃ目立つわな。
(まだちぃと時間がいる。踊れや、”親友”)
奴のほうを窺う必要は無い。
俺は束の間、踊ることにだけ専念した。
- 67 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 00:27
- >65 vs板東英二
状況を把握できず、右往左往する体格の良いヤクザ達の足下を縫うように駆け抜ける。
チンピラ共は、あたしの存在にも気付かず怒声を上げてただただ慌てるのみ。
その無意味な怒声が、タイプを叩くかのような軽い連続音に掻き消された。
怒声に代わって湧き出る悲鳴。視界を汚す血煙。おいおい、この音は――――
「……マジか?」
首を僅かに捻って、背後に瞳を流す。
ヤクザ達の無駄にでけえ身体の隙間から、突撃銃と自動拳銃を両手に持つ日本人の姿を確認。
フルオートの銃二丁。視界を前方に戻し、両手を見下ろす。金色のオート拳銃二丁が眼に写った。
相手はフルオート。フルオート……。もう一度、呟き。「マジか?」
怒濤の勢いで吐き出されていく銃弾。
廊下に飛び出たヤクザ達が肉の盾となってあたしを守ってくれてはいるが、長くは続かないだろう。
いずれ、全滅だ。
だが、出口はもう目の前にある。外に出れば、何とでもなる。
「でりゃー!」
スライディング。足から突っ込んだ。綺麗に磨かれた床はよく滑る。
あたしは背中を床に預け、仰向けに滑りながら二本の腕を頭上に……廊下の奥へと突き出した。
すかさず撃鉄を落とす。心地よい反動を腕に感じつつ、トリガートリガー。
日本人のフルオート掃射とは比べ物にならないほど陳腐な、しかし必殺には十二分な弾幕が、展開された。
これを牽制にして、あいつの射撃をとめさせれば、あたしは逃げ切れる!
外はもう、すぐそばにあるのだ。
- 68 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 00:32
- ファントム・ドライvs坂東英二
>67
か、か、帰れ、お前らに売る土地はないんじゃあ。
やくざさん達の悲鳴を銃鳴で掻き消してやる。あーもー、死ぬ時ぐらい静かに死ねつうの。
やくざ退治という珍行事を終わらせた、と思ったら、崩れ落ちようとする奴らの死体の向うに、
おお、おお、スライディング娘。
しかもあの体勢から狙ってるよ。叫びながら両手バンザイだぜイェー。
俺もスタンディングオベーション。イェー。
ウフフファイア。
銃弾と咆哮が行ったり来たり。僕ら銃口越しのお話タイムなのだ。
躯中が無闇矢鱈にポッケッタポッケッタと煮えくりかえる。止められないエキサイト。
ありゃ、熱くなり過ぎたのかしら。左目の視界が真っ赤っ赤だ。
血が垂れて来たぜよ。今、脳天掠めた弾の所為みたいだね。
何か急にポンポン痛くなったしのう。当たったみたいだね。
しかしそんなこたァ、どうでもいいのよ。
もっと撃て、もっと侵せ、もっと爆ぜろもっと弾けろ。
君とならもっと凄い所に行けるよ。だって今、生きながら地獄の先が見えてるんだもん。
だから撃ってきなさい。俺も撃つから。ブブブッと撃つから。
「ガンホーガンホーホーヤレホー、プゥゥゥゥゥゥ」
そしておいタンにぷにぷにヴォイスを聞かせておくれ。
- 69 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 00:48
- >68
かちん。二つの拳銃がホールドオープン。十数発の銃弾を吐き終えた。
空気を裂いて飛び交う弾丸。馬鹿な――――止まらねえ!
あたしが貼った弾幕を正面から受け止め、血を吹き出しながらも構わず乱射する日本人。
「……化物か!?」
叫びつつ、身を起こして駆けた。冗談じゃない。そこまでしてあたしを殺したいのかあいつは。
弾の詰まったマガジンをそれぞれの拳銃に押し入れると、ガンスピンをかけながらホルスターに納めた。
あいつ、マジでやべえ。馬鹿過ぎる。
無数の流れ弾や跳弾に貫かれ、穴だらけになったドアのノブを、掴み、捻る。ここを開ければ、外だ。
「ん?」
些細な違和感。ノブを回すあたしの手が、変だ。視線を落とし、見下ろしてみる。
見ると、あたしの右手は真っ赤に染まっていた。
「ああああああああああ!?」
撃たれた!? うそうそ!? どこ、何処を撃たれたの!?
右脇腹に、小さな穴が開いている。そこから流れ出る鮮血。撃たれた―――この、あたしが……?
「あ、あ、あああ――――」
ああああああああああああああああああ!!
「てんめえ、撃ったな!? あたしを撃ったな! 撃っただろう! 撃ちやがったなこの野郎!」
振り向き様に拳銃を引き抜いて、前に突き出す。
クソが、クソ野郎が。そんなにあたしと遊びてえのか。上等だァッ!
雄叫びのように連続して響く銃声。あたしは二丁の拳銃を突き出したまま、前進を開始する。
- 70 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 00:51
- ファントム・ドライvs坂東英二
>69
「イエスイエスイエスイエスイェェェス! アイアァァァムガンマーンッンンン」
こっちの弾は、まだまだがっつり残ってる。
ズンズン前進しつつ、彼女の弾を喰らいつつ、激痛と快楽に身をよじりつつ。
股間の欲棒代わりの引き金に全ての力を込めるのだ。
萌え子ちゃんも同じのようだ。撃ちてし止まん。進め一億火の玉よ。ムホホホホ。
「喜べ、喜んでくれマイハニー!
お前の人生はゲブッ、今日という素晴らしい日和にあ痛痛ッ、俺ちゃんにバチ殺される
為にぶばばばッ、あったのだよううううわあああ」
鉛弾喰らいながらだと、言葉に血が混じっちゃってよく喋れまアウチ。
俺の躯のあっちこっちに火線が針千本状態。熱さと痛さが、俺を絶頂涅槃へといざなう。
ヘモグロビンの刺激がえらい事になってるよう。
「取り敢えず夜毎のオカズにするからさ、お名前教えてくれませんかぁぁぁ!?」
イヤホンからは「呂律が回らぬアナウンス、お次は首とり騎馬戦だ」と地獄のもののけロックが
流れているが、もういいや。別のお歌を歌いましょう。
この上なく俺達に相応しい、銃弾行進曲をな。
ウキャッホウキャッホキューコロロ〜。
- 71 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 00:52
- >232 vs板東英二
荒い息遣い。高鳴る鼓動。滲み出る汗。流れ落ちる鮮血。
――――ああ、クソッ。また当たった! 二発目だぜ? 洒落になってねえぞオイ!
相対する狂人は、その十倍近くの銃弾を浴びてるはずなのだが、一向に怯まない。
くそくそくそくそ、クソ。化物が、化物が、化物が化物が化物がぁ―――ッ!
呟いた悪態の数だけトリガー。弾ける男の身体。でも、倒れない。
足に激痛。これで三発目。痛みに足を取られ、つんのめるように床に転げ落ちた。
あたしは受け身も取らず、ぶれる銃口を必死で押さえ、撃ちながら撃って撃つ。
転んだあたしの視界の先にある男の両足に、無数の穴が穿たれた。男もまた、寄生をあげて倒れ込む。
「おおおおおおお!」
腕を忙しく動かし、腹這いのまま跳ぶように前進。
床に身体を打ち付けた男の眉間に、ゴールドメッキの銃口を突き当てる。
あんた、あたしの名が知りたいと言ったな?
「あたしの名は“ファントム”。世界最強の“殺し屋”だ!」
そのあたしを殺すだと? てめえが? 馬鹿を言うんじゃねえ。
天下のファントム様が、こんな訳の分からねえ奴に、訳の分からない理由で殺されてたまるかよ。
銃口を男に押しつけながら、続くように呻く。
「そんな“ファントム”様に対するてめえの態度がこれか? あぁん? てめえ、マジで死なすぞ」
いや、本気じゃなくとも、もう殺すけどな。
- 72 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 00:53
- ファントム・ドライvs坂東英二
>71
あんですとぉ、ファントムだああ!?
「……何それ」
思いっきり知るか! ファントムっつったら百里基地で無頼二人じゃねえの。あ、判った。
「スターウォーズエピソードT?」
いいよねダブルブレード・ライトセイバー。
あ、違うの? ヨーダ跳ばないの? まじで?
しっかしマイエンジェル、何気に調子に乗って俺様の額に銃口ブチ当ててくれやがりますのは
プロブレム大有りとちゃいます?
まあお返しに、俺も左手のスチェッキンをライダースーツの胸にぼっくりぼっくりと
押し付けてんだけど。カラシニコフは右手が上がらないんでちょっと一息。男根主義万歳。
流石にもう、躯は死にかけの犬みたくプルプル震えてる。
なので手もプルプル。膝もプルプル。銃口もプルプル。
何か口開けただけでトマトジューチュがダラダラ流れて来るぞ、あはー。
それでも黄金銃に自分から額を擦りつけて、小娘を躾てあげなけりゃ。
「どーでも良いけどよ、大体オメーみたいなギリギリコスプレっ娘が殺し屋あァァァン!?
ガンマンな俺たまに対する新手のイヤガラセってかぁ!? あああ!?」
- 73 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 00:55
- >237 vs板東英二
こいつ、あたしのことしらねえのかよ。超モグリじゃねえか。ニュースぐらい見ろっての。
胸に突き当てられた拳銃。額に突き当てた拳銃。
お互いがお互いを同時に殺し得る状況で、二人は拮抗している。
このまま時間が過ぎれば、男は失血死とか死んでくれそうだけど……。
そんな“ラッキー”は望めないらしい。男はむしろ前よりやかましく叫び散らしている。不死身か。
「ああん? なに訳のわからねえこと言ってやがる! 先に抜いたのはてめえじゃねえかよ!」
眉間を銃口でグリグリと抉りながら、怒鳴る。
畜生、何であたしはこいつと殺し合っているんだ。回りのヤクザは何で死んでいるんだ。
全てが理解不能で訳が分からない。苛つく。それもこれも全部こいつのせいなんだよな――――
「おら、どうした。撃たねえのか」
奥歯を噛み締めながら挑発。声音とは反対に、表情は怒りに満ちている。
「何だよ、ビビッてんのかい? ハ、情けねえ」
そう言うと、ポケットから懐中時計を取り出し、男に見せびらかすように掲げる。
「あんたにチャンスをくれてやる。このオルゴールの音色が止むまでに――――」
言葉は、最後まで続かなかった。
- 74 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 01:01
- ファントム・ドライvs坂東英二
>73
オッパイミサイルに押し付けた銃口が、意思に反して行ったり来たり。
あかん、牙を剥いたピンク色の象とか枕元で大名行列が見え気味な奴みてえ。
頑張れ。いじめなんかに負けるな。
ほら、六万人の大観衆が総立ちで応援してるぞ。フレー、フレー。
そら、“殺ーれ、殺ーれ”コールが出たぞ。殺れ、殺ったれい。
しかしあれだ、銃を通して感じるアトミックオッパイは、実に実にぽよぽよもこもこ。
思わず顔がほころんでしまいます。ヒッヒヒヒ。
撃たねえのかだのビビッてんのかだの、怒った顔も可愛い彼女の悪たれ口なんか気にならないね。
おや取り出したその時計、俺にくれんの。あからさまに黄金銃の方がよいですが。
あ、そうか。殺してからどっちも貰えばいいんだ。
なんてポジティブシンキーン。
俺は、エライ。
美少女ちゃんが何か言いかけたのを遮る。
すまん、悪口が気にならないつうのは、ありゃ嘘だバーカ。
「悪いけど俺もうイキそうなんで、後は地獄でゆっくり訊くわ。後三百年くらいして俺が逝ったら」
取り敢えず今はお前だけ死んでろって事で、左手の人差し指に力を込める。
脳内に棲んでる六万の観客の声援はもう絶頂だ。イヨー、親玉ァ。
スチェッキンに一発吼えさせて、いよいよチェックメイト宣言なのだよ。
- 75 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/09/29 01:04
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>66
オレの姿は、はっきりいって、この中で一番目立つ。
何せあちこち焼け焦げてぼろぼろの赤いコートに、背負うのはガキより大きい大剣だ。目に入ら
ないのは盲かイカレた奴と決まっている。
あいつは、吸血鬼で変人だが、イカレてはいない。
なら、何故仕掛けてこない? 絶好のチャンスなのに。
そして、何よりおかしいのは、この膨れ上がる悪寒だ。奴が何人もいるかのような。
そのくせ、気配はこころなしか――減ってる気がする。
稲妻のように天啓が走った。
それをやるんなら、この違和感もわかる。あの男がそれをやるか、と考えて、肯とはじきだす。
く。くく。この期に及んで、オレもつくづく甘っちょろい。
あいつは吸血鬼だ。勝つためにはなんでもするだろうさ。
含み嗤いをもらしながら、傷が痛むのも構わず、銃を天井向けて乱射する。
無数の弾痕が穿たれ、漆喰をぱらぱらと落とし、いくつかライトが割れてガラスが降り注ぐ。
静まる室内。音楽ばかりが空気を鈍く振動させる。
オレはさらに引き金を絞りまくる。天井から、今度は壁面へ。弾痕の位置が下がっていく。
ひとりの女が叫んだ。それを切欠として、パニックを起こした連中が蜘蛛の子を散らしたように
出口に殺到する。そうだ、逃げろ。
――奴の目的は、ここで小規模な吸血鬼禍を起こすことだ。
少しでも奴のタイミングをずらして、少しでも客を急がせて。
そして、ひとりでも多く、逃げろ。ここは地獄になる。
- 76 名前:ガルアード・ラインディヒ(M) ◆MATOUV/M 投稿日:02/09/29 01:15
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>51
光学系端子が外気に冷却され、微かに音を立てる。
「やれやれ――――――やはり『穏便に』とは行かなかったようですね」
消滅したモリガン・アーンスランドの肉体は、既に地面にその影を残すのみとなった。
苦渋の表情で眼前の火焔渦を見る。
閃光の奔流に対し、業火の濁流で耐え切ってみせた竜鎧の男は、低く腰を落とし身構えている。
残存エネルギーには不安が残る。
既に残量は40%を切りつつある。
「とはいえ、逃げるわけにもいきませんか。ここは」
皮膜翼を広げ、残された右腕を突き出す。
唸りを上げ、右腕の肘から先がドリルに変化する。
高速回転する右腕に肘から先が失われた左腕を添えつつ、皮膜翼を大きく羽ばたかせると
大地を蹴りつつ低空飛行。
引き絞られた弓弦から矢が放たれる如く、一直線に竜鎧の男に迫った。
- 77 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 01:21
- >74
オルゴールの音色が止むまでに――――
……その後は?
言葉を遮る銃声。胸に伝わる反動。熱い、熱い、熱い身体。
これで四発目。世界記録突破。あたしに四発も当てたのは、あんたが初めてだよ。
耳元で鮮血と共に流れるオルゴール。
ああ、初めてと言えば……
「こ、の――――」
決め台詞の途中で撃ってくれたのも、あんたが初めてだったよ。
おまえ、最高に最悪だな。変身とか決め台詞の真っ最中に撃つんじゃねえよ。
「――大馬鹿野郎が……!」
口から溢れ出る血に混じって吹き出す怒声。怒りに任せて男の眉間に突き当てた拳銃の引金を引き絞る。
何でお互い撃たなかったのか、こいつは分かっているのかね。
“撃ったら、撃たれる状況”だったから、撃たなかったんじゃねえのかよ。
そこまで馬鹿か、あんた。
銃声を聞き届けることなく、更にトリガー。念には念をで三連射。全弾眉間にぶち込んだ。
- 78 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 01:24
- ファントム・ドライvs坂東英二
>77
勝訴、勝訴、勝訴ーッ。勝ちましたぁぁぁ。
俺は見事、ステキッ娘の右胸に9ミリ弾を捻じ込んだのであった。
なのになんで、頭をズンと抜かれたような衝撃があるの?
なんで、俺の躯は仰向けに傾くの?
お爺さんでもアルルの森の木でもいいけど、誰か教えやがれ。
いや、これはあれか、相撃ちってやつかい。そういや額に銃向けられてたっけのう。
ちまった、それ忘れてたー。
俺様の躯は背後に倒れて行く。
コラコラ、意味不明なイベントのフラグ立てんなや。
後頭部が床にヘッドバットを喰らう。あん、逆か?
どっちにしろ痛くないのは不思議だ。
何だよ、目は明いてるのに見えないし、躯がビタ一文動かねえ。
これは大霊界行きの前触れって事なのか、ひょっとして。
は? 死ぬ? 俺が? この俺が?
またまた。そげなお馬鹿イベント、俺の人生がいくら糞ゲーだからってそんな。
いやいや。これはイルミナティの陰謀だ。そうに決まってる。じゃなきゃBF団の。
お前らのやった事は、全部お見通しだッ。えへへへー。
なあ、マジ? 昔なつかしビックリカメラだよな?
- 79 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 01:25
- >78 vs板東英二
腹に二発、足に一発、肩に一発。腹の二発は微妙にまずい。致命傷かもしれない。血が止まらねえ。
壁に寄り添い体重を預け、何とか立ち上がる。
取りあえずここから逃げよう。すぐにでも警察がパトカー総動員して駆け付けてくるはずだ。
志賀はまだ生きてる。現場に居合わせたあいつなら、あたしがこの惨状とは一切関係無い可哀相な被害者だって
分かってくれる。だって、あたし一人もヤクザ撃ってないもんね。へへ
ゆっくりと一歩一歩床を踏み締める。歩くごとに滴り落ちる血液。何とかならないのかね。
首を捻って背後を見ると、壁沿いにべったりと塗りたくられた鮮血。これ、本当にあたしの?
おいおい、洒落になってないんじゃないの。滅茶苦茶致命傷っぽいじゃん。
サイレンの音が、遠くから聞こえてきている。歩は止めずにあたしは考えた。
何でこんなことになったんだろう。こんなことで、あたしは死ぬのか。
それは御免だ。あたしの死に場所は既に決まっている。“あいつ”を殺すときが、あたしの死ぬときだ。
こんな突発的な思い付きっぽい不条理に殺されるわけにはいかない。
なのに……なのに……。
「畜生……」
自然と、喉から呻き声が漏れた。
今更になって、怒りが体内が吹き溢れてくる。もう怒りの対象は何処にもいないと言うのに。
「畜生……」
ずるい。ずるすぎる。何でこんなことで死ななくちゃならない。
誰だ。誰が悪いんだ。一体、誰がこんな“ずる”をした?
男は死んだ。殺した。ならば、男と巡り合わせた志賀を殺そう。あとついでにサイスも。
「畜生……皆殺しだ。全員、殺して――――」
言葉はまたしても途切れる。何回目だよこのパターン。……ったく、本気で不死身なのかてめえはっ!
- 80 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 01:27
- ファントム・ドライvs坂東英二
>79
どっかで聴いたようなオルゴールのメロディが、何故か耳にこびり付いてる。
俺、嫌いなんだよこういう曲。自分の死に際なら特に。
と思ってたらイヤホンが新たな曲を流し出す。あはは、やっぱこれでないとなあ。
月曜の朝突然 調子外れのラッパは鳴る
眠り続けた死人も 石の布団を持ち上げる
今日は審判の日 今日は審判の日
歌ってる場合じゃねえぞおい。何かやり残した事は、と。
あらいやぁだ、俺とした事が。すっかり忘れてたよ。
ガンマンがするっつったら、これしかないっしょ。
善良気取る市民の 冤罪無罪の唸り声
行方不明の弁護士 ニヤリ笑って「主は来ませり」
今日は審判の日 今日は審判の日……
ポテグリ、ポテグリと水滴の音。
もそもそと上がった左手から落ちる俺の血だ。
ぬるぬるする指が、標的も判らず引き金を引く。
俺のピストルみたいな一生は、そこで予備弾倉まで全部尽きた。
- 81 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:31
- 比良坂 初音vsシスター・パウラ
夜の超高層ホテル
ここではつい先程まで華やかなパーティーが催れていた
しかし・・・・・・今は
初音は自分に折り重なるようにして息絶えている男の無念の表情を見て、溜息をついた。
顛末はこうだ
数日前、かなこが持ってきたパーティーの招待状、当初は2人で参加するつもりだったが
今日になってかなこが急用で来れなくなり、1人で参加することになった
余り気は進まなかったが・・・・・多少興味もあったし、折角かなこがくれたものを無駄にしたくもなかった。
宴もたけなわになったところで、会場に異変が起きた
どうやら賊が何人か忍び込んでいたらしい、
この時点でとっとと逃げ出しておけばよかったものを・・・と初音は今になって後悔する
かなり酒が入っていたこともあって、他の客たちが青ざめるなか初音は余裕だった
どうせこいつらに私をどうにかできるはずは無いのだ・・・・・・
それから数時間後・・・武器を振りかざし
なにやらワケの分からない宗教歌をがなりたてていた連中どもを
ものめずらしく眺めていた初音だったが
ふと・・・・・会場の中の空気がおかしいのに気がつく
と、賊たちがいきなり泡を吹いてばたばたと倒れ出す
いや・・・・彼らだけではなく人質のはずの招待客までが泡を吹いて次々と倒れていった・・・・・
(まさか!人質まで皆殺しにするの!?)
今、この機に乗じて脱出するのも手だ、しかしここまで荒っぽい手を使う連中だ
正面衝突すれば、只では済まないだろう
そう考えた初音はとりあえず死んだふりを決めこむことにしたのだった。
- 82 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:32
- >81
比良坂 初音vsシスター・パウラ
そして今、死の空気が充満した大広間に何者かが入ってきた
見ると制服を着用した男たちの集団だ。
(もしかしたらと思ったけど埋葬機関では無さそうね・・・・・・・)
少なくともこれであの女を相手にしなくともいい
一息つくと初音は死んだふりを続行しながら心の中で呟く、彼らが去った後、脱出することにするか・・・・・
だが・・・・
「おい、何か反応があるぞ」
「まさか、ガスで皆くたばってるはずだぜ」
「いや・・・・・見ろわずかだが・・・・」
男のサーモグラフィーは、死んだ振りをしていた初音の体温を感知していた。
その男たちの様子は初音にも見て取れた・・・・・男たちは手に武器を持ち
初音の方へ近づいて行く
もはやこれまで・・・・覚悟した初音は自ら血路を切り開き脱出することを決め
まず手始めに近づいてきた男どもを血祭りに上げる
彼らも一応抵抗はしたが、初音の敵ではない
そして大広間に入った男たちを皆殺しにし、帰路につこうとした初音の前で
・・・・・大広間のドアがゆっくりと開いた。
- 83 名前:ファントム・ドライ ◆Cal3DreI 投稿日:02/09/29 01:32
- >80 ファントム・ドライvs板東英二 エピローグ
雪崩のように崩れ落ちる身体。不思議と痛みは無かった。
抜け落ちる力と、マグマのように煮え滾った熱さを持つ傷口。逆に急速に絶対零度へと近付く全身。
それが全て。
「あ……あ、あ、あ、あ、あ、あ」
自分が作りだした血の池に溺れる。両手両足を掻き回して、必死で立ち上がろうとするが、力が入らず失敗。
池の中で暴れたに過ぎない結果が、あたしを襲った。
「あ、あ……ああああああああ! ――――てめえはそんなにあたしが嫌いかァッ!」
池の中で暴れ狂いながら、どうに手と瞳を床に平伏す男に向けると、トリガートリガートリガー。
弾に嬲られ、男の身体が狂ったように踊り出す。くそ、まだそんな力があるのか!
弾の尽きた拳銃を投げ捨てると、もう一丁を引き抜いて更に撃った。
叫びながら撃った。撃ちながら叫んだ。叫びながら叫んで、撃ちながら撃って、殺しながら殺した。
「何だよ何だよ! そんなにあたしを殺したいのか!? なあ! 答えろよコラ! 何で殺すんだよあたしを!
あたしがあんたになんかしたか! ていうか、あんたと初めて会ってからまだ十分経ってねえよオイ! これってどういうこと? ねえ? その十分の間に何があったの!? ―――踊ってねえで答えろっつっってんだろうが!!」
ホールドオープン。石榴のように弾けた男は、もはや人間の身体を保っていない。ただの肉塊だ。
弾が尽きると、あたしの言いたいことも尽きた。……あ、やべ。命も尽きそう。
どうしよう。死ぬのかな、あたし。
不思議と恐怖は無い。むしろ、疲れと呆れが半々であたしの身体を支配している。いや、でも本当に――疲れた。
「あー、日本にはもう二度とこねえ」
歌舞伎町……噂以上に<魔都>だったんだな――――
あたしは心の底から湧き出た本音をポツリと呟くと、自らの血の池に身体を埋めて、静かに瞼を閉じた。
- 84 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:33
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>81 >82
「な、何だこいつ…………うわぁぁぁぁっ!!」
「ば、化け物──誰か、誰か助け……ぎゃぁぁぁっ!!」
複数の男の悲鳴を最後に、単なる雑音の発生装置と化した無線機を眺める彼女の瞳は、あくまで静謐
だった。図書館の司書を思わせる表情には、一片の揺るぎもない。
特務警察の将校服を纏った彼女の名は、シスター・パウラ。教皇庁教理聖省、異端審問局副局長にし
て、“死の淑女”として恐れられる辣腕家、そして──天才的な暗殺者。
彼女が浄化を担当していた異端組織のリーダー数人が、極東へと逃げ込んだのが数日前。
追い詰められた彼らは、とある高層ホテルで行われていたパーティーに乱入し、招待客を人質に取る
という挙に出た。
すぐに招待客のリストを確認し、教皇庁と繋がりのあるVIPが存在しないことを確認したパウラは、
ある作戦の決行を命令した。
すなわち──会場に毒ガスを散布し、異端者共を招待客もろとも駆除するという作戦を。
即効性の毒ガス──異端審問局が独自に開発したこのガスは、強力な毒性を持ちながら散布後程なく
拡散し、無害化してそれ以上の被害を防ぐ──が会場の全員を抹殺した後、突入部隊が目標の浄化完了
を確認、しかる後に、会場を爆破して証拠を隠滅。その後の情報操作によって、事件は宗教テロリスト
の自爆テロとされ、異端審問局の名は決して顕れることがない。そういう手筈だった。
しかし現在、その手筈は予想外の因子によって狂わされようとしている。
- 85 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:34
- >84続き
無線機が、ただ雑音のみを発するようになってから数分後。
パウラの姿は、異端者共が立て籠もったホテル最上階の大広間の前にあった。
特務警察の制服はいつの間にか脱ぎ捨てられ、穏やかな顔立ちとは不釣り合いな肉感的な肢体は、灰
銀色の装甲戦闘服にぴったりと覆われている。
ゆっくりと、扉を押し開く。
それは、まさに修羅の巷と呼ぶべき光景であった。
肌を紫色に変色させ、喉を掻きむしったまま苦悶の表情を浮かべる、豪奢な衣装を纏った人々の死骸。
それらを彩るかのように散らばる、元は特務警察の突入隊員であったろう無数の肉片。
しかしその光景を目の当たりにしたところで、パウラの顔貌には何の変化も現れない。あくまで穏や
かな表情を保ったまま、彼女は夜の森を思わせる静かな声で宣告した。
「──地の上に流された血は、それを流した者の血によらなければ購うことができない……
神の使徒たる特務警察を惨殺したその罪、万死に値します──エィメン」
いつの間にかその両手に握られていた、柳の葉のような刃を持つ12本の短剣──柳葉飛刀と呼ばれる
投擲用の暗器が、死者の群の中にただ一人立ち尽くす、黒髪の少女目がけて投げ放たれた。
- 86 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:36
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>84>85
ドアから現れたのが荒事には不釣合いの文官風の女性だったのが初音には以外だった
しかし、そんな驚きも束の間、女は宣言が終わると初音めがけて容赦無く短剣の洗礼を浴びせる
その速度は常人のそれを遥かに上回っている、おそらく強化人間だろう
初音は自らへと殺到する短剣を見ても微動だにしない。
このまま女の宣告を受け入れるつもりなのか?
事実口元には笑みのようなものが浮かんで・・・・・いや、これは諦めではなく獲物を蔑む微笑だ
そう、初音の目前で短剣はまるで時間でも止まったかのように空中に静止する
初音の周囲にはすでに不可視の糸が張り巡らされている
初音は糸で絡め取った短剣をそのまま女へと弾き返しながら言い返す
「地の上に流された血は、それを流した者の血によらなければ購うことができない
ならば償うべきは貴方の方ではなくって?」
「それに貴方はどなた?埋葬機関でもなければ13課でも無さそうですわね・・・・・」
- 87 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:37
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>86
自らの放った暗器が悉く空中で制止し、あまつさえ弾き返されるのを見ても、パウラの表情はやはり
何の変化も見せぬ。
またも魔法のように両手に出現した暗器──二つの三日月を互い違いに組み合わせたような形状のそ
れは、鴛鴦鉞と呼ばれる近接戦用兵器だ──が、自らへと突き刺さらんとする12本の飛刀全てを、床へ
と叩き落としている。
「主の名において死する者は幸いである──
……あなたが、このパーティーの招待客のことを仰っているのでしたら、それは筋違いというもの。
聖務のために犠牲となった彼らは、今まさに天国の門を潜っていることでしょう。感謝されこそすれ、
責められる謂われはありません」
そう言ったパウラの姿は、次の瞬間消失している。
不可視であるはずの糸を、まるで見えるが如く断ち切りながら、その姿は既に初音の側にあった。
風を巻いて繰り出された異形の刃が、彼女の首筋へと迫る。
「私は異端審問局副局長のシスター・パウラ。
神の意志に逆らう異端者として、あなたに死刑を宣告いたします」
毒ガスの中にいながら、何の影響も受けぬ。ただの人間などであるはずがない。
そのような存在が聖務を妨害する──パウラにとって、決して許す能わざる事であった。
- 88 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:39
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>87
初音はパウラの刃を、紙一重で伸ばした爪で受けとめる
(速いわね・・・・・)
実際はここまで接近を許すつもりはなかった
彼女が動いた瞬間、先程の糸で捕捉し、バラバラに斬り刻むつもりだったからだ。
だが、実際はこうして接近戦に持ち込まれてしまった
爪と剣が幾度と無く火花を散らす中、パウラの能面のような表情が初音の目に入る
その脳裏に先程からの言葉の数々がよぎる。
こういう勝手なお題目を唱えて自分を正当化しようとする奴がまともなはずがない
そうだ・・・・この女は敵だ、今ここで仕留めなければ後々必ず祟ることになるだろう
初音はきっ、と目をむくと両手の爪を揃えて押さえこむようにパウラの刃の動きを強引に止め
その脇腹に廻し蹴りを放つ。
「そう・・・・でしたら貴方も聖務とやらで天国へお逝き!」
- 89 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:40
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>88
長く伸びた初音の爪が、パウラの鴛鴦鉞を押さえ込んでその動きを封じた。そこに放たれる、脇腹へ
の鋭い回し蹴り。そこに秘められた威力は、細身の外見からは想像も付かぬ。
咄嗟に得物から手を離し、腕を以てガードしつつ、自ら後ろへと跳び、衝撃を減衰せんと試みる。
それでも、蹴りの威力を完全には殺しきれず、パウラは数メートルの距離を飛んで着地した。
「私も、いずれは神の御許へと赴くことになるでしょう。しかしそれは、あなたのような異端者を、一
人残らず絶滅した後のこと。
少なくとも、あなたが私を殺すことは不可能です」
空いた方の手が一瞬消えたかと思うと、次の刹那には6本の飛刀が宙を翔けている。
一見見当違いの方向へと飛んだかに見えたそれは、しかし空中で錐揉みしつつ、四方八方から初音へ
と迫る。
同時に、地を摺るような低い姿勢で床を蹴ったパウラの鴛鴦鉞が、彼女を股間から両断せんものと振
り上げられた。たとえそれを回避しても、次はブーツから飛び出した刃が真一文字に腹へと迫っている。
「異端者には生きる権利などない、そう知りなさい」
- 90 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:41
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>89
再び飛刀が空中から初音へと迫る、さらに地上からも刃と蹴りが迫る
流石に全ては避けられない・・・どうする!
それぞれの攻撃の危険度、そしてその後の行動------それらを瞬時に判断した結果
まずは飛刀を糸で弾く、流石に狙って弾き返す余裕は無い
股間への斬撃は右手の爪で防ぐ、恐らくこの攻撃が本命だろう
そしてつま先からの刃は・・・甘んじて受ける、ただし、ほんのわずかだけパウラとの距離を詰めて目測を狂わせ
腹への直撃だけは防いだ-------緑色の鮮血が初音の太股から溢れ出す
しかしその傷と引き換えにパウラの脚は初音の左手でしっかりと握られていた
「ふふっ・・・捕まえたわよ」
- 91 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:42
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>90
脚を掴まれた。通常なら、この不利な状況に動揺し、相手に付け入る隙を与えてしまうところだ。し
かし、パウラの表情にはやはり微塵の変化もない。
一瞬の躊躇もなく地を蹴り、脚を振り上げる。捕らえられた側の脚を支点にしての、弦月の如き軌跡
を描く縦方向の蹴り。鋼の殺意が、光を反射して煌めく。顎を食い破られたくなければ、手を離して後
退するしかない。
パウラの真の狙いは、その後にこそあった。
空中で一回転したしなやかな肉体は、着地した瞬間またも消え失せている。
再び低い位置からの鴛鴦鉞の一閃が胸を突く。更に鞭の如く捻られる繊手には、鋭く尖った金属棒──
峨嵋刺と呼ばれるそれが握られていた。
異形の刃と金属の太針、それに双条の短刀──目まぐるしく繰り出されるそれらの連撃が、見る見る
うちに初音を壁際へと追い詰めていく。
背中が壁に付き、一瞬表情を変えた初音目がけ、必殺の刺突が繰り出された!
- 92 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:43
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>91
(ちっ・・・暗器は補助であくまで本領は体術ってわけ!?)
読み違えた・・・・・しかもさらなる攻撃が初音を襲う
(全く・・少しは勝ち誇っていただければこちらもやりやすいのですけど・・・)
この女はどんな状況でも喜怒哀楽が全く表情に表れない・・・初音のように相手の表情、行動から読み取った
選択肢を潰していくタイプにはやりにくい事この上ない相手だ。
だが、今度は初音にもわずかだが余裕があった
パウラは攻撃に没頭し、床にまで注意が行っていない・・・
初音はパウラの刺突に合わせるように、足下に転がるそれを思いきり真上に蹴り上げた
それは先程パウラが投擲した飛刀だった
突如として自分の眼前に現れた刀に流石のパウラも飛びのいてしまう
そのスキに初音は自分の背後の壁を蹴り、パウラの頭上を飛び超えて一気に距離を離す
さらに初音の右腕が閃き、そこから斬糸が包み込むようにパウラへと放たれる。
- 93 名前:坂東英二 ◆GUNMANuI 投稿日:02/09/29 01:44
- (二挺持ちしたカラシニコフで、あたり一面に無駄弾をバラ撒きつつ)
ウラー。闘争のレス番纏めじゃあ。
ファントム・ドライvs坂東英二 『散りゆくは美しき歌舞伎町の夜』
>44>45>54>55>57>58>59>60>62>63>65>67
>68>69>70>71>72>73>74>77>78>79>80>83
なぬ、俺ちゃんが一々下品だと?
アホンダラーッ、誰がじゃクルァ!
美少女ちゃんと水入らずで撃ち愛ゃ、ガンジーだってこうなるわ!
それに下品つーのはな、吟味した反吐と糞尿のスカトロ懐石を会員が泣いても謝っても無理やり
喰わせて、『これはおいしい驚きです』『まったりとコクがありそれでいてしつこくなく』とか
言わさせる美食倶楽部の食いしん坊将軍みたいな、そんなステキミドルの事をいうのだ判ったか!
- 94 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:44
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>92
必殺の突きが初音の顔面を捉える寸前──パウラは大きく跳びすさっている。先程彼女が投擲した飛
刀を、初音が大きく蹴り上げたのだ。
思わぬ反撃に舌打ちしたその時には、初音は既に広間の中央へと脱出している。
そして放たれる、無数の光芒。
自身を取り囲むように展開される斬糸を、パウラは次々と撃ち払い、刻み断ち、舞い躱していく。
そして、彼女の前進は止まることがない。二人の距離は僅かずつ、だが確実に縮まっていく。
しかし──
最初に耐えきれなくなったのは、左手に握られた鴛鴦鉞だった。続いて、右手の峨嵋刺が音を立てて
砕け散る。
そして遂に、一条の斬糸が彼女の肩口を捉え、鮮やかな赤い血が視界を覆った。
視界を──そう、攻撃者である初音の視界を。
肉を切らせて骨を断つ。敢えて肩口を斬らせ、傷口から噴き出す血飛沫によって視界を封じる──こ
れもまた、パウラの作戦であったのだ。
無論、傷は浅くはない。長時間放置すれば、命に関わるであろう。しかし、失血による影響が出るよ
り前に、この女を滅ぼすことは可能である。パウラはそう判断した。
この極限状況においてすら、利益と不利益を天秤に掛けた冷静な判断ができる。それこそが、パウラ
が“死の淑女”などと呼ばれる真の理由であった。
初音が視界を取り戻したときには、パウラは既に致命的な距離にまで接近していた。低い姿勢で密着
したその両手が鳩尾に当てられ、小さく旋回した。
次の瞬間、初音の身体は会場のテーブルを薙ぎ倒しながら、まるで鞠か何かの如く壁際まで吹き飛ん
でいる。
発勁──全身の筋肉運動によって引き起こされたエネルギーを、任意の一点に集中させて発動する、
戦闘用体術であった。
- 95 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:46
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>94
パウラの発勁を受け盛大にふっ飛ぶ初音だったが
何とか壁際で踏みとどまり叩きつけられるのだけは防いだ
糸屑の霧を張り、とりあえずわずかな時間を稼ぐ・・・・だが
「ぐふっ・・・・直撃か・・・・」
初音の口からぼとぼとと血が溢れ出す、臓器のいくつかは破損しているだろう
しかし苦しんではいられない、霧が晴れるまでに出来るだけの手を打って置かなければ
初音は子蜘蛛を召喚し何事かを命じるとそれを二手に分けて送り出す。
霧が晴れる・・・・・狙い済ましたようにパウラが初音へと突進する
パウラの貫手が初音の心臓へと叩きこまれる、すぐ背後は壁だ・・・逃げられまい
しかし、初音はまったく予備動作も無しに横にずれるような動きで正拳を回避する
パウラが振り向いた時には、すでに初音は背中に回りこんだ後だった。
さらに空中に逃れたかと思えば地上、右かと思えば左と
初音はパウラを幻惑し、確実にパウラの傷を増やして行く
それは初音の身体から伸びた糸を
離れた位置にいる子蜘蛛たちが操作するという、単純なものであったが
相手の筋肉の動きを予測し、先の先を突いて戦う体術使いにとっては
かなり厄介なものだといえる
事実、それらを完全に無視した動きで初音は徐々にパウラを追い詰めていった。
- 96 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:47
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>95
突如発生した霧にも何ら躊躇することなく、パウラは床を蹴り、発勁によって吹き飛んだ初音との距
離を詰めていく。
案の定ほどなくして霧は晴れ、露わになった初音の心臓目がけ、パウラは必殺の貫手を送り込んだ。
しかし──敵手が不意に横へとずれたことによって手刀は目標を逸れ、壁を穿つに留まる。
「これは……?」
パウラの回りを嘲笑うように跳び回る初音の動きには、予備動作というものがまるでない。見る見る
うちに、パウラの扇情的な身体に刻まれる傷は増えていく。
しかし、それほどの苦境に陥ってすら、彼女の表情は変化することがなかった。
急所への防御を固めたまま、何かを探るように目を閉じ、次々と繰り出される攻撃を甘んじて受けて
いる。
(この動きは……先程までのそれとは、余りにも違いすぎる。だとすれば……)
亀の如く身を固めるその姿が、遂に崩れて膝を付いた。止めとばかりに、一気に畳みかける初音。
その時だった──ずっと閉じられていたパウラの瞳が、キッと見開かれたのは。
両手が閃くと、不意に投げ放たれた飛刀が、初音の身体を支え、動かしていた糸を次々と切断してい
く。
攻撃を甘んじて受けていたのは、それによって飛散する血が糸に絡み、弾けることによって発生する
音を聞き分けるため。
目を閉じていたのは、聴覚に集中することによって、その音を確実に捉えんとするため。
「──神罰(とどめ)」
発条のように伸び放たれたパウラの手刀が、鋼鉄をも貫く勢いで初音の心臓を襲う。
両者共に、受けた傷は深い。短いながらも激しい闘いの終焉は、すぐそこまで迫っていた。
- 97 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:48
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>96
次々とパウラの手で糸が切断されていく
見破られたか・・・だが!!
初音はふらつくように床に着地する
そしてパウラが止めの手刀を繰り出したそのときだった。
初音の背中超しにパウラの眉間と心臓めがけ飛刀が猛スピードで飛来していた
二手に分けた子蜘蛛たちのもう一方に初音は飛刀の回収を命じていたのだ。
子蜘蛛によって射ち出されたそれを、初音はブリッジの要領で
後ろに倒れこみながら絶妙のタイミングで回避する
いかに死角を突いたとしても普通に射ち出せば、たちまち避けられてしまうだろう
眼前の狩人には、それだけの技量がある
だからこそ、初音は自分自身を死角とすることで、ぎりぎりまで飛刀をカモフラージュしていたのだ
1歩間違えれば、自分が飛刀によって心臓と後頭部を射抜かれる危険があったにもかかわらず
おそらくパウラから見れば、先程と同じくいきなり飛刀が現れるようなものだ
しかし先程のものとは違い、確実に自分自身へと殺到している
さらに両手両足ともに完全に攻撃の態勢を取ってしまっている、これでは防御も回避も間に合わないはず
そして初音もまた回避のために無防備に床に倒れこむ形になってしまっている
(これが避けられる相手なら、最初から私に勝ち目は無かった・・・ということね)
初音は自分の最後の賭けの結果を見届けようと目を開いたまま
冷たい床に倒れこんだ。
- 98 名前:シスター・パウラ ◆PAULAjo2 投稿日:02/09/29 01:49
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>97
異端審問官の手刀が初音の心臓を貫かんとする、まさにその寸前。
不意に、彼女は自ら姿勢を崩し、床へと倒れ込んだ。その無防備な姿へと向け、止めの貫手を繰り出
そうと、腕を振り上げるパウラ。
しかし──その腕が振り下ろされることは、遂になかった。
飛来した飛刀がその腕を掠め、一瞬動きが止まる。そこへ、もう一振りの飛刀が襲いかかった。
鋭い音と共に、彼女の胸──心臓の真上の位置に突き立っているのは、彼女自身の飛刀。初音が最後
の賭けとして放ったそれを、パウラは回避することができなかった。
口から、喘鳴と共に大量の喀血が溢れ出す。
通常ならば、たとえ視覚を塞がれ、完全な死角からのものであろうと、外せない攻撃ではない。しか
し、度重なるダメージが、パウラから身こなしの自由を奪っていた。
「ダメージを……いえ、あなたの力量を見誤りましたか…………私の……負けです。
しかし──覚えておきなさい……神敵たるあなたに──もはや、安住の地は……ありません…………」
自らの血にまみれた唇でそう呟くと、パウラはゆっくりと崩れ落ち、二度と動くことはなかった。
【シスター・パウラ、死亡】
- 99 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:51
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ
>99
初音はパウラの返り血を顔面に受けながらゆっくりと立ちあがる
そしてしばらく考えた後、パウラの死体に手を伸ばしたそのとき------轟音
おそらくパウラの死を知った他の連中が起動させたのだろう
彼らが、いやもしかするとパウラ自身が仕掛けていたのだろう爆弾が
あらゆる全てを抹消すべく一斉に爆発したのだった。
それから数日後の深夜
(教皇庁ということはカソリックよね・・・・・・)
あの爆発をどう逃れたものか初音は山奥深くの教会を訪れていた、手に紙包みを持って
初音は教会の隣のすでに使われていないであろう墓地に足を進めると、その片隅の地面を手で掘り始める
ある程度の深さになったところで初音は紙包みを開ける-----そこにはパウラの手首が入っていた
あの爆発の中では手首を斬り取って回収するのがやっとだったのだ。
この女は任務とやらのためにおそらくこれまでにも多くの罪無き人々を殺めているだろう
そしてどうせ神など信じていないだろうに死の寸前まで神罰云々を騙る歪んだ心
だが狩人としては有能だった・・まさに恐るべき相手だった
何よりも久々に戦っていて血が沸き立つのを感じた
だからそれに免じて弔いくらいはしてやろう、どうせ国許でもマトモな形で葬られる事はないだろうから
「名前を聞いていて良かったわ、無縁仏ではあまりにも哀れですものね」
名前を書いた紙と共に手首を埋め、申し訳程度の盛り土を施すと、
かなこと2人で食べたアイスの棒で作った十字架を刺しこみ、墓標を作ると
初音はもう2度と振り向くことなく闇路の中に消えていった。
完
- 100 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/09/29 01:51
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>75
ありゃ、奴ぁ、おっぱじめちまいやがった。
さすがにタネがばれたか。まぁ、考えればすぐわかるだろうが。
口笛を鳴らす。高く、短く区切ったそれは、解放の合図であり、殺戮の許可だ。
室内の数箇所で悲鳴が上がり、出口を目指して殺到する人の群れ、その中央で鮮血が噴きあがった。
血の吸い方もろくに知らない成り立てが、頚動脈を噛み千切ったのだろう。
微かにほくそえむ。演出としちゃ、少々出来すぎだ。
そこを中心に人の流れが分かれた。
出口は狭い。
人型の災厄――吸血鬼のそばをすり抜け、出口を目指す判断ができたやつはまだいい。
完全に棒立ちになって周囲を見回す者、闇雲に走り回る者、
そして、手持ちの火器を吸血鬼に向かって撃ち放つ者……その大半は外れ、無関係な人間を撃ち倒す。
高く上がった血飛沫が照明にかかり、部屋全体をさらに赤黒く彩った。
ある意味、いつもの光景と言えた。
その中にあって異質な存在がただ一人――
俺を追ってきた”親友”――化け物を狩る狩人。
奴の考えてることは何となく分かる。
俺を追うことを優先するか、人間達を逃がすほうを優先するか。
奴は一瞬迷って、先のほうを選択するだろう。
今いる吸血鬼を排除し、おのれが囮になって犠牲者の増加を防ぐ――
おそらくはそんなところだ。
俺は、群集に混じって奴に近づいていく。
- 101 名前:比良坂初音 ◆iOHATUNE 投稿日:02/09/29 01:56
- 比良坂初音 vs シスター・パウラ 闘争纏め
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ご意見、ご感想はこちらまで
ttp://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=029002304
- 102 名前:高見沢逸郎(M) ◆VERDE6nY 投稿日:02/09/29 11:43
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
〜導入〜
東京都内、某所。
立ち並ぶ高層ビルの中でも頭一つ抜け出した、高さを誇るオフィスビル。
その最上階で二人の会談は行われていた。
片や、世界でも有数の高見沢グループの御曹司にして社長、高見沢逸郎。
片や、当選直後に電撃的な早さで東京を掌握した都知事、黒岩省吾。
50人近くが収容出来るであろう大会議室の中に、影はたったの二つきり。
空席を持て余すテーブルの両端に、その二人は控えていた。
何故かカーテンは全て下ろされ、他に人の影は無い。
「……さて、お話ですが」
ダブルのスーツをきっちりと着こなした高見沢が、まず先手を打った。
対角線上に位置する黒岩に聞こえるよう、その声はマイクを通して増幅される。
「仮にも都知事であるアナタを呼び出した理由は他でもありません、」
マイク越しであっても威圧感を発する、低音の抑えた声。
それは、何処か演技をする役者を思わせるような響きでもある。
「私達の会社は少々、強引―――というより、非合法な事も行っていましてね。
あっという間に権力を握ったアナタの事だ。どうせ警察もアナタの手先でしょう?」
テーブルに肘をつき、手を組み合わせて高見沢は不敵な笑みを浮かべた。
眉をしかめた都知事がマイクに口を近づけ、反論しようとする。
だが、次の瞬間、穏やかな笑みからは想像もつかない一言が飛びだした。
「それを少し、見逃して頂きたい」
- 103 名前:黒岩省吾 ◆sChIjITA 投稿日:02/09/29 11:44
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
高見沢の言葉が原因かのように、部屋が突如闇に落ち込んだ。
急に暗雲が、空を飲み込みはじめたのだ。
次の瞬間カーテンなどないかのような光が、部屋の中を蒼白に包み込む。
稲妻が突然に落ち、黒岩の皮肉げな笑みを照らした。
続いて雲に飲まれた空が、張り裂けるような絶叫を轟かせる。
殴りつけるような雨音が、わずかに遅れて部屋の中に響いた。
突然と言えばあまりに突然な、夕立だった。
「フッ、何を言うかと思えば」
椅子に深々ともたれかかり、尊大な態度を見せる黒岩。
マイクから離れながらも、その低いがよく通る声は確かに高見沢に届いた。
「俺はこの東京を・・・いずれは世界全てを変える。あんたらも、例外じゃないさ」
- 104 名前:赤 ◆eR/tSEKI 投稿日:02/09/29 11:46
- 公司からの命令によりここに来た・・・任務はここで強き者と戦え。だそうだ。
無用な戦いは避けたいが任務ならば仕方が無い、ここで戦うまでだ。
出典 :東京アンダーグラウンド
名前 :赤(赤と書いてせきと読む)
年齢 :20代
性別 :男
職業 :公司A級師兵
趣味 :なし
恋人の有無 :なし
好きな異性のタイプ :なし
好きな食べ物 :なし
最近気になること :華秦の変わりよう。
一番苦手なもの :なし
得意な技 :紅蓮焦 獄火施
一番の決めゼリフ :――――――ヤツ等を使うというのか・・・?
将来の夢 :なし
ここの住人として一言 :血のような赤い炎がほしくないか?
ここの仲間たちに一言 :仲間?そんなヤツはいない。
ここの名無しに一言 :俺の炎に焦がされるな。
- 105 名前:高見沢逸郎(M) ◆VERDE6nY 投稿日:02/09/29 12:08
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>103
「ふむ、交渉決裂ですか」
予想通り、といった表情で高見沢が応じる。
「世界全てを……ね。
それを行うには、途方も無い『力』が必要ですよ」
口の片側だけを吊り上げて皮肉げな微笑を作る。
皮張りの豪華な椅子に体重を預け、見下すような姿勢で。
「体力、知力、財力、運―――種類は色々あります。
それらのどれが欠けてもいけない。
望みを叶える、というのは並大抵の事では出来ませんよ」
椅子を軋ませ、高見沢がマイクを掴んだ。
雷光が再び部屋の中を染める。
影となった高見沢の表情は、読み取れない。
「だからこそ、他人を利用し、蹴落としでもしないと達成出来ない。
たった一人でもそれが出来るなら―――」
間。
「それはもう、『人間』じゃありませんね」
- 106 名前:モリガン・アーンスランド ◆4EmpreSs 投稿日:02/09/29 13:38
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>51 >76
影だけを残して消えた――
魔力で作り出した「もう一人のわたし」、とも言える分身が。
「良い物を持ってるじゃない。ほんの少しだけ見直したわ」
熱い。身体を焼く光。
この光は危険だ、と思った瞬間には半ば飲み込まれていた。
熱い。それなのに、寒い。
未だに残る感覚が伝える悪寒は、震えるほど。
けれど・・・それが、いい。
この痛みすらこの上ない快感に変わる。
「・・・貴方達にも分けてあげるわ。一緒にのぼりつめましょ?」
掲げた両手の間から零れるのは、紫。
見る間に強さを増すその光は、身の丈ほどにもなり。
破壊の力を乗せて、地上の二人に向け解き放たれた。
- 107 名前:黒岩省吾 ◆sChIjITA 投稿日:02/09/29 13:52
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>105
さ、と波が引くように自分の表情が失われていくのを、黒岩は悟った。
黒岩は、文字通り人間ではない。
ダークザイドと呼ばれる、闇の種族なのだ。
もっとも、高見沢がそんなことを知っているはずはない。
そう考え直し、表情を冷たい笑みに戻す。
五十土の放った白い閃光が、表情の変化を隠したことを願いつつ。
「ああ、俺は人間じゃない」
黒岩は、冗談のように事実を述べてみせた。
「貴様等のような、欲望だけで生きている人間とは別種だな」
にやりと笑いながら、言葉を紡ぎ続ける。
そして最後の言葉と同時に、その目が刃を宿した。
「だからこそ、この国を建て直せるのだ」
- 108 名前:高見沢逸郎(M) ◆VERDE6nY 投稿日:02/09/29 14:32
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>107
耳に届いた言葉を聴いて、高見沢は少々苦笑にも似た表情を作る。
そして努めて冷静に―――
「立て直す、ねぇ」
否。その声は先程までの紳士的な響きとは違う。
顔つきすら変化しているのでは無いかと思わせる、全くの別人。この男の豹変はそれほどの物だった。
「ま、物が分かってねぇ奴に気取って話す必要もねぇよな」
スーツのボタンを外し、ネクタイを緩め、服装を崩す。
仮面を剥ぎ取り、全くの別人に変化した口調で、高見沢は言う。
「欲望だけで生きる? 何か悪いか?」
握ったマイクを持ったまま席を立ち、黒岩に歩み寄る。
上から見下ろされる―――というよりも壁が迫るような威圧感を発しつつ。
「弱い奴は喰えばいい、強い奴だけ生き残る。
基本的なルールじゃねぇか。『力』があればそれでいいんだよ」
傲慢とも取れるが、間違いは、無い。
「譲り合えるとか分かり合えるなんてのぁ幻想だ。
戦うのが動物―――いいや、命の本質って奴なんだ」
懐から一枚写真を取り出し、黒岩に向かって投げる。裏向きの写真がテーブルに落ちた。
「気取るんじゃねぇよ、バケモノ」
- 109 名前:黒岩省吾 ◆sChIjITA 投稿日:02/09/29 16:50
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>108
伝法な口調で高見沢の強靭な意志をぶつけられ、黒岩はわずかに俯いた。
投げられた写真には、恐らく黒岩の真の姿が写っているのだろう。
状況は、高見沢のほうへ傾き出していた。
「フン・・・・・・」
しかし、黒岩は鼻を鳴らし、顔をあげて高見沢へと刃そのものの視線を投げつけた。
不利な状況にあってなお、その表情は冷笑に彩られている。
「なら、話が早いな。はっきり言おう」
写真を手に取ると、表面を目に入れることもなく破る。
そして、わざわざ立ちあがって丁寧にゴミ箱へと捨ててみせた。
「あんたは邪魔なんだよ。俺の欲望のために、な」
二人の視線が火花を散らし、雷鳴が、部屋一帯に鳴り響いた。
- 110 名前:高見沢逸郎(M) ◆VERDE6nY 投稿日:02/09/29 17:12
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>109
「最初からそう言やぁいいんだよ」
目も眩むような光の中、二人は一歩も退かず睨み合う。
強く握り締めたマイクが僅かに軋む。
「正直になれば、それで済む話なんだから―――なッ!!」
最後の言葉を言い放つと同時に、黒岩に向かいマイクを投げつける。
その行方を見もせず、高見沢はポケットから何かを取り出した。
振り向き、空いた手でカーテンを引き裂く。
そして取り出した物―――カードデッキと呼ばれる、超常の力を秘めた箱を、鏡へ掲げた。
「変身」
指を弾き、余裕さえ感じさせる仕草を取りつつカードデッキを腰に。
幻像が鏡から生まれ、高見沢の体へ重なる。
次の瞬間――――緑色の甲冑の男が、其処に立っていた。
- 111 名前:黒岩省吾 ◆sChIjITA 投稿日:02/09/29 17:39
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>110
漆黒の器械が、雨音に沈められた部屋の中で音もなく黒岩へと飛ぶ。
黒岩は余裕の笑みを浮かべ、素早く空中のマイクを掴み取った。
マイクを近づけ、同時に疾風を巻き起こしつつ指を高見沢へと付きつける。
「知っているか!? 世界ではじめてのマイクは1877年、エジソンによって発明された。
つい最近までいわゆる黒電話に使用されていたという……!」
黒岩の薀蓄が、高らかに部屋に響き渡る。
自分の知性に満足のいった表情を見せると、黒岩はマイクを後に放り捨てる。
目の前にいるのは、高見沢が変身した緑色の妙な鎧騎士。
正体はわからないが、生半可な相手でないことだけは伝わって来る。
ならば。
「ブラックアウト!」
黒岩は目の前に手を翳す。
同時に闇色の霧が黒岩の肉体を包み、蒼い黒騎士の姿へ変貌させる。
雨音と雷鳴と響く中、異形の騎士の戦いが幕を開けた。
- 112 名前:仮面ライダーベルデ(M) ◆VERDE6nY 投稿日:02/09/29 18:01
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>111
騎士は、対峙する。
緑の甲冑にぎょろりとした巨大な目をつけた仮面は、カメレオンを思わせた。
態度を一瞬にして変化させるこの男に相応しいイメージとも言えるだろう。
高見沢が変身した姿。それは『仮面ライダー』の一人、仮面ライダーベルデ。
本来は鏡の中へ飛び込み、他にも存在する12人のライダーと戦う存在。
だが、その力はライダーだけに振るわれる訳ではない。
「さて、やろうかい」
ベルデは絨毯の生地を蹴散らし、一歩大きく踏み込む。
間合いは遠い。ここからではどんな攻撃を繰り出しても空振りに終わるだろう。
だが、ベルデは左足を持ち上げ――――会議卓を思い切り蹴り飛ばした。
勢いづいた巨大なテーブルは大気を押し退け、黒騎士へと迫る。
木片が舞い散る中、ベルデは次のアクションを起こす為、腰へ手を伸ばした。
- 113 名前:黒岩省吾 ◆sChIjITA 投稿日:02/09/29 18:19
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>110
真っ向から来ると見せかけて、緑の騎士、ベルデは机を蹴り上げた。
「卑怯な!」
一声あげて黒岩――――いや、ダークザイドの暗黒騎士、ガウザーは剣を抜き放った。
縦に閃光が走り、飛来した机がぴしり、と音をたてて真っ二つに割れる。
騎士の名を持つガウザーにとって、決闘の場で姑息な手段を使うことは許せない。
「刀のサビにしてくれる!」
割れた机を片手で払い、もう片方の手で胸元を狙う矢のような突きを放った。
- 114 名前:暗黒騎士ガウザー ◆sChIjITA 投稿日:02/09/29 18:20
- >113
この俺が・・・変身忘れだと!?
- 115 名前:仮面ライダーベルデ(M) ◆VERDE6nY 投稿日:02/09/29 18:39
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>113
やはり、騎士はあっさりと机での攻撃を凌いだ。
ベルデの読みどおりの行動だ。仮面の内側でほくそ笑む。
キザでプライドが高い相手の思考を読む。
その程度、まだ株の相場を読むほうが楽だ。
カードデッキからカードを引き抜き、左腿から伸びたカードキャッチャーに差し込む。
刃がベルデに到達する寸前に声が響く。
『クリアベント』
ふ、とベルデの姿は空間に溶け込むようにして消え失せた。
ライダーはカードの力によって幾つもの能力を発揮する。
周囲の風景と同化し、姿を消すこの能力もその一つ。
机を破砕する轟音に紛れ、ベルデは出来るだけ音を立てず背後に回りこんだ。
ガラ空きの背中を晒す黒騎士を、鼻で笑ってやる。
卑怯だとは少しも思わない。戦う際に知恵と手札を使い切るのは当たり前だ。
(勝てばいいんだよ、勝てばな)
脊髄を砕く鋭い手刀が、空を滑った。
- 116 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/09/29 21:30
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
導入
吐いた紫煙で暗闇に白色を一つ刷き、あたしは指に挟んだ煙草を地面に落としやした。
踏み消しながら、しゃくれたてめえの顎なんぞ撫でつつコートの乱れを直してみます。
夜もめっきり冷え込んで来たもんだ。すっかり秋ですねえ。
え、煙草のポイ捨てなんかして、折角金の掛かった日本庭園の美観が台無しだ、ですかい。
はは、此処はあたしの庭じゃねえ、依頼人の家なんで。
こんな夜更け、しかも他所様の庭の隅に突っ立ってるのは、これも仕事でねえ。
依頼人の名前は……勘弁しておくんなさい。守秘義務ってやつですよ。
ただ、最近紙面を騒がせてる大物代議士っていやぁ、大方察しがつくんじゃありませんか。
バレる悪事をやるのが三流、全てを闇の中で済ませられるのが一流――てえ言葉も
ありやすがね。何ですか、昨今は悪党も薄っぺらい三流ばかりのようで。
収賄に脱税、汚職なんざ珍しくもねえが、この依頼人はちょいと欲の皮が突っ張りすぎたね。
おまけに身辺がキナ臭くなると、秘書に全ての罪をおっ被せて偽装自殺させちまいやがった。
そらまあいいんです。いや、本当はよかねえんですが。
問題なのはここ最近、その件に関わった代議士一派の連中が次々と怪死してるって事でさ。
それも明らかに人間のものじゃねえ手口で。
- 117 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/09/29 21:31
- >116 続き
殺された秘書の遺族が、報復の為に何処ぞのプロでも雇ったんでしょうが……兎に角ブルった
依頼人も、慌てて腕利きを捜して警護に当たらせたって訳です。
要はこのあたしでさぁ。
尤もあたし一人で出来る仕事じゃござんせん。
『相棒』は隣りにいますよ。お月さんが雲間に隠れてるんで、黒い影の中に。
まあ、人殺しでオマンマ食ってるような輩に、まともな奴なんぞいねえです、ええ。
同じ稼業のあたしがいうんだ、間違いないねえ。
ええ、あたしもね、殺し屋なんですよ。ちっと特殊な部類ではありますが。
だから屑同士で殺り合えなんてえ依頼は、例えば子供さんを誘拐して殺せ、なんぞ言われる
より、何ていうか心が痛みませんや。
おっと失礼。
あたしは阿紫花英良(あしはな・えいりょう)と申しやす。
頂くものは頂きますがね、仕事に手は抜きません。
御用の際はご贔屓に――。
- 118 名前:悪アギト ◆XAGITO1o 投稿日:02/09/29 21:32
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>76>106
閃光に耐え切れた事にかすかに息をつく。
「胸突き八丁…だったか?これからが本番だ…。
なかなかの前戯だったぜ…」
全身が炎の中に蕩けてゆく感覚に浸りつつ上空から降るドリルに拳で応える。
ニセモノであっても、感覚が更に拡大してゆく。
夜魔の女王に対し、叫ぶ。
「ハハッ!シャワーかよ!バックの方に気をつけな!
今日の天気は光の雨のち、ドリルとトマホークブーメランだぜ!」
先ほど全力で投げた斧が大きな弧を描き、戻ってくる軌道に入る
上空にいるもの全てを巻き込む殺戮の為の嵐が吹く。
―――――――そう、イク時は一緒だ。
- 119 名前:犬神博士投稿日:02/09/29 21:34
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>116>117
街明かりが、夜の中からも闇を奪って居る。
この屋敷までの道程は、彼と彼の姿にとってまるで昼の様に明るかった。
少なくとも現代の夜闇よりは遥かに昏い、漆黒の外套にソフト帽。
今の世からは、どうしようも無く浮いて居る、その姿。
やけに人目につく自分の装束をわずかに疎ましく思い乍、彼はその屋敷の前に立った。
彼は、犬神博士と呼ばれて居る。
式神を使役し、因縁調伏、即ち呪詛を行う事を生業としている故の通り名。
しかし現代に於いて、調伏祈祷の依頼など滅多に無い。
此の度の呪殺の依頼も、随分と久しぶりの仕事ではあった。
だが、其れは寧ろ良い事だ。
呪詛による報復は又報復を呼び、其の報復はさらなる報復を呼ぶ。
因縁調伏とは―――――終わら無い、地獄の門なのだ。
其の地獄の門を、犬神博士は久方振りに開こうとして居た。
- 120 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/09/29 22:19
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>119
六本目だか七本目だかに火をつけかけて、あたしは煙草をポケットに仕舞いやした。
風が変わった所為です。
お屋敷の門の方から、ヤバい匂いのする風が吹いてくるんでさあ。
いえね、あたしは霊感だの何だのって方面にゃ、別段明るくありやせん。
ただ、こういう商売してますと、理屈じゃねえが躯が動く時ってのがあるんですよ。
強いて言うなら勘――ですが、どえらい何かが来る。これだけは確かだ。
出番のようだぜ、『相棒』。
「起きなせえ、プルチネルラ」
あたしは黒手袋を嵌めた両手を軽く振ります。『相棒』――プルチネルラは、二メートルはある
巨体を揺すり出しやした。きりきり、きりきりと音を立ててね。
あたしの手袋の指先から伸びた細い細い糸、道化師みてえなその躯の各部と繋がった鋼線が、
鈍い反射光を放っています。
いびつに盛り上がった双腕に、切り出した大木みてえな棍棒と白木の鞘に収まった日本刀を握り、
腰を落として地面を踏ん張る脚は四本です。
邪悪としかいいようがない歪んだ口元。舞踏会でつけるようなマスクで隠された目元。
ええ、こいつは生きちゃいません。
これは人形――あたしの糸繰りで動く懸糸傀儡の一体・プルチネルラでござんす。
あたしら「黒賀の一族」は、代々この技を伝えて来た人形使いの末裔でね。
現代じゃあ、金さえ積まれれば何でもしてのける裏通りのエキスパートなんですよ。
ひょい、と跳んでプルチネルラの肩に乗っかります。
左手の薬指を絞っただけで、マッドピエロは図体からは想像も出来ねえ速度で走り出しやした。
闇色の風に乗って駆ける駆ける。おお速いね、もう門の近くだよ。
客人は丁重にもてなさねえとなあ。
取り敢えずほれ、その棍棒で門ごとぶち抜いておやんなさい。
- 121 名前:犬神博士投稿日:02/09/29 23:03
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>120
――――――――――壇。
大きな音と共に門が砕け散り、破片を纏った侭の棍棒が犬神博士を襲う。
死神の来訪を悟って居た相手が、護衛を雇ったのだろう。
其れも恐らくは、其の死を犬神博士だと知る者の雇った護衛だ。
無用の殺戮は好ま無いが、しかし躊躇いも彼の中には無い。
其の棍棒が放ったのは、人一人位ならば肉を破り臓腑を撒き散らしうるだけの一撃だった。
正面から当たれば、初老の犬神博士の体など塵芥と化すで有ろう。
だが、犬神博士はその暴力を受け止めるかの様に、其の細腕を突き出した。
圧し折れる、見た者が居ればそう思ったかも知れ無い。
最も、其の一撃は犬神博士を圧し潰す事は無かった。
差し出した手が見えない圧力を産み、手に達する前に棍棒の動きを止めた。
棍棒の招いた暴風が、無限の螺旋と化し、狂々、狂々と廻り始めた。
螺旋は緩やかな動きで、犬神博士の手に吸い込まれ、やがて光の球と変じる。
其の閃光の球を、扉の中へと返却する様に、犬神博士は放り投げた。
- 122 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/09/30 00:18
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>120
布団に頭突っ込んで震えてるだろう依頼人が更に悲鳴を上げそうな、そんな馬鹿でかい
破砕音を立てて、棍棒は門を突き破りやした。
うん、こいつは相変わらずいい動きをしやがる。
ただねえ。その向うにいる奴をし止められなかったのは頂けねえな。
あのな、それじゃ意味ねえんですよ。
門に開いた大穴の向うに、厳しい顔付きのおっさんが立ってんのが見えやす。
コートにシャッポ、口髭も黒だが顎髭は髪とおんなじ白髪だ。
そのおっさんが前に出した手の辺りで、見えねえ壁でもあるんでしょうか、プルチネルラの
棍棒はそこでストップしてるんでさ。
しかし、妙ちきりんな技を使いなさる旦那だよ。
まあ、あの連続殺人の手口からして、相手はあたしらみたいな裏稼業のそのまた裏――、
呪術使いだろうとは思ってやしたがね。
噂に聞いた事はありやしたが、いや、やり合うのは初めてです。
くくく、腕が鳴りやすって、ちょ、ちょっと待っておくんなさい、何ですかあの光る球は。
何だか判りやせんが、流石に喰らうとやべえんじゃないですかい。だから、
「ちっ、引きな!」
動かすのは右の人差し指、薬指、それから左の親指。
出した指示を即座に受けて、物言わぬ相棒は棍棒を振り上げ、跳躍する動作を同時にやりやす。
門を下から分断して、その勢いで夜空に飛び出したって寸法ですよ。
五、六メートルまで躍り上がったあたしらの下を、球はぶっ飛んで行きやした。
さて、飛び道具がある奴に距離を取らせんのはいけませんわな。何とか懐に入り込まにゃ。
なので着地後、あたしは再度、鈍器を振り上げたプルチネルラを突っ掛けさせます。
この際だ、門は完全にぶっ壊しちまいやしょう。どうせあたしのじゃないしねえ。
- 123 名前:ファイレクシアの抹殺者(M)投稿日:02/09/30 12:31
- >ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/366
ファイレクシアの抹殺者VSミア・フォーテー
袈裟懸けにされた胴体の上半分が、下半分を滑り落ちて死体の山に突っ込んでいく。
更に間断なく降り注ぐ銃弾が雨霰と。
遠慮会釈なく穴だらけになったそれの上半分は、オイルの体液を流しながら死体の中へ潜り込んでいく。
残された下半分は主を失い、ゆっくりとくずおれていった。
しばしの静寂、堆く積み上げられた死体の海を泳ぐそれは未だ姿を見せない。
……静寂。
……静寂。
……静寂。
死臭だけが漂う静寂の中、我慢強いモグラは頭を出す気配すらない……と思った刹那。
爆発的に少女の背後で弾ける死体。
血と屍肉が舞い上がり、ボトボトと降り注ぐ。
朱く染まった空気に立ちつくすのは、下半分を死体で補ったそれ。
もはや肌色の部分が大半を占める身体で、そこだけは生来の色を残す顔が笑みを刻んでいる。
少女が反応するよりも早く、両腕を拘束する。
そのまま大きく体を振り上げて、アスファルトが覗いている地面めがけて身体を振り下ろす!
- 124 名前:犬神博士投稿日:02/09/30 13:43
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>120
棍棒は門を微塵に破り、暴力を付随させて犬神博士を襲う。
彼の放った光球は遣り過ごされ、しかし消えずに由良由良と辺りをさ迷っている。
破片の奔流が黒衣の博士を覆い、頬にあかい糸の様な傷を作り出して行った。
血の筋を幾つも顔に作り乍、彼の険しい目は己へと迫る棍棒を見据えている。
彼と棍棒との距離が縮み、零になる其の寸前に、光球は流れるように彼の手元に戻った。
光球は旋風を産み、呪詛は息吹を産み、門の残片と棍棒とを薙ぎ払った。
旋風は突風と化し、光球は迸電と化し、門の奥に居る操り手を穿たんとする。
無限の螺旋を描き、人の死を紡ぎ続ける其の風の中心に、鬼の顔が浮かんだ。
蒼白な顔、ざんばらに乱れた白髪、あかく炯炯と光る其の眼。
禍禍しい、犬神博士の式王子だった。
- 125 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:20
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>導入
一人の男が、ドアの前に立って居た。
外見は、そう、不吉な黒い案山子とでも言えばイメージが伝わるだろうか?
まず背が高い。日本人離れした背の高さは190cmに届いているだろう。
そして痩せている。骨と皮とまでは行かなくとも、棒の様に細い手足であり、
青ざめた肌の色とあわせると酷く不健康な見かけでもあった。
しかも着込んでいるのは大時代な釣鐘マントに山高帽。
救えない事に、手足と同じく細い手指には捻じれた木製ステッキが握られていた。
杖が必要な年齢には見えない。だが、何歳であるとも言いがたい。
奇妙なことに、青年とも老人ともつかない全く年齢不詳の見かけである。
そして老教師のような落ち着いた雰囲気を醸し出しているのは、
彫りの深い眼窩の奥に光る、珍しい碧色の瞳。
まさに普通の人間が抱く魔法使い然とした格好をしている男。
彼の名はメルキオル。現代に生きる魔術師の一人である。
彼は左手で引き摺ってきたスーツケースを一度振り返ると、インターホンのボタンを押した。
表札には、『人形遣い』の異名を持つ、有名な魔術師の名が刻まれている。
「蒼崎橙子は在宅か?」
- 126 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:20
- >125
唐突に響くインターホンと、直後、ドア越しに呼びかける耳慣れない声に、
私は午後の愉しみである一服を邪魔された。
「誰だ……まったく、これだから風情を理解しない輩は困る」
誰に言うでもなく悪態をついて、吸いかけの煙草を灰皿で揉み消すと、
私はゆっくりと椅子から立ち上がり、ドアへ向かって歩き出した。
風情を理解しない輩とは言え、自分の事務所に訪れた客であることに
は違いない。まさか、居留守を使うわけにもいかないだろう。
ノブに手を掛け、ドアを開ける。
瞬間、私の目に映ったものは、明らかに常識の範囲から外れた風体の
男だった。
「私がその蒼崎橙子だ」
平静を装ってそう答えながら、私は、自分の事務所の唯一の社員と、そ
の妹に休暇を出したことを、珍しく感謝した。
- 127 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:20
- >126
あの兄妹がいたのでは、例えこれから異常が起こったとしても、庇いき
れる自信はない。特に、上等では無いとはいえ、他者を拒む結界が敷か
れたこの事務所に易々と入り込むようなものが相手では。
……ちなみに、兄妹水入らずのお出かけに置いていかれた女が一人、
私の部屋で不貞腐れて寝ていたりはするが、あいつのことは特に心配す
るまでも無いだろう。
この男は、明らかに魔術師であるか、それに類する物には違いない。
だが、目的がわからない。
協会の追手では有りえない。彼らは、魔術師を捕獲するのに、正面から
当たるような愚策は犯さない。
なら、一体この男の目的はなんなのか?
様々な思考を巡らせながら、しかし、自分の口から出た言葉は、それと
は異なったベクトルの質問だった。
「それで、おまえは誰なんだ?」
- 128 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:21
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>126
「我が名はメルキオル。大いなる作業の道程に立つものである。
今日は汝が援助を求めるべく参った」
招き入れられたメルキオルは、ソファーに腰掛けると杖で軽くスーツケースに触れた。
それだけの行為でスーツケースの錠は外れ、その口を大きく開く。
内部に収められていたのは・・・・・・死体。
それはかつて、ゴドーワードと呼ばれた魔術師の遺体であった。
統一言語を操り、最も魔法使いに近いと称されていた魔術師の。
「コレの生き人形を製作して欲しい」
死体を前にしているとは思えない程に落ち着いた声。
目の前に出されたコーヒーの湯気を眺めながら、メルキオルの話は続く。
「弱さを克服出来ぬこの男の人格は、我には不要。
魔術回路のみに純粋化し、辞書として作りなおす。
汝の協力あらば、作り直す手間は大きく減ろう。
――――答えは、如何に?」
- 129 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:22
- >128
「ゴドーワード……!」
メルキオル――――古の三賢者の一人を名乗るその男の持つスーツ
ケースの中身に、私は思わず声を漏らす。
協会が血眼になって探すこの男がこの街の名門女学園に教師として紛
れこんでいた事は、先日のとある事件の途中経過で明らかになったことで
あり、それは私も知る所だった。
だが、まさかその男が、死んで私の目の前に現われようとは。
「……そうか、死んだのか、ゴドーワード。根源の渦へ最も近いと言われ、
世界にすら自らの言葉を伝える秘術を持ったおまえがね」
言葉に出すつもりはなかったが、それは音として私の耳に届いた。
偽神の書(ゴドーワード)という存在の死は、私にとって、予想以上に動
揺を誘う物だったらしい。
だが。私は、ゴドーワードの死というものに、さして興味を持ってはいない。
動揺こそすれ、何か感慨を抱くかといわれれば、否と即答するだろう。
私はコーヒーカップに口をつけると、中身を半分ほどあおった。
苦みばしった液体が喉を嚥下し、その味が私を平静へと引き戻す。
- 130 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:22
- >129
「で、人形を創れ、という話だったな」
話を本題へと戻す。
この案山子のような男は、偽神の書が用いた統一言語を、辞書にして
著すという。
確かにそれは、根源への距離を大いに縮める手段として、最も効率の
良い方法だろう。私も魔術師の端くれ、死者を蘇生し、その言語だけを奪
い去ると言うことに対しては、何の禁忌も持ってはいない。
だが。
人形師、蒼崎橙子の答えは、いつでもこうと決まっている。
「断る」
男から視線を外し、再びコーヒーカップに口をつけながら、私は一言で
相手の依頼を蹴った。
「私は、自分が気に入った仕事以外はしない性質でね。
どんなご大層な理由があろうとも、気に入らない仕事は受けたことが無
いことが誇りなんだ」
- 131 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:25
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>129 >130
「ふむ。気に入らぬ、か。
・・・・・・汝がそういうのであらば、仕方あるまい」
軽くそう言うと、再びスーツケースにステッキで触れる。
そうなるのが当然であるかの様に閉じるスーツケース。
断られた事に対してはなんら感慨を抱くことなく、メルキオルは呟いた。
「まぁよい。手間がかかるのは事実であるが、別に急ぐ話でもない」
僅かに碧色の目を光らせながら、眠気を誘うような調子で再び話し始める。
握られたままのステッキを、手の内で軽く弄びながら。
「援助の話はこれで終わろう。ではもう一つ。
我には気になっている噂がある。
――――蒼崎橙子よ。汝は今もまだ魔術師か?
永遠を共に見据え、無限と対峙する我が同胞か?」
言葉を一旦切った後、僅かに強い声色で最後の質問を投げかけた。
「汝が協会より逃走せしは、意味のある行為であったのか?
答えは、如何に」
- 132 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:26
- >131
「意味があったか、だって?」
男の問いを、おどけたように反芻する。
莫迦な問いかけだ、と思う。そんなものの答えは、一つしか無い。
「あったさ。私が協会から逃げたことには、十分意味があった。
だがね、それは残念ながら、おまえが求めているような、魔術師的なモ
ノじゃ無かったがね」
私の答えに、男はそれは何かと問いたげな視線を寄越した。
説明してやる義理も無いが、答えてやら無い道理も無い。
私は煙草を取り出して火をつけると、それを口に咥えて、煙を大きく吸い
込み、そして吐き出した。
「それはね、今の生活さ。
私は、自分の今の生活が、幾つもの奇跡と様々な偶然によって成立し
ているものだと知っている。例え時間を巻き戻して、同じ人生を同じように
やり直したとしても、今と同じモノは得られない」
- 133 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:26
- >132
自分でも、弱くなったな、と思う。
私の理想の生き方は、仙人だった。卓越した力と知識を持ち、しかし、
何事にも干渉する事無く、ただ山奥に佇んでいる。
だが、現実はといえば、どうだ?
私は現世のしがらみに縛られすぎて、もうそんな生活は望むべくもない。
それに、無様な事に蒼崎橙子は、今のこの生活を、今のこの人間関係を
――――――好ましいとすら思っている。
「私が協会から逃げて得たものはそれだけさ。そして、それで十分だ。二
度と手に入らない物を手に入れることが出来たんだ、それだけで永遠を
諦めるには十分な価値がある」
そこまで言って、一端言葉を切ると、私は再び男を見据えた。
「二兎を追うものは一兎をも得ず。これ以上他のモノまで求めたとしたら、
それは欲張りという物だろう」
- 134 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:27
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>132 >133
「嘆かわしい臆病さだ。無為を恐れ、進むべき道で立ち止まるとは。
あまつさえ、既に過ちの芽をも良しとしたか。
―――かつては我が友も、そうして道を誤り袂を別った。だが、汝の道は我が正そう。」
ばさりとマントを翻してメルキオルが立ち上がる。
同時、別人のような速度で口元が動いた。
たった一つの口の中から、雑踏の中で耳を済ませた時のような幾十通りもの声が一斉に喋りだす。
轟々と流れ出る言葉は時に耳障りなほどに甲高く、時に這うように低く、工房内を満たした。
更に杖が緩やかに弧を描いた。先端の軌跡は輝く碧の線となり、宙に模様を描き出す。
禍々しくも複雑怪奇な紋様が宙に浮く球体を作り出し、
球体の内側からは巨大な心臓を思わせる赤黒い光が、どくどくと流れ出す。
球体は、まるで風船のように弾けた。
内側から出現したのは、黒々とした大きな犬だった・・・・・・小型車程の大きさの犬が居るとすればの話だが。
その舌は青白く燃え上がり、呼気は硫黄の匂いが漂っている。
「かりそめの命、かりそめの力。
なれどその牙も爪も汝を殺し得る力を持つ」
それまでの動きの速さが嘘だったかのような静謐さで佇みながら、メルキオルは呟く。
「では、無為を恐れて無為に住まいし汝に命題を与える。
我が呼び出せしこの獣を消滅させてみよ。
――――全ての力と手駒を使い、汝の死神を退けて見せよ」
- 135 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:27
- >134
メルキオルが席を立ったと同時、私は咥えた煙草を手に持ち替えると、
席を立ち上がって後ろに下がり、宙空にルーンを刻み込む。
やがて男の詠唱が完了し、使い魔たる黒犬が、ヤツの傍らに現出した。
しかし、それが行動するよりも早く……私が宙に描いたルーンは完成し、
いきり立つ黒犬のその身体を、満遍なく焼き尽くす。
だが……
「ちっ……冗談じゃない」
無傷。
摂氏千度を超える炎に舐め尽されてなお、黒犬はそこに、何事も無かっ
たかのように立ち尽くしていた。
確かに、ルーンは対象に直接書き込むことが最も有効とされている。宙
に刻んだルーンでは、人間大の物体すら焦がし尽くすことは難しい。
だが、だからと言って。無傷というのは、有りえない事である。
「くそっ、厄介ごとに巻き込まれたものだな」
言って、デスクの引き出しから小型のハンドガンを取り出し、メルキオル
に向けて乱射しながら、私は事務所から飛び出した。
魔術師は、魔術を使わない。
何故なら、魔術はその神秘性によって力を得ているのであり、みだりに
それを使用すれば、種がばれた手品のように、取るに足らないものに成り
下がってしまうからだ。だからこそ、有事の際の防衛手段は、各々なにか
しらの、魔術とは違った手段を持つ。
陽の光が差し込まない階段を駆け降りる。
目指すは、私の工房。何に対抗するにしても、手持ちのルーンでは少な
すぎる。まずは工房に入り、武器を持つことが先決だった。
- 136 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:28
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>135
爆風がもたらした埃を払って山高帽のずれを直すと、自らが呼び出した黒犬を一瞥。
険悪極まる唸り声を上げる怪物を見た後、無感情な口調で呟いた。
「ふむ。コヤツも汝を敵と認めたようだ」
無傷なのは撃たれた筈のメルキオルも同じ。
銃弾が貫き通した筈のコートにさえ、弾痕一つ無い。
「試練からは逃れることは出来ぬ。
汝に可能なのは、前に進むことのみである」
誰に語りかけるでもないメルキオルの言葉の途中で、黒犬がぐぉうと一声吼え、走り出した。
前に在る障害を全て跳ね飛ばし、跳ね散らし、吹き飛ばしながら。
巨体故に階段で多少つかえたが、それでもその速度は人間には出せない速さだ。
「・・・・・・準備が必要ならば、急ぐがいい。でなければ汝は死ぬ」
魔術師は、滑るような足取りで怪物の後を追い始めた。
- 137 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:29
- >136
魔術師は、自らの工房を持ち、そこで自身の研究を延々と続けていく。
この四階建てのビルはそれ全体が私の工房だが、特に二階と三階の部
分が、それにあたる。
私は階段を駆け下りると、自らの作業場に飛び込んだ。
上からはひっきりなしに破壊音が聞こえてくる。
そう簡単に私の住処を壊してくれるな。修理するのは誰だと思っている
んだ、まったく。
口に出さずに悪態をつきながら、私は作業場に散乱する作品の中から、
オレンジのトランクを一つ引きずり出した。去年の十月の終わり頃に使っ
たまま放り込んで手入れもしていなかったから、それは薄っすらと埃を被
っていたが、そんなことを気にしている余裕はないし、気にする必要も無い。
- 138 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:29
- >137
「――――――出ろ」
私は、それに向かって、一言だけそう命る。
それに呼応して、トランクが独りでに、パタン、と開いた。
黒犬は、その体躯で壁すら破壊しながら、とうとう階段を降りきって、こ
のフロアへとやってきたようだった。
閉じた扉越しにすら、その巨体が蠢く気配が伝わってくる。
黒犬は、閉じた扉ごと吹き飛ばそうとその身体を震わせ……しかし、そ
れよりも早く、扉は内側からぶち破られ、作業場の中から飛び出した"そ
れ"が、黒犬の首筋に噛み付いた。
それは、ネコだ。
私よりも一回りほど大きく、全身を漆黒で塗り固められた、薄っぺらい影
絵のネコ。
トランクから飛び出したそれは、私の使い魔の一つで、名前は特に無い。
魔術師は、本人が強くある必要は無い。メルキオルがそうしたように、私は
私の使い魔を持って、その案山子のような魔術師と対峙した。
- 139 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:30
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>137 >138
階段を下りてきたメルキオルが最初に見たのは、二匹の黒い獣が暴れまわる図だった。
黒犬が猫を噛む。影絵に牙が突き通った後、そこには元のままの猫が居る。
黒猫が犬を噛む。肉と血を存分に噛み裂き離れた後、そこには傷の無い犬が居る。
「喰い止める事が出来るとは、なかなかに良い使い魔を飼っている。
・・・・・・ふむ。同類同士、千日手か。
なれど、我が出した命題は消滅。
故にその解答では不十分である」
そう告げると、無造作に二匹に歩み寄り、
暴風のごとく暴れまわる黒い犬の頭をステッキで軽く叩いた。
巻き込まれる事も猫に襲われる事も、微塵も気にする事の無い行為。
犬が、内側から内臓を撒き散らしながら弾ける。
死体の中から新たに現れたのは、同じ大きさの犬が二匹。
「では続きだ。疾く、解答せよ」
- 140 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:31
- >140
現われた二匹の黒犬のうちの一匹に、影猫が踊りかかった。
だが、それが限界だ。
十把一絡げな連中ならまだしも、傷つかない、死なない怪物が相手では、
あの影猫には荷が重い。
ネコの脇をすり抜けた黒犬の片割れが、その鋭利な牙を剥き出しにした。
消滅。案山子は確かにそう言った。あの黒犬を消滅させろと。
なら、やってやろうじゃないか。
工房という物は、魔術師にとっての城という物は、防御の為の代物じゃな
い。やってきた外敵を確実に処分するための、必殺の武器だ。
「開け」
私は、短くそう命じる。次瞬、作品をぶち壊しながら突進する黒犬のその
足が、床に吸い付いたかのようにピタリと止まった。
イス。床に仕掛けられた、束縛を意味するルーンが作用し、犬の自由を
縛り付けた。同時に、仕掛けられた複数のルーンを起動させ、私自身も、
空中にルーンを刻み込む。
「消滅させろ、といったな。なら、これならばどうだ?」
空中に現われた四つのルーンが、黒犬の頭上で重なり合う。
瞬間、そのドス黒く生々しい闇色の皮膚が、音を立てながら、白い炎で
塗りつぶされた。
- 141 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:32
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>140
先の炎とは比べ物にならない火力。
だというのに、火中に居る黒犬はそれを歯牙にもかけていないようだった。
息を一つするごとに、炎は体内に吸い込まれていく。
更に、一つ身悶えするごとに、束縛を意味するルーンが少しずつ崩壊する。
獣を繋げるべき鎖は、その力を刻一刻と失いつつあった。
「蒼崎橙子よ。
我は汝の成長を助けたい。
生命の危機を感じる時、人の集中力はおおいに高まる。
集中はあらゆる術理の土台であり、そうして得られた認識は新たな扉を開く鍵である。
深く思考せよ。真に思考せよ。
力押しが無意味な相手ならば、相手の術理を理解し、その裏をかくのだ。
我の期待を裏切ってくれるな」
メルキオルの呟きは、本来聞こえる筈のない音量にも関わらず、
蒼崎橙子の耳に歌の様に伝わる。
そしてその言葉が終わった時点で、ひときわ大きく首を振った黒犬。
束縛のルーンはその力を完全に失った。
黒く密生した剛毛の下から、金色に濁った瞳が獲物をねめつける。
- 142 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:33
- >141
メルキオルの言葉に、舌打ちを打つ。
力が作用しない相手には、理を持ってそれに対峙する。
そんなことは、今更指摘されるまでもない。
だが、どうすればいい? 影絵の猫は決定打にならず、白熱する程の
炎は致命傷にならず。
なら、この黒犬は何を用いれば消滅する?
「頼みもしないのに、余計な事をしてくれるな。
それと、期待を掛けるのは勝手だが、それに応えるかどうかは私の勝手
だ。好きにさせてもらう」
工房内に仕掛けられた数々のルーンを起動させ、それは黒犬を襲う。
しかし、それらは十全の効果を発揮することもなく、黒い暴威の前に、ま
るで霞のように散っていった。
どうする。どうすればこの黒犬は消滅する?
思考をフルに巡らせながら、二階へと駆け下りる。
様々な手段が浮かび、シミュレートされ、そして、効果を為さずに破棄さ
れていった。
破壊音が、だんだんと大きくなる。
ただでさえ乱れる思考は、その音に更に急き立てられた。
だが、何度シミュレートした所で、結果は唯の一つきり。
……認めなければならないか。私では、あの黒犬を消滅させることは出
来ない、と言う事を。
扉が吹き飛び、その向こうから、金色の瞳が覗いた。
低い唸り声。次の瞬間、その巨体が宙を舞い虚ろな暗闇が、私の視界
を覆う。
……溢れ出した鮮血が、胸元に入った煙草を濡らした。
- 143 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:34
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>142
蒼崎橙子が死んだ。
事実を前にして、メルキオルは静かに瞑目する。
「諦めたか。ならば虫けらのようにただ死ぬまでだ」」
静寂の中で冷えたコーヒーを啜り、メルキオルは呟く。
その言葉の中にさえ、感情の色は欠片も無かった。
ごほ、と咳の音。再び息を吹き返した蒼崎橙子を、特に驚く事無く眺める。
「たとえ素養がどれほどあろうとも、諦めを知るものなど我には不要。
ばべるの門は汝には開かれぬ。ここで死なせたところで惜しくはない。
死ぬがいい蒼崎橙子。
さっさと死ね。この悪夢の中で百回でも死ね」
罵倒というには、あまりにも込められた感情は少なすぎた。
カップを置くと、立ち上がり、部屋を出る。
―――――敗北者の死を悼む心など、持ち合わせは無かった。
- 144 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:35
- >143
メルキオルの言葉に、「私」は目を醒ました。
「……随分と勝手な事を言ってくれる。百回も死ねるわけが無いだろう」
事務所は相変わらず荒れたままで、見渡す限り破壊されていた。
その中で、唯一無事だった椅子を起こすと、私はそれに腰掛ける。
あの黒犬は、まだ現われてはいない。これなら、ゆっくりと考えを巡らす
ことが出来るだろう。
事件は終わった。ここからは、推理編と言うわけだ。
まず、あの男は、何の目的でここに現われたのか?
それの答えは簡単だ。あいつ自身が言っている。ゴドーワードの辞書を
創るために、私の助けが必要だと。
ゴドーワードの辞書とは、即ち統一言語の辞書に他ならない。
だが、統一言語は既存の言語とは違う。一般人に理解できるような、そ
んな安易なモノではない。
ならば、あの男は統一言語師だとでも言うのだろうか?
次に、あの黒犬。
あの案山子は、それををかりそめの命と表わした。
ならばやはり、あれは実体あるものでは無いのだろう。恐らく、魔術か何
か……仮定通りだとするのなら、統一言語か、それに類するモノによって、
この世に投影された幻像。
最後に。なら、それは何を用いれば消滅させる事が出来るのか。
存在しないのに存在するなんていうのは詐欺だ。なら、こちらはイカサマ
で対抗してやるしかない。超常に対する絶対のイカサマ。それは―――
「ふん、駒は揃ったな」
- 145 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:36
- >144
「もう帰るのか、メルキオル。せっかく、人形の一つでも創ってやろうと思っ
たんだがな」
――――――カツン。
硬い床を踏み締めるヒールの音が、剥き出しのコンクリートの壁に冷た
く反響した。
背後から掛けられた声に振り向くメルキオルを、階段の上から見下ろし
て、私はポケットに仕舞った煙草を取り出し、それに火をつける。
「ほう、あまり驚かないんだな。……まあ、当然か」
あまり面白く無い反応に、顔をしかめながら、私は火のついた煙草を口
に咥え煙を吸い、そして吐き出した。
「さて。私が再びこうしておまえの前に立った理由は、わかるな?」
メルキオルと私の視線が交錯する。
私は咥えた煙草を指に挟むと、ゆっくりと腕を組んだ。
「さあ、まだ話は終わっていないぞ。あの犬を出せ。少し遅れたが、遅めの
解答編と行こうじゃないか」
- 146 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:36
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>144 >145
「なるほど。面白い手管ではある」
一から十まで説明され、理解し、納得したかのような口調での言葉。
死人が蘇った事に対しての感想はそれだけだった。
一方、犬をだせ、との蒼崎橙子の言葉には、小さく首を横に振る。
「なれど、もう一度出す必要はない。
アレは、常に汝の傍にある。
今、この時も」
唐突に二人の間の空間に、紋様を刻まれた球体が出現した。
中から溢れるのは、赤黒い光。
「解答を成すのであれば、いそがねばならぬ。
汝に残された体は、最早無い。
次の誤答は、汝の完全なる消滅を意味することになるであろう」
トン、と床にステッキを突き、メルキオルはゆらりと立つ。
だが。
剥き出しの敵意と対峙して発せられたその言葉の中にさえ、恫喝の意は存在しない。
事実のみを告げた宣告であった。
- 147 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:37
- >146
「ふん……」
現われた球体を見、それに続いたメルキオルの言葉を聞いて、私は軽
く鼻を鳴らした。
「やはりな……つまり、その犬は私自身に掛けられた魔術だったわけだ。
自分の影を火で炙っても影が死なないのと同じように、自身に掛けられ
た魔術によって投影されたモノを物理的に殺そうとしていたのが、とんだ思
い違いだったというわけか」
球体が、弾けた。
中から現われたのは、先程私を食い殺したあれと同じ、寸分違わぬ獰猛
さを備えた、黒い犬。
だが。
神秘のヴェールを剥ぎ取られた魔術は、種が明かされた手品にも劣る。
もはや、それを見ても何の恐怖も、焦燥すら沸きはしない。
「おまえも魔術師なら、わかるだろう。ヴェールを剥がされ、領地を侵略さ
れた魔術に、もはや効力なんて無いってことは。
消滅するのは私じゃない。その躾のなってない犬のほうさ」
私を急き立てるメルキオルのその言葉に、余裕を持ってそう答える。
「おまえは言ったな、メルキオル。
"全ての力と手駒を使い、汝の死神を退けて見せよ"と。
まったく、これだってとんだ勘違いだ。
魔術師は、自身の強さは必要無い。強力な使い魔を使役して、それを戦
わせればいい……だけど、それが私の作品である必要は、何処にも無か
ったっていうのにね」
- 148 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:37
- >147
黒犬のその後ろ足の筋肉が、ばねの様に巻き上げられていく。
傍目にもはっきりとわかるその動きを醒めた気持ちで見遣りながら、私
は更に言葉を続けた。
「まったく、こいつを忘れていたなんて、私としたことがとんだ失態だった。
今日やった唯一の失敗は、最も強力な手駒から、私自身が離れてしま
ったことだろうね」
――――――カラン。
この静寂の空間で、その音は何よりも澄んで響いた。
「紹介しよう。こいつは、両儀式と言ってね。
その黒犬が私にとっての死神であるのと同じように、こいつは私たち魔術
師、超常に属する物の死神さ」
浅葱色の紬を着流した中性的な少女が、背後の扉からゆっくりと現われた。
「式、やれ。おまえならアレを殺せるだろう」
私の指示に、式は頷く事すらせず、ただ黙してナイフを構えた。
瞬間、巻き上げられた黒犬のその筋肉が爆ぜた。それは、人間を遥か
に超えた暴威を持って、自らの死神に飛び掛った。
- 149 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:38
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>
真っ二つ、とはこの事を言うのだろう。
限界まで開いた顎から尻尾までを上下に捌かれて、犬が着地に失敗。
為す術無く潰れる。
有り得ない剣閃を放ち、血振りを行う乱入者。
メルキオルは、また首を振った。
「直死の魔眼か。だが、足りぬ。
その力とて、全てを殺せるわけではない」
肉塊が震える。
死線を断たれ、再生が不可能な筈の存在は、またも二つに分かれて立ち上がった。
大きさは斬られる前と寸分変わらない。
「言ったはずだ。次の誤答は、汝の消滅を意味するであろう、と」
二匹の獣は、巨体を敏捷に跳ねさせ、二人を包囲する。
直死の魔眼を持つ護衛がどんな技量を持っていても、前後から全く同時に襲われた場合、
(自分の身はともかく)
魔術師まで守りきることは不可能だ。
単純な事実が、イカサマを無意味とする。
- 150 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:39
- >149
「ちっ……」
私と式は、同時に舌を打った。
二つの黒い塊がまったく同じ挙動を取り……そして、同時に跳躍し、それ
ぞれ式と私に襲い掛かる。
「おまえ、何処を見ている!」
言いながら、私は飛び掛る黒犬を壁ぎりぎりまで引き付けてかわすと、
仕掛けられた束縛のルーンを解放した。
だが、弱い。
先ほど犬を捕らえたモノと比較すると、その効力は数段弱まる。
食い破られるのも時間の問題だろう。
「式!」
銀のナイフを手に持って、黒犬と対峙する式を呼びつける。
あいつは未だ、大きな間違いを犯している。
「そこじゃない、ここだ」
言って、その箇所を、魔術の仕掛けられた源を指差した。
呼び声に振り向いた式には、はっきりと視えただろう。その位置を流れる、
魔術の死というモノが。
- 151 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:39
- >150
束縛を破る、ビキ、という歪な音が響いた。
それを合図にしたかのように、ごく自然な動作で黒犬の首を落とした式
は、次瞬、その場所から駆け出していた。
束縛された黒犬の巨体が、蠢く。銀のナイフを持った少女が、死へと詰
め寄る。ガラスの割れるような音。束縛から解き放たれた獣が、その両眼
で標的をねめつける。少女の瞳が、死を捉えた。牙を剥き出しにしながら、
黒い獣は跳躍し――――――
だが、人間のスピードを遥かに凌駕するそれは、しかし、銀煌の一閃よ
り遥かに遅く。
両儀式の持つ銀のナイフは、寸分違わず私の心臓の真上を貫いた。
- 152 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:40
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>150 >151
「見事である」
一瞬にして消失した獣達を確認すると、拍手をしながら呼びかける。
「自らに刻印されし幻想を、直死の魔眼にて消滅させる。
満足すべき解答だ。確かに汝は希代の魔術師。なかなか愉快な見物だった」
幻術。暗示。
一種の統一言語術士である彼の魔術は、まともな手段では解除出来ない。
だからこそ、魔術に対するイカサマである直死の魔眼は絶大な効果があった。
直死の魔眼を持つものは、対象を選んであらゆるものを殺傷する。
胸の上に突き立ち、メルキオルの魔術を無効化したナイフも、
蒼崎橙子の肉体そのものには毛ほどの影響も与えてはいまい。
―――確かに良い手駒である。
「今日はこれにて立ち去るが、いずれまた会うことになるだろう。
その時までに、汝の立ち止まりし要因。
心の中のわだかまりを解決しておくことを願う」
山高帽を抑えてメルキオルは背中を向けた。
攻撃される事をまるで考えていない無防備な背中が、対峙する二人に示される。
- 153 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:40
- >152
「待て、メルキオル」
無防備な背中に、ただ呼びかける。
止まるとは思っていなかったが、案山子の足は、意外なほどにあっさり
とその歩みを止めた。
「私のような知り合いが居ると言っていたな。
実は私にも、おまえのような偏屈な知り合いが一人いてね」
今はこの世にはいないがね、と口に出さずに付け足す。
黒い外套を纏い、常に苦悩に顔を歪めたその魔術師は、十月のとある
事件の最中に、この世から消え失せた。
「これは、純粋な興味から来る質問だ。答えたくなければ、答えなくてもいい」
言って、中ほどまで灰となった煙草を指から離し、足で揉み消す。
「"魔術師"として、蒼崎橙子が問う」
振り向きもせず、しかし、意識だけは確実にこちらへと向けている案山子
のその背中へ向けて、私は問いを投げかけた。
「メルキオル、何を求める」
「メルキオル、何処に求める」
「メルキオル、何処を目指す」
それは、黒衣の魔術師の最期の時に、私が問いかけた質問。
いや、質問と言うよりは確認か。多分、答えは何時でも変わる事はなく、
私の思った通りのものだろうから。
- 154 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:41
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>153
答えるべき理由は無かった。
黙殺して立ち去るべきであったのかも、しれない。
理由の無いまま、メルキオルは淡々と答える。
『―――何を求める?』
―――――真なる言葉の欠片を。
『―――何処に求める?』
―――――森羅万象あらゆる場所に。
『―――何処を目指す?』
―――――世界の解放。
彼の不死なる命が、2300年以上の時を掛けて辿ってきた道。
例え、更に同じ時間を掛けても辿り着かない目的であったとしても。
諦める事だけは決して無い。
- 155 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:42
- >154
「そうか……」
問いに対する答えに、私は一つ嘆息した。
黒衣の魔術師とは、明らかに違う答え。
だが、それの意味するところは、やはり一つしかなかったから。
「さて、それじゃあ……」
仕切りなおすかのように、声を出す。
そう、まだ何も終わってはいない。
「覚悟は良いな、メルキオル」
その無防備な後姿を感情なく眺めたまま、私は案山子に宣告する。
「おまえは私と敵対した。その代価は、きっちりと払ってもらう」
- 156 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:46
- 蒼崎橙子vsメルキオル
>155
振り向いたメルキオルは、案山子のように突っ立っているだけだった。
構えることも術を唱えることもなく、ただ決められた台本を読むかのように淀みなく答える。
「覚悟?
それは、汝が我に勝てると思っているから出る言葉だ。
先に教えておこう。
例え直死の魔眼が手駒にあろうとも、今の汝は我には勝てぬ」
傲慢、と言って良い言葉だった。
少なくとも、字面のみ見ればそれ以外に言い様は無い。
他の人間が言ったのであれば、間違いなく一笑されるのみの台詞だったけれど。
メルキオルの立つ姿だけで、言葉は異様なまでの説得力を持たされていた。
それでも―――――蒼崎橙子は一歩も退かない。
顔をあげ、しっかりとメルキオルの魔眼を睨みつけている。
ふと、メルキオルの唇が歪んだ。
捻くれた人間が見れば笑みかも知れないと思うような表情を浮かべ、
メルキオルは教師のような口調で語りかける。
「無理を押し通そうとするその姿勢、それは魔術師にとって基本の姿勢である。
ゆめ、忘れることの無いように」
言葉と共に、メルキオルの体はゆっくりと薄れていった。
いや、体だけではない。
世界そのものが、彩りを失っていく。
「では、いずれまた。
再会を楽しみにしておこう、蒼崎橙子よ」
- 157 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:46
- >156
色褪せていく世界の中で、一つだけ色褪せない案山子の声を聞きなが
ら、私は――――まどろみから目を醒ました。
「………………」
破壊された椅子は動かされた様子すらなく、蹴散らされたテーブルには、
琥珀色の液体で満たされたコーヒーカップが二つ、並べられている。
夢。
数秒前までの出来事は、全て夢の中の出来事だったのだろう。
何処までがそれで、何処までがそれでなかったのか、その境界ははっき
りとはしなかったが、だが、半分ほどに減ったコーヒーカップの中の液体が、
全てが夢でなかった事を、控えめに証明していた。
嘆息。
いまだ湯気の立つそれに口をつける。
熱かった。淹れてから、二分と経っていないだろう。
背後からがちゃり、というドアノブを捻る音が聞こえた。
両儀式……不貞腐れて寝ていた彼女が、目を醒ましたのだろう。
「おい、トウコ。あの悪いスナフキンみたいなヤツ、なんだったんだ」
不躾に、機嫌の悪さも露わにして、式はそう問いかけてきた。
私の夢に現われた式は、つまり、私の夢に巻き込まれていたのだろう。
それにしても、と、私は目を丸くする。
- 158 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:47
- >157
「驚いた……おまえ、冗談も言えたんだな」
表現の的確さに笑いを堪えてそう言うと、式は拗ねながら、冗談なんか
言ってない、真面目に答えろよ、なんてことを真面目な顔で言った。
「そう怒るな、別に貶しているわけじゃない。
……さあね。おおかた、何処かのお節介で偏屈な変人だったんだろう」
そう答えると式は、変人はおまえもだろ、とつまらなそうに返して来た。
それを言うなら、この少女もかなりの変人の部類に入るのだが、敢えて
それは指摘せずに、私はコーヒーカップを置いた。
「それにしてもさ」
式は相変わらずの平坦な、しかし不機嫌そうな声で口を尖らせる。
「おまえ、夢の中でまでオレをこき使うなよ。普段からろくでもない仕事ば
かりやらされてうんざりなんだ、夢の中でまでおまえの仕事を受け持った
ら、頭がどうにかなっちまう」
言い掛かりだった。
「私だって、夢の中までおまえと顔を合わせたく無かったよ」
理不尽な物言いにそう答えて、胸のポケットに仕舞った煙草を取り出した。
失った自分を取り戻すために、払った代価は命一つ。
夢の中とはいえ、それを失った事には変わりは無い。
自分という在り方を取り戻す為にだって命一つ分を支払う必要がある。
なら、式とこうして話すこの瞬間を取り戻す為には、何をどれだけ支払わ
なければならないのだろう。
- 159 名前:蒼崎 橙子 ◆.TOUKO3. 投稿日:02/09/30 17:47
- >158
「……考えたくもない」
私は小さく吐き捨てると、咥えた煙草に火をつけた。
そして、気付く。
「ああ……取り戻したモノは、一つじゃなかったのか」
台湾製の不味い煙草。作った会社は当然のように既に無く、残りの在庫
はダンボール一つ分程しかない。
上着のポケットに入れておいたそれは、頭部を食い殺された時に血に塗
れ、使い物にならなくなったはずだったのだが。
「こいつの為なら、まあ、命一つくらい、安いものか」
そう呟いて、その不味い煙草を味わった。
穏やかな午後に一服するのは、私の数少ない愉しみの一つだ。
考えることは山程あって、やるべきことは星の数より多かったが、今この
瞬間に、その愉しみを享受する事だけは、誰に文句を言われようともやめ
ないし、文句を言わせるつもりも毛頭無かった。
- 160 名前:メルキオル投稿日:02/09/30 17:53
- ふむ。
反省の色は無いか。
・・・・・・まぁ、しばらくは待つとしよう。
≪蒼崎橙子の退屈な日常≫
レス番纏め
>125 >126 >127 >128 >129 >130 >131 >132 >133 >134 >135 >136
>137 >138 >139 >140 >141 >142 >143 >144 >145 >146 >147 >148
>149 >150 >151 >152 >153 >154 >155 >156 >157 >158 >159
- 161 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/09/30 21:08
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>124
またあの風だ。異様な唸りを響かせて吹き荒ぶ風がプルチネルラの一撃を無して、ついでに
こっちにも吹きつけて来やがった。
あたしは素早く相棒の肩から、その背後へと滑り降ります。
かわす動きが間に合わないんでねえ。盾になってくんな。
と、思ったら。
何ですかい、ありゃ?
顔色と等しい真っ白なざんばら髪を振り立てて、凄まじい悪相がこっちを睨んでやすぜ。
今は月だって隠れてる。なのに燐光にでもけぶるように、えらく細部までくっきりと
見えやがるってなぁ……。
あたしゃ確かに夜目は利く方ですがね、それにしたって妙だじゃ済まねえ。
一瞬、あのおっさんも人形使いなのかと思いやしたが、違う。
そんなものたぁ根本から違いやすよ。
まるで――この世のものではねえような。
端的に言や、ああ、日本語にゃいい言葉がありやした。
「……鬼」
とと、やばい。思わず竦んじまった隙に光る暴風が、うおおお、ぶ。
ふっ飛んだプルチネルラの躯が、先ずあたしにぶち当たりやがった。
咄嗟に両腕でガードしやしたが糞っ、痛えったらねえ。押すんじゃねえよおい。
うわわ、それでも止まらんじゃないですか。
何メートルだかぶっ飛ばされたあたしらの後ろは、げ、もう玄関口だってえ!?
- 162 名前:犬神博士投稿日:02/09/30 21:44
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>161
爛爛と異様な怨嗟に瞬く其の鬼の双眸が、己自身で玄関口迄吹き飛ばした男と、人形とを睨付けて居る。
華美な装飾を纏い、宝剣を腰に差した其の容貌は威風を払い、
又、事実其の辺りを吹く風が彼の装束を揺るがせて居た。
禍禍しい其の鬼の体が、独楽の様に廻り乍飛んだ。
其の捉え難い速度で幾度も回転する鬼の相貌は、幾千もの残像を産む。
戦慄を禁じ得ない風貌の増殖は、並の神経を持つ者なら既に精神の破綻を生じさせていたやも知れ無い。
此の場に常人と呼べる者が居ないのを、幸いと呼ぶべきからは判じ難いが。
鬼は尚回転の数を増し乍、玄関の前の人形との間合いを奪った。
ずらぁ、と大気を撓ませる様な音を立て、鬼の腰から宝剣が抜き放たれる。
刹那の間も無く、歪んだ大気は其の宝剣自身に因って断ち割られた。
更には人形と、その繰り手の頭部をも断ち割らんと、剣光は縦に疾る。
- 163 名前:ガルアード・ラインディヒ(M) ◆MATOUV/M 投稿日:02/09/30 21:49
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>106 >118
「流石はアーンスランド家御当主、甘く見すぎていましたか――――――」
感覚センサー上では、確かに実体だと捉えていた。
いつの間に虚像と入れ替わっていたのか。
上空から紫の光弾が降り注ぐ。
脇腹が抉られる。
左肩が砕け、肘のみを残していた腕が大地に落ちる。
右脚が膝から熔け落ちる。
右翼肢が根元から折れ、バランスを失いドリルのモーメントに引きずられて
錐揉み状に全身が回転する。
だが、止まることはない。
もはや止まることはない。
ドリルの先端が竜鎧の男の拳に触れる。
刹那。
鈍く、鋭い衝撃が背後から胸に突き抜ける。
大きく弧を描き戻ってきた、先程の男の投げた戦斧が。
残された片翼を断ち切り、背を割り、左胸から先端を覗かせて。
すでに止まれはしない。
左脚のみで大地を踏みしめ。
焔の渦に身を焼かれながら。
前進のエネルギーを全てドリルの先端に集約しつつ。
- 164 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/09/30 22:22
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>162
正面玄関を突き破ったあたしとプルチネルラは、そのまま中に雪崩れ込みやした。
どうにか身を捻ったあたしゃ、相棒の下敷きになるのだけァ何とか避けられましたが。
今このお屋敷の人間は、依頼人以外全員出払ってます。あたしがそうさせたんで。
ま、仕事に余計な茶々を入れさせたかないってこってすね。
口の端の血を拭いつつ、身を起こしかけてあたたたた。
背中が痛くて起き上がれませんぜ。
このまま朝まで寝てたいとこですよ全く。そうも言ってられねえのが辛いやね。
ほれ、客人も来たようですし。
和風とも中華ともつかない異装を纏った怪人。さっきの鬼だね。
その鬼さんが、おかしな回転を見せて跳んで来やがります。
何とか起きたあたしは左右の手を二度、振りやす。指先を目まぐるしく動かせて。
きりきり、と正確に歯車の音を刻ませて、プルチネルラに臨戦体勢を取らせやした。
あたしゃまだ充分に動けないんだ。お前さん、代わりにお相手してさしあげなせえ。
こういう時ゃ、人形使いは楽でいい。
ぶん、と走った風は二筋。逆落としの剣風と横殴りの暴風が交差しやした。
プルチネルラの頭上に落ちてきた刃を棍棒で止めさたんですが……。
てっ、敵さんの刀、コンクリも一撃で砕こうてえ棍棒の半ばまで斬り込んでやがら。
おまけに押し返せねえとは。小兵の癖に、なんて力だ。
だがね。キラークラウンの左手は空いてるんですぜ。
鞘に収まったまんまだが、刀握った左手はねえ。
左人差し指、右親指をちょいと動かして、ほれほれほれほれ。
- 165 名前:犬神博士投稿日:02/09/30 23:00
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>164
擬死擬死と宝剣と棍棒とが噛み合い、歯軋りを起こして居る。
鬼の重い一撃に、人形の重い防御。抑圧と抵抗。
無限を内包する刹那の膠着を、抑圧されて居た人形の方が破った。
闇の薄い灰色の夜に、漆黒の鞘が一筋の闇を流した。
渺、と風切り音を招来し、鞘は鬼の脇腹を打ち据え様とする。
鬼は其れを察し、棍棒に刃を突き立てた侭で身を捻った。
剣を軸に身を廻し、己の身を逆しまにして、鬼は鞘の打撃を遣り過ごした。
天地を逆転させた式王子は、その状態から己が剣を棍棒の呪縛から解き放った。
逆しまの鬼の顔は人形に向き、人形の顎へと刃を振り降ろす。
人形にとっては顎を跳ね上げる一撃と成る、正に逆しまの一撃。
- 166 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/09/30 23:35
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>165
ま、そうそう簡単に当たりゃしねえ事は、ようく判ってやしたとも、ええ。
別に負け惜しみじゃありやせん。ほんとですぜ?
こう曲芸紛いの動きでかわされるたァ、予想外だったがねえ。
プルチネルラの躯が仰け反りやす。
天地逆の一刀は、見事に相棒の顎から脳天までを掻っ捌きやした。
尤も鬼さん、ちょいと勘違いしてますね。
人間ならこれでバッサリ、ここでお陀仏でやしょう。
だがな、これは人じゃねえんだよ。
あんたと同じくな。
「へ、舐めて貰いますまい」
部位にも依りやすが、頭部を飛ばされたって動きに支障はねえんです。
所詮、飾りだからねえ。だからっつって気分は良かねえですぜ。
手を引きながら右中指、左の親指薬指をきゅるきゅるっと、ほい。
「ほれぇ、お返ししてやんな!」
あたしは人形の体勢を戻しざま、半ば断たれた棍棒を投げ付けさせてやります。
続いて鞘から抜かせた勢いを駆って、白刃を走らせ横一文字にずんばらりんと行きやすか。
- 167 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/09/30 23:36
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>100
はっきり言おう。オレは判断を間違えた。
掌に爪を食い込むほど握り締めた拳を、手近な吸血鬼に叩きつける。そうだ、ミスだ。奴の目的
を見抜けず、まんまとここまで辿り着くことを許した。
その時点で、この結果は確定していた。
軋む身体を爆ぜさせた。人を襲う影だけを見、それだけを斬る。
『なりかけ』と『手遅れ』の選別に神経をすり減らしながら、次々と首を刎ねまわる。
畜生、畜生、畜生!
こいつらは――オレが殺したも同然だ。
だからせめて、苦しまないように、一瞬で殺してやる。
「――ロォォォォォングファァァァァアアングッッ!!」
焼け付くような痛みを、怒りが上回った。
咆哮が喧騒に満ちたホールを揺らす。
出て来いよ、早く。回りくどいのは好きじゃないんだ。
オレを殺すなら、今をおいて他にあるかよ。さあ、来いよ。
- 168 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/10/01 00:01
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>167
少しはその気になったじゃねーか……
皮肉笑いに肩頬を吊り上げながら、傍らの男を魅了して手榴弾をパス。
「行って来い。せいぜい吸血鬼らしく演技しろよ」
小さく囁き、肩を叩いて送り出す。
そうしながら、奴の死角へと俺自身は回りこんでいく。
そうだ、それでいい。
化け物は化け物らしく。狩人は狩人らしく――
殺しあう以外に道などあるものか。
- 169 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/10/01 00:26
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>168
独楽のように回転しつつ、全方位、目につくところ全て斬る。
吸血鬼、吸血鬼、吸血鬼、吸血鬼、吸血鬼。狙いはすべてジャックポット。
さらに牙を剥いて襲い掛かってくる男を叩き切ろうとして、その動きのおかしさに気づく。
――こいつ、吸血鬼じゃない。ただの人間か。
手に持ってるのは手榴弾。ピンは既に抜かれてる。
回りくどいのは好きじゃないって言ったぜ、オレは。
男の手を蹴り上げて、手榴弾を宙に浮かす。
そのまま足先で引っ掛けると、振り返りながら背後に蹴り飛ばす。
黒球の向かう先には、見知った顔。殺すべき化物。
見つけたぜ、ロングファング!
- 170 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/10/01 00:56
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>169
馬鹿が、ピンを抜くのが遅すぎる――
のん気に構えている暇も、悪態をつく暇も無かった。
蹴り飛ばされ、飛んでくる黒い塊。
投げ返すのが間に合うわけも無く、ナイフを投げて弾くことを選択。
だが、宙を飛ぶパイナップルは、ナイフを投げる間も無く眼前で炸裂していた。
爆風に弾かれ、心臓と顔面をかばった姿勢のまま壁際まで飛ばされる。
クソッたれ、狩人だけに鼻が利くのも犬並み、ってか?
手近に転がっていた金属製の丸い盆をヤケクソ気味に投げつけつつ(牽制にもなりゃしねぇ)
俺は起き上がった。
「なかなかいい舞台だろう、お宅のためにわざわざ設えたんだぜ?」
やれやれ、憎まれ口にも切れが無い。
それでも、奴がこの惨状にちっとばかり頭にきてるのを見りゃ、多少はスっとした。
「そろそろ、終幕といくかい?」
もう、小細工はいるまい。
ナイフを背後に構えて隠し、奴めがけて走る。
- 171 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/10/01 03:17
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>170
盆を剣で弾く。
ただ、それだけのことが出来ずに、衝撃で痺れた手が柄をあっさり離し、剣が落ちてからから回
る。
く、く。限界か?
いいや、走れる。止まらなければ、限界を越えても、走り続けられる。
あいつを殺すまで、止まれるものか。
立ち上がりながら、耳が腐る台詞を吐くロングファング。
まったく、涙ぐましい心遣いで。嬉しさに反吐が出るね。これ全部、オレのための供物かい。
――熨斗つけて叩き返してやる。
とにかく、この糞ッ垂れな化物を、早く、一瞬でも速く、塵に。
前に浮く。跳ぶなんて格好いいもんじゃない。爪先がわずかに跳ねただけのそれは、あっさりと
バランスを失い、前のめりに倒れかける。
瞬転、捻った上半身が裏拳を叩き込む。続いて足をついて力を込め、左の貫手をロングファン
グの心臓に。――肋骨ごとぶち破る。くたばれ。
- 172 名前:ヴェドゴニア ◆VJEDOGOs 投稿日:02/10/01 10:41
- >ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/494
>ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/495
ヴェドゴニアVSアーカード
音速を越える速度で迫っているはずの銃弾も、俺にとっては何て事はない速度だ。
だが……俺の身体は闇の触手に絡め取られて動けない。
加えてあの銃弾を喰らうのは拙い、アレを喰らって無事でいられる自信はさすがにない。
やけに緩慢に、しかし確実に死はにじり寄ってくる。
だが、それがどうした?
奴は言った、"それで終わりか"と。
――――冗談じゃねェ、こんなモンで俺が終わってたまるかよ!
ギ、と音がするほどに迫り来る銃弾を睨め付ける。
俺の中にあるリァノーン……継嗣たる俺が受け継いだ力を練り上げる。
見えざる腕の一本一本が銃弾に絡みつき、俺に掌握された。
よーし、いい子だ、俺の言うとおりにしろよ、爆裂鉄甲弾。
見えざる腕を使って、銃弾の軌道をねじ曲げた。
まっすぐに俺を殺そうとしていたそれは、今や従順に俺の命令を受け入れる。
俺が下した新たな目標は、今までそれの主であった闇――――アーカード。
歪んだ軌道を銃弾が描き、俺を拘束していた闇の腕を打ち砕いた。
霧散していく闇から解放された俺は、真正面の黒光りする拳銃へ、レイジングブルの銃口を向ける。
ターゲットは、巨大なアーカードの拳銃の銃口だ。
ピタリと、小揺るぎもせずにレイジングブルの銃口とジャッカルの銃口が直線で結ばれ――――。
トリガー。
吐き出された銃弾は、まるで針の穴を縫うような正確さで、ただまっすぐに標的へと吸い込まれ……。
次の瞬間にはジャッカルの機構を粉々に打ち砕いていた。
- 173 名前:ヴェドゴニア ◆VJEDOGOs 投稿日:02/10/01 10:42
- >172続き
「これで終わりか、だって? 冗談じゃねェぞ! 俺はこの闇を、ヘルシングを、おまえを踏破するんだ!
この先にしか俺と彼女の生きる道がないって言うんならな!」
闇を切り裂かんとばかりに張り上げられた俺の声。
それに呼応するように、地面に落ちていた旋風の暴帝がカタカタと震え出す。
今まで銃弾を支配していた見えざる腕は、今度は旋風の暴帝を掌握していた。
ふわりと浮き上がった暴帝は、突如として暴力を伴った颶風と化して暴れ狂う。
まさに暴帝と化した旋風が、闇のたれ込める地下廊下を蹂躙し尽くし、闇を切り裂く。
暴れて暴れて暴れ回り、石壁と虚空にさんざん爪痕を刻んで破壊を堪能した後に手の中へと帰ってきた。
無惨な破壊の後には、なぎ払われた闇の残滓だけが廊下を漂うのみ。
残滓の一つに暴帝を振るい、虚空へと叫んだ。
「出てこいよ、アーカード! 死にたくなるまで殺してやる!」
- 174 名前:ミア・フォーテー ◆pZOMBIEQ 投稿日:02/10/01 11:12
- ファイレクシアの抹殺者VSミア・フォーテー
>123
圧迫、旋回、衝撃、轟音。
私の身体にかかる負担と軋み。
『ブレード』を構えた状態のままの両手を怪物の腕に掴み取られ―――むしろ絡みつかれたと言った方が
適当かもしれない―――そのまま振り回され、地面に激突する。
割れ砕けたアスファルトが、背中のあたりに異物感をあたえた。
怪物はまたしても犠牲者の遺体でその身を補い、活動を再開している。
・・・このままじゃジリ貧だ。何せ相手は死者の肉体を自分のものとして使用できる怪物なのだ。
対してこちらはその身一つだけ。相手のような器用な真似は出来やしない。
潰れかけの頭部が、こちらを恨めしげに睨みつけている。
怪物はまた食事に集中し始めたようだ。既にこちらに見向きもしていない。
- 175 名前:ミア・フォーテー ◆pZOMBIEQ 投稿日:02/10/01 11:13
- ファイレクシアの抹殺者VSミア・フォーテー
>174
相手は、死者の肉体を持って欠けたその身を補填する。
では、その補充先がなくなったら?
「・・・ゴメン。いまはまだ、泣いてあげられないけど。人間に戻れたら、必ず涙を流してあげられるから」
立ち上がって『ブレード』を構え、側面の支持架を引き上げる。
『ブレード』の先端が二つに割れ、回転し、その間に磁界が形成された。
「だから、いまはただ、安らかに――――」
高く響くフィンのざわめき。低く唸る銃身の振動。
臨界ぎりぎりで止められたエネルギーが周囲の空間を揺さぶり、震えさせる。
「―――――Fire!!」
閃光が、放たれた。
ブレードの先端から伸びる白色のビームが、怪物ごと周囲の死体の山を薙ぎ払い、吹き飛ばし、そして焼き尽くす。
- 176 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/01 17:10
- こんにち、吸血鬼の皆さん。私は遥香、友永遥香。
“人類の仇敵”であるあなた達の存在に意義を感じ、共に歩みたいと願うものです。
あなた方が、本能の赴くままに生きるだけで、倍々ゲームで人類は滅してくれる。
それは“如何にして人類を効率的に抹殺するか”という疑問の答えを求める私達には、掛け替えのない存在です。
現在、吸血鬼に関しての情報は燦月製薬及びイノヴェルチの出資者の一人として名を連ねる、神田川議員を介して、
“オリシス”の元へとかなり流れています。ですが、それは私達が望む情報とは微妙に異なるものでした。
私達が望むものは“人類抹殺”の方法であり、“不老不死”ではありません。
イノヴェルチと根本的な思想が違う私達は、有効な情報を燦月製薬から得ることは難しいのです。
“オリシス”は探しました。自分にだけ従い、自分だけを愛し、人を餌としてしかみなさない吸血鬼の集団を。
そして、此処に辿り着いたという訳です。
私は情報収集、及び吸血鬼達とのコミュニケーションの設立のために、暫く此処に滞在させて頂きます。
どうか、暖かく迎えてください。
……あなた達は人類を効率的に殺してくれる、素晴らしく美しい生物。
この世の全ては“オリシス”の手の平の上だということを……もしかしたら理解できるかもしれませんね。
あなたも、私も、手を取り合って共に頑張りましょう。“オリシス”の為に。
- 177 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/01 17:10
- 出典 : ハロー・ワールド
名前 : 友永遥香
年齢 : 二週間
性別 : 女性型
職業 : 人類抹殺計画“物理面”での尖兵
趣味 : 人を効率的に殺すこと
恋人の有無 : いません
好きな異性のタイプ : オリシスの崇高なる意思に同調できる者
好きな食べ物 : 液化燃料
最近気になること : 愚かな兄。道を踏み外した兄のこと
一番苦手なもの : 稲妻などの高エネルギー現象で発生する電磁パルス
得意な技 : 火気管制と電覚を使用した超超高速度の“ハッキング”
一番の決めゼリフ : 神という名が絶対者に与えられる称号であるとすれば、“オリシス”こそまさに神。
将来の夢 : 人類滅殺
ここの住人として一言 : あなた達は、人間を効率的に滅ぼせる貴重な“兵器”です。
ここの仲間たちに一言 : 全てはオリシスの意思。それを理解できる者のみが次なる新時代を生きれるでしょう。
ここの名無しに一言 : オリシスに従い、オリシスを愛し、オリシスの為に死んでください。
- 178 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/01 18:25
- 嵐は好きですか?
- 179 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/10/01 20:56
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>171
くく、それでいい。
叩きつけるような憎悪の視線に、牙を剥き出しに笑い、応える。
つんのめったような姿勢からのバックブロー。
死にぞこないのくせに、よく動くもんだ……一瞬、埒も無い思考がよぎる。
上体をそらした俺の鼻先を掠める拳。
同時に突き出したナイフが、やつの左腕と交錯、ともに狙いを外す。
瞬間、俺は突き出された奴の腕を掴み、斜め下に引いた。
頭上で、くるりとナイフを反転。
奴の体を下に崩しつつ、左の肩口――その奥の心臓を狙って、突き降ろす。
- 180 名前:犬神博士投稿日:02/10/01 21:10
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>161
微細な破片を吹き散らし乍、我利我利と顎から額へかけて白刃が抜けた。
だが、其の人形の動きは僅かにも鈍る気配は無い。
式王子が刃を振るい切った其の隙に、攻勢へと転じて見せた。
半ば断ち割られた棍棒が飛んだ。見る間に閃光が疾った。
連なったふたつの攻撃は、共に確乎とした殺意を抱いて居る。
其れに応じて、式王子の宝剣も又、縦横無尽に駆け巡る。
猛き息吹を吹いて己を圧砕し様とする棍棒を、鬼の綺羅めく刀身が四分割に断つ。
疾走する刃の間隙を突き、人形の剣閃が鬼の腹部を抉る。
血液が間欠泉の如く噴出し、ぱぁっとあかい霧を撒いた。
濁、と脇腹から血を零し乍も、鬼は只、怨嗟にぎらつく眼で人形と其の背後の男を凝眸して居た。
鬼の宝剣が、持ち主の怨嗟が乗り移ったかの様に妖気を孕んだ。
妖剣は行く先定まらぬ颶風を辺りに撒き散らしつつ、尖鋭たる其の切っ先だけは真直ぐに進む。
人形と、其の背後の繰り手を狙い。
ただ、真直ぐに。
- 181 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/10/01 21:37
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>180
たは、投げた棍棒が微塵切りにされっちまいやした。
こっちの剣撃も紅色の雨を降らせたものの、そんだけですか。
しかしま、何て眸でこっちを見やがるんだ。
まあ、鬼さんなんですけどねえ。
で、鬼さんは砲弾みてえに一直線にすっ飛んで来やす。
あたしは前に立つプルチネルラを見遣りやした。
ちぇっ、三角帽子が綺麗に真っ二つときた。当たり前だがトレードマークの鷲鼻もだろうねえ。
おまけに先刻喰らった球の所為でしょうか、躯を動かす歯車の刻みが、幽かだが乱れてやがる。
泣くな泣くな。あの旦那バラしたら、ギャラでちゃあんと繕ってやるからよ。
静かに呼気と吸気を感じ取り、彼我の距離と拍子、太刀行きを計りやす。
指先を動かしつつ、まだだ。もうちっと。
「ちゅう、ちゅう、たこ、かい――」
両手を引いて、よしここだ。
「なッ!」
鬼さんがプルチネルラを貫く少し前、あたしらは地を蹴りやした。
あたしは右へ、プルチネルラは左へ。
さて、左右に跳び退ったあたしらの間、鬼さんが突っ込んで来た空間には何があるんでやしょう。
答えは――そう、あたしとプルチネルラを繋ぐ糸ですよ。
人形繰りに使う鋼線は細いが丈夫でねえ、ちょっとやそっとじゃ斬れるもんじゃねえ。
四肢に絡んで動きを封じる、言わば即席の霞網。
とざい東西。さあさ、石見銀山ねずみ取りでござい。
- 182 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/10/01 21:49
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>179
腕を引かれた瞬間、駆け抜ける悪寒のままに、引かれる方向に飛ぶ。
振り下ろされたナイフが背中をざっくり抉る。だが心臓には突き立たない。
床に手を突き、下半身を持ち上げる。踵をロングファングの顔に叩きつける横で、もう一方の脚
がその手を蹴り、ナイフをはじく。
膝を裏から払い、体勢を崩させると、全身のスプリングで跳ね起きる。
ナイフ。
空に浮いた銀の刃に、真っ直ぐ手を伸ばす。
- 183 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/10/01 22:25
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>182
ちっ……
やっぱり、腕を折っちまうんだった。
もろに入った一撃に、顎をさすりながら振り向き、駆けた。
さっさとくたばっちまえば、楽になれるもの、を!
奴は宙に浮いたナイフを受けた直後だった。
その脇腹を狙い、全身を旋回させ、全ての体重を乗せて回し蹴りを叩き込む。
- 184 名前:犬神博士投稿日:02/10/01 22:29
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>181
己が身を雷に変じて、鬼は只々前へと飛翔する。其の先に、巧妙に張られた罠の糸も知らず。
ぞぶり、と肉が食まれ、骨から引き剥がされる音。鬼が罠へと陥った音。
鋼の歯牙が鬼の身を噛み砕き、朱は其の装束を染めて渺茫と広がる。
装束は割かれて奥に青白い肌を覗かせ、其の肌は女の口唇の様な傷口を開けて居る。
無数の鋼糸に苛まれる鬼、其の凄惨たる情景は、妖艶ですら有った。
僅かに離れた位置。冷厳たる眼で、犬神博士は其の情景を見つめていた。
- 185 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/10/01 22:58
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>184
「御用御用、召し捕ったり……と言いてえが、糞!」
くあ、馬鹿力が。
限界まで張り詰めた繰り糸が、ぴぃんぴぃんと琴そっくりの音色を発しやす。
二の腕を交えて踏ん張ってみますが、こりゃやべえ。さっさと片付けねえと、指先ごと
全部持ってかれちまう。
絡まった蜘蛛の巣の中で、血汐にまみれてもがく鬼さん。
自分がやらせておいて何ですが、無惨極まりないその姿は何か……妙に色っぽくもあるような。
と、と、と、化物相手に何考えてんだあたしゃ。
阿呆らしい想いを振り払うように相棒の四本足をばたつかせ、間合いを詰めさせやす。
風車みてえにぶん回させた刀身で、今度こそ三枚おろしにして差し上げやしょう。
そん次はそれ、そこでこっちを見据えてる旦那、あんただぜ。
- 186 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/10/01 23:05
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>183
臓腑の全部を押し潰され、でたらめにかき回される衝撃。
次いで、壁に激突。全身の空洞が気体を余さず吐き出す。
立っていられない。
当然だ。中も外も、とっくに致命傷を越えてる。限界なんて抜き去っている。
今のオレはただの肉袋だ。ずたずたのミンチの他には、空洞ががらんと横たわっているだけ。
ゆっくりと倒れながら、それでもナイフは手放さない。
――空洞。ちょうどいい。そこに殺意を詰め込もう。
額を床に打ち付ける寸前、猛然と駆け出す。
頭を垂れたままだ。奴の位置など知るか。ただ、駆ける。
空洞に風が響いて獣のような音を放つ。
眼も見えない。だが奴の心臓の位置は判る。足元から逆手のナイフを、ほぼ真っ縦に跳ね上
げる。
- 187 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 14:58
- 友永遥香vsふみこ・O・V 導入
世界には、オシリスの手に届かぬ所で蠢く者達が星の数ほどいる。
人間では無い。されど、植物や動物な訳でも無い。生物ですら無い。
彼等に正式な呼称は無い。“ヨウカイ”“アンデット”“フリークス”。呼び名は様々だ。
絶対的な力を有し、人を食い漁ることで悦びを感じる“夜族”。
オシリスは、そんな彼等に目を付けた。彼等は、人類の仇敵。
人という種族と敵対することに関しては、私達よりも“先輩”だ、と。
だが、彼等は機械の恩恵を一切受けない。オシリスの手下にさせることは、実質不可能である。
オシリスは考え、答えを導き出した。
彼等を、サポートしよう。彼等は生きるべきだ。少なくとも、人間が滅ぶまでは……。
オシリスのサポートは、本人達にすら気付かれぬほど間接的なものだった。
名のあるハンターを殺し、夜族の住処を地図上から消し、メディアを通して夜族の恐怖を人の心に植え続けた。
計画は概ね良好に進んでいる、と思われた。そんなある日、ある地区に根を張っていた吸血鬼一家が全滅。
間違いない。ハンターの仕業だ。
名前はふみこ・O・V。詳細不明。ハンター。人を守るために、闇を狩る者。
彼女は危険だ。単身で夜族を殲滅しうるその力も危険だが、何よりも思想が、危険だ。
人を守る。反吐が出る台詞だと、思いませんか?
オシリスは、彼女の暗殺を決意した。
- 188 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 14:58
- >187 友永遥香vsふみこ・O・V
東京首都某高層ビル屋上。荒れ狂う暴風を身に受けながら、私はそこにいた。
暫くすれば、ふみこ・O・Vはこのビル群の間を縫うように飛んでくる。
眼下に移る百億の輝きを見つめながら、私は待ち続けた。
目に写る光の中で安穏と生きる人間達。
その光の影から忍び寄る魔の手にも気付かず、彼等は平和を満喫している。
人類抹殺クラスタが活性化。早急なる粛正を訴えている。
どうやら、何の脅威も感じずに生きる人達を見るだけで“殺意”が湧くほど成長してくれたらしい。
「落ち着きなさい。いまはその時ではありません」
優しく自分に言い聞かせる。人類抹殺クラスタはその言葉を聞き届けたのか、沈静化。
その訴えに触発されて活性化していた数個のクラスタ達も、黙り込む。
そう、今はまだその時では無いのだ。
センサーが11時の方向、200m遠方から猛スピードで駆け抜ける影を捕捉。
視覚システムを倍率モードに移行。望遠。箒に跨った軍服の少女を、高倍率で睨み据えた。
間違いない。オシリスからの情報と照合させ、私は確信する。彼女がふみこ・O・Vだ。
FN F2000Aのストックを肩に当て、セイフティを解除。
火気の照準システムを起動させると、リアサイトを覗き込む。
風速、高度、重力、弾丸の起動。撃ち放たれた銃弾が描く奇跡を、1秒で計算し終え、トリガーを引き絞った。
百数十メートル先を飛ぶ点に向けて、光弾が颯爽と襲いかかる。
夜空を駆け巡る洩光弾。次々と吐き出される空薬莢は風に流され奈落へと落ちていく。
0.5秒ごとに照準を直しながら、私は撃ち続けた。人を殺すために。
- 189 名前:ふみこ・O・V ◆nLFumIKo 投稿日:02/10/02 16:07
- >187>188
被弾しなかったのは、本当にただの幸運だった。
特に何かしらの意図があったわけではない、ただたんに肩からずれた
MG-34 を元の位置に戻そうと、移動させただけに過ぎない。
だが、それが私の生死を別つ事になった。
ギュイン、という歪な音。同時に、肩に掛けたMG-34は破壊され、弾かれ、
そして、 ゴミ屑のように宙に舞う。
(……何ごと!?)
驚愕。
少なくとも、この近くに狙撃手はいない、それに気付かないような鈍感な
神経は生 憎と持ち合わせていない。ならば、何処から?
箒が、ぐん、と沈んだ。勘と身体が、それを意識せずとも勝手に実行に
移したのだ。
ビシ、という、立ち並ぶ高層ビルの一角が、大きく穿たれた音。
その弾痕を元に、銃弾が発射された方向を計算する……見つけた。
しかし、これは……。
確かに、その方向にマズルフラッシュの閃光を捉えた。
だが、それは150mも先での事だ、こんな作業は、例えかの有名な……
ファントムですら出来はしない。
人でないなら、それをやったのは他にいない。即ち……化物、それは私
の管轄だ。
「……目標を確認。これより、殲滅に移行します」
誰に言うでもなくそう呟いて、私は箒のギアを上げた。
- 190 名前:ふみこ・O・V ◆nLFumIKo 投稿日:02/10/02 16:07
- >
身体に吹き付ける夜風が、一段と強くなる。
現在、秒速百五十メートル、目標の地点に到達するまで……約一秒。
身体を右に倒す。
0.1秒前に私の身体があった場所を、銃弾が通過した。
次は左。右。上昇。下降。一回転。
およそ考えられる全ての方向へ身体を傾け、きっちりと0.5秒ごとに私の
身体を通過点にしようとする銃弾をかわしていく。
たった一秒にも満たない間に、それを百回ほど繰り返す。
焦りはない、今はまだ時期ではないから。
反撃の時間はすぐそこだが、だからと言ってがっつくようではいささか典
雅さが足りないというものだろう。
距離にして、あと二十メートル。
ビルの屋上に立つ人影を確認。殲滅対象に設定する。
距離にして、あと十メートル。
その姿形に至るまでを、はっきりと視認。装備はFN-F2000Aアサルトライフル。
距離にして、あと五メートル。
担いだパンツァーファウストを構え、その照準を合わせる。
本来の射程距離、六十メートル。この距離からなら、何があっても絶対
に当てられる。
距離にして、零メートル。
"それ"と目が合う、しかし、そんな事は微塵も気にする必要は無くて。
私は、パンツァーファウストを発射した。
- 191 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 17:19
- >189>190 vsふみこ・O・V
――――疾い。
視覚システムが悲鳴をあげる。センサーが彼女の姿を捉えきれない。
なぜ箒が空を飛び、縦横無尽に駆けれるのかすら理解できないが、このスピードは更に常識を逸脱している。
秒間数十発の勢いで吐き出されるアサルトライフルだが、ふみこ・O・Vは銃弾を避け、次の銃弾が襲いかかる
までの間に十数メートルの移動を可能としていた。
危機状況把握クラスタが、弾幕を張りつつ間合いを開くことを提案。
このクラスタはどうやら理解してないようだ。秒速数百メートルで移動する箒の存在を。
それは、既に、眼前にまで迫っているのだ。
真紅の輝きを放つセンサーが、ふみこ・O・Vの瞳とぶつかる。
腹に突き付けられたロケットランチャーが起動。火の尾を噴きながら、私の身体を道連れに吹き飛んだ。
一端は零まで縮められた彼女との距離が、またしても大きく開く。
ビルの屋上から放り出され、ロケット弾を腹部に抱えたまま、私は宙を舞う。
弾頭にある圧電素子を作動させぬよう、両腕で抱き抱えるように受け止めていたが、限界が近い。
私の握力では、これ以上爆進するロケット弾を抑え込むことは不可能だ。
両腕を、ロケット弾から突き放し、身体を宙に躍らせる。
頭上を炎の矢の如く、パンツァーファウストが駆け抜けていった。
- 192 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 17:20
- >191
重力と暴風が身体を襲う。現在、地上128メートル。このまま地面と激突する事態は何とか避けねばならない。
手首のブレスレットからワイヤーを射出し、近くのビルの壁面に絡みつけた。
同時、背後で爆発。後方のタワーにロケット弾が突き刺さったのだ。
背中で爆風に浴びながら、ワイヤーの末端で遠心力に身を任せ、振り子の起動で高度128メートルを滑空する。
重力加速と突風の先で、眼前に立ちはだかるガラスの壁。
それに叩き付けられる寸前、私は手に持つライフルを掲げ、トリガー。強化ガラスに蜘蛛の巣のような罅が走る。
ブレスレットからワイヤーを切り離し、身体を抱えるように丸めて、罅の入った窓ガラスに突撃。
粉砕したガラスの粉が雨のように降り注ぐ中、私は姿勢制御を一秒ごとに繰り返しながら床に着地した。
全ての命令機構をチェック開始。――――損傷チェック。
腕部フレームに若干の歪みが見られるが、支障は無い。
弾の尽きたマガジンを吐き出し、新たなマガジンをFN F2000Aに叩き込みながら、状況確認。
どうやら、何処かのオフィスの一角に転がり込んだようだ。
夜のせいで人はいないが、不法侵入による警備システムが作動している。
直ちにネット接続。該当する警備システムにハッキングをかけ、黙らせた。
ふみこ・O・Vは追ってくるだろうか。彼女の機動力を持ってすれば、この数秒の間に戦線離脱は十分に可能だ。
既に逃亡した可能性も高い。
私はセンサーの感度を最大値まで上げると、ビルの奧に消えた。
- 193 名前:ふみこ・O・V ◆nLFumIKo 投稿日:02/10/02 17:59
- >191>192
パンツァーファウストの爆発音が、予想よりも遅い。
外しはしなかった……なら、逸らされたか。
速度を秒速七十五メートルまで落として旋回する。
直後、響き渡る爆発音。
見れば、高度百三十メートル付近をワイヤーで滑空するそれが、ビルに
張り巡らされた防弾ガラスをぶち破って突入するのが見えた。
「ふん……逃がしはしないわ」
静かに呟く。
一度狙った獲物は、何処まで逃げても追い詰めて、完膚なきまでに殺し尽くす。
それが私の仕事である以上、私はそれをこなすだけ。
仕事の手は抜かない主義だ。
箒に掛けられた予備のMG-42を掴み取り、目標へと箒を滑らせる。
二秒足らずで箒は目標であるビルの上空へと辿り着き……私は箒から
跳躍すると、不気味なほどの静けさを保つ屋上へと降り立った。
「さて……狩りの時間よ」
宣言。
一通り装備の確認を終えると、私は屋内へと続く扉を潜った。
- 194 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 18:51
- >193 vsふみこ・O・V
ビルに侵入してから数秒。支配していた警備システムが、新たなる侵入者の存在を告げる。
位置を割り出し、近くの赤外線防犯カメラにモニタリングをさせ、侵入者の姿を確認しようと試みた。
「あら……」
モニタに写し出された軍服の女。まさか追ってくるとは思わなかった。
追撃隊の編成を組ませていたが、どうやら無駄になってしまったようだ。嬉しい誤算である。
ふみこ・O・Vの現在、最上階の105階に位置している。私は57階。接触まではまだ大分余裕がある。
その上、彼女は私の位置を把握していない。逆に、私は完璧に彼女の姿を捉えている。
コンピューター警備に完全に依存しているこのビルは、私の手足のようなものだ。
ふみこ・O・V―――自ら、敵の体内に潜り込むなんて……。
「なんて愚かなのかしら。ふふ」
冷笑を浮かべながら、廊下を突き進む。
ビルの警備システムはかなりの高性能だが、利用できそうなものは防火シャッターぐらいか。
エレベーターホールに出た。予め警備システムを操り、当階に待機させておいたエレベーターに乗り込むと、
私はおもむろに“105”のボタンを押す。
- 195 名前:ふみこ・O・V ◆nLFumIKo 投稿日:02/10/02 19:41
- >194
軍靴が、規則正しく床を叩く音が、静寂に響き渡る。
最上階の窓から覗く、ネオン煌びやかな街観。
それとはガラス一枚隔てただけであるにも関わらず、このビルの廊下は
薄暗く、死んだように静まり返っていた。
オフィスの至る所でシャッターが降りている。
警備システムが作動したのだろう……だが、警備員が来る気配は、一向
に無かった。
「ミュンヒハウゼン」
インカムを通して、万能執事に呼びかける。
このビルのシステムが乗っ取られている事は明白だ、ならば、一応の対
策は講じておく必要があるだろう。
ミュンヒハウゼンに指示を出しながら、死んだオフィスを進む。
途中、シャッターが閉じられて行くべき道を塞がれていた時もあったが、
そんな物は腰に差したカトラスを振るって、道を作った。
目指すべき場所は決まっている。
静寂の支配するこの空間に、微かな駆動音が響いている。
エレベーターホール……警備システムを掌握し、私の進入に気付いた
だろうあの少女は、あと一分と経ずにこの場所に降り立つだろう。
電子プレートが、刻一刻とその表示を変える。
あと五秒……二、一 ――――――
瞬間、チーン、という呆れるほど間抜けな音がホールに響き、同時に、鉄
の扉がゆっくりと押し開かれた。
私は中を確認することもせず、構えたMG-42の引き金を絞った。
- 196 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 20:19
- >195 vsふみこ・O・V
銃火は銀で統一されていてエレベーターボックスを容赦なく黒で犯す。
名のある夜族を悉く屠って来ただけのことはある。彼女は強い。だが、やはり人間だ。
彼女は気付いているはずである。この場は私の領域だということに。
なのに、未だ私を倒すことに執着するなんて……愚かすぎる。
無数の穴が穿たれていく箱を見下ろしながら、腰のホルスターから拳銃を引き抜く。
F2000Aを脇に置き、引き抜いたシグ・ザウエルP226LFのスライドを引いて薬室に銃弾を叩き込んだ。
臨戦態勢となったシグを左手に持つと、床……いや、天井裏に置いたライフルを右手に持ち構える。
いま、私が身を潜めているのはエレベーターの頭上。ボックスの天井の蓋を外し、そこから上へと出たのだ。
私は待つ。彼女が、トリガーを搾る手を休めるその瞬間を。
- 197 名前:犬神博士投稿日:02/10/02 21:00
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>185
剣の煌きが月の下、銀の孤を描く。
旋風が、迫る。
狂々と、鬼の身を断たんと欲し乍、狂々、狂々と。
剣尖の産む螺旋は、宛ら鎌鼬の様に、紅に塗れた鬼の身に触れる。
そして、朱が飛沫いた。
刃が通り抜けたと同時、鬼の身は血溜りに変じたのである。
暫し、其のあかい霧は朧の様に流離して居たが。
やがて、風と成り―――――消えた。
そう見えた瞬間、閃光が迸る。
人形の繰り手の其の背後に、五十土の如き光を纏った先程の鬼が姿を現したのである。
血風と化した筈の其の身には、寸毫たりとも傷は見受けられ無かった。
鬼の手に握られた白刃が、斜めに闇を剣光で断つ。
狙うは人形の繰り手、其の頭部。
- 198 名前:ふみこ・O・V ◆nLFumIKo 投稿日:02/10/02 21:06
- >196
ゆっくりと扉が開いていく。
だが、その二秒足らずの時間すらも惜しむかのように、毎分1500発の銃
弾の嵐は、絶える事無く鉄の箱をを食い破り……
(……いない?)
そう、完全に開ききった扉の中には、何も存在しなかった。
ただ、穿たれた銃弾の痕が、生々しく嵐が過ぎ去った事を主張するのみ。
(囮……いや)
それはあまり考えられることではない。
あれが突入したのは、ビルの中ほどだった、なら、エレベーターを囮にし
て階段を使って上がってくるという事はありえない。
何故なら、エレベーターの方が上昇速度としては絶対的に早いのだ。
一階や二階の差ならまだしも、50以上の差がある状態でそんなことをす
れば、階段を昇ってくると言う事を、わざわざ教えているようなものである。
ならば、何処に隠れた?
私は引き金に掛けた指を緩めると、MG-42をゆっくりと降ろした。
- 199 名前:モリガン・アーンスランド ◆4EmpreSs 投稿日:02/10/02 21:17
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>118 >163
攻撃の隙に滑りこむ風切り音。
――反応が送れた。
半ば振り向いた所で衝撃・・・冷たい。
零れ落ちて行く。
血が。
腸が。
寒い。
ゾクゾク、する――
落ちる。
ぶつかり合う二人の上へ。
振るう。突く。
まだ動く両腕を。刃に変えた翼を。
「全員、で・・・いき、ま・しょう・・・」
動いて。
もう少し、だけ。
- 200 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 21:26
- >198 vsふみこ・O・V
魔女の姿を成したふみこ・O・Vが、銃を降ろしたその瞬間。
――――今だ!
不安定に位置固定してあった屋根を取り払い、私は背を後ろへと倒した。
重力に従い、頭から地面へと落ちていく身体。しかし、私の銀髪が床に触れることは無い。
L字に曲げた両足を天井に絡め、逆さ吊りの姿勢で私はエレベーターの中に姿を現す。
眼前に現れる眼鏡の女。両手に持つライフルと拳銃を前に突き出し、私は二つのトリガーを引き搾る。
狭いエレベーターを閃光が支配した。マズルフラッシュの炎で、視界が白一色となる。
センサーにフィルターをかけ、視覚システムを正常化。
僅かに暗みが掛かっているものの、どうにか視界を元に戻した。
蝙蝠のように天井にぶら下がりながら、二丁の銃を構えて乱射する私の顔に表情は無い。
スコールの如く降り注ぐ銃弾を、ふみこ・O・Vに浴びせ続けた。
これで、私が今までに始末してきた“ハンター”は十九人。あと一人で、二十代の大台に乗る。
- 201 名前:悪アギト ◆XAGITO1o 投稿日:02/10/02 21:29
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>163>199
「ハハハハハハハ!!全ては炎に還る!
三人一緒にイこうぜ…ッ!」
拳を巻き込み、抉りぬくドリルにより胸を、
背まで身体をを突き抜ける衝撃に、
もはや狂える竜といえども耐えられるものではない。
全身が炎となっていた狂える竜の名残は夜魔の女王が降らせた光の雨により洗い尽くされ、
一陣の風が吹いた時、そこには何も残らなかった。
(悪アギト『死亡』)
- 202 名前:ふみこ・O・V ◆nLFumIKo 投稿日:02/10/02 21:48
- >200
叩き付けたのと同じくらいの銃弾の嵐が過ぎ去り……あとに残ったのは、
やはり無人の空間と、弾痕が穿たれ、窓ガラスが割れたオフィスの壁だった。
いや、先程と決定的に違う物が、一つだけある。
それは、爆弾の詰まった黒い塊。安全ピンを抜かれ、エレベーターの中
に放り込まれたそれだけが、先程と決定的に違うものだった。
経緯を説明すれば、簡単な事だ。
天井裏に潜んでいる事に気付いた私は、寸でのところであれの視界か
ら飛びのき、その動作と平行して、腰に装備した手榴弾を投擲した、と、た
だそれだけのことだった。
エレベーターという、限られた視界しか許されない場所に陣取った事が
そもそもの失敗よ。その中では、逃げる場所も無いでしょう。
爆発まであと三秒、二、一……爆発。
凄まじい爆音が、エレベーターだけでなく、ビル全体を揺るがした。
- 203 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/10/02 21:54
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>197
「……へ?」
我ながら間の抜けた声を出しちまいました。振るわせた刀に手応えが無え。
がんじがらめに縛った筈の鬼さんが、血煙になったと思ったら消えちまったんですよ。
畜生、そういや化物だったな。ドロンととんずらはお手の物って――やばい、後ろか!
光と気配が背後から来る。跳び退くのは、駄目だ間に合わねえ。殺られる!
咄嗟に弄る左の中指小指。
「引けえプルチネルラ!」
あたしは鉄砲玉みたく跳ね上がりやす。てめえでジャンプしたんじゃありやせん。
プルチネルラ自身にね、繰り糸を引っ張らせたんでさ。
当然あたしも引っ張られ、素っ飛ぶその軌跡は、しかし紅く染まってやす。
「へっ……鉄の味、ですねえ」
久方振りに味わいますよ。刃で肉を抉られる感触はね、痛えつうか、熱いやね。
はい、かわし切れませんでした。
どうにか頭は胴体に繋がってやすが、後ろから首筋をざっくりやられちまった。
宙を駆けながら、喉元から雨みたく噴き出した血が止まらねえ。
それでも何とか跳んだあたしの躯を、プルチネルラの腕に捉まえさせます。
ぐっ。おい、もうちっと丁重に掴めねえのかい。
相棒の肩口に倒れるようによっかかりやす。二つに割れたその頭部が、見る間に赤く塗れてく事。
はは、ピエロの頭にに腕巻きつけねえと、ずり落ちちまうよ。
あたしは冷めた頭のどっかで思います。
長くはもたねえな。
そいじゃ、やる事だけはやっちまうかい、ええ相棒。そら、刀を構え直しなせえ。
- 204 名前:ガルアード・ラインディヒ(M) ◆MATOUV/M 投稿日:02/10/02 21:54
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>199 >201
右腕が竜鎧の男の背を貫く感触が伝わる。
確認は出来ないが。
既に視覚センサーが高熱によって利かなくなっている。
視覚だけではない。
あらゆる感覚素子が――――もはや何の反応も示さない。
灼熱の中で外装甲が融け出す。
焦熱の中でフレームが歪み出す。
体内を流れるオイルに引火し、小規模な爆発が身体の端々で起きる。
「どうやら――任務は―――果たせなかったよう――ですね。
せめて――――お帰り願―――――――えればと―――――――」
その声が届いたか。
かつて竜鎧の男であった残骸にその身を預けながら
ガルアード・ラインディヒは全機能を停止した。
【ガルアード・ラインディヒ : 死亡】
- 205 名前:友永遥香 ◆HELLOWgk 投稿日:02/10/02 22:31
- >202 vsふみこ・O・V
虚空を抉った銃弾と、放り込まれた手榴弾。状況把握は一瞬と掛からなかった。
「――――ちぃっ!」
奥歯を噛み締めながら、天井に絡めた足を解く。
落下しながら、姿勢制御。壁に両足を付け、その勢いを殺さず壁を蹴り飛ばす。
脚部モーターを限界まで稼働させての一撃で、打ち放たれた矢の如く私の身体がエレベーターから飛び出す。
飛び出した勢いは凄まじく、ふみこ・O・Vが立つ位置を過ぎても止まることは適わなかった。
間を置かず警備システムを介してエレベーターの扉をロック。階下へと落とさせる。
ビルが揺れた。耳に届く爆音。警備システムをチェック。――98階で爆発したようだ。
どうやら、私はふみこ・O・Vという人間を“侮って”いたらしい。
まさか、此処まで生き足掻いてくれるとは……。
「そんなに死にたく無いんですか」
背中からデスクに突っ込む。割れた窓へ向けて吹き荒れる風が、無数の書類や機械類を外へ吐き捨てていく。
ここまでやってしまったら、警察も気付くだろう。事態は急を要する。
前方へ向けて、狙いも付けずに引き金を搾り込む。
F2000Aの、バレル下部の40mmグレネードランチャーのトリガーを。
三連発で吐き出されたグレネードが、所狭しと屋内を駆け回った。
- 206 名前:モリガン・アーンスランド ◆4EmpreSs 投稿日:02/10/02 22:32
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
>201 >204
地上へは足から降りる事が出来た。
そのまま膝を突いた。
目の前で二人が燃えている。
暖かい筈なのに寒い。
このままでは、死ぬ。
その人間にとっては運が悪かったとしか言えないだろう。
たとえ死ぬほどの快楽を味わったとしても。
偶然通り掛かった――騒ぎを聞きつけたのかもしれない不幸な少年の目を見つめる。
意思を込めて。
唇を重ねて、吸う。
――数秒後には元人間だった抜け殻と、傷の癒えたわたしがいた。
「けっこう良かったわよ? 貴方達。三人で、っていうのは久しぶりだったけど、
良いわね、こういうのも」
爆発の合間に聞こえた掠れた声。
――魔界に戻ろうか、一度。
じゃあね。そう呟き、背を向けて歩き出した。
- 207 名前:犬神博士投稿日:02/10/02 22:36
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>203
式王子の白刃は、人形遣いの首筋をギチギチと抉じ開ける様に引き裂いた。
其の断面からてらてらとあかく光る肉の筋が蠢き、見る間に肉が盛り上がって行く。
血液も堰を切った様に止めど無く流れて行く。
道化は繰り手のぬらぬらと流れる赤を浴び乍、尚その刀を式王子へ向ける。
其れを迎え撃たんと式王子が宝剣を構えた途端。
眩暈。
唐突に犬神博士の視界が、由良由良と振え始めた。
無理をし過ぎたか、と犬神博士は思う。
式王子其のものは強大なる力を持つが、其の繰り手、犬神博士自身は飽く迄も只の人間だ。
扱う対象、振るう力が強大であればある程、其れを扱う側の負担も大きく成るのは道理である。
其れに彼が呪殺した者、不具にした者、共に記憶に留めては居れない程の数。
彼は今になって其の報いを、己が式王子から受けていると言う訳だ。
だが、未だ彼からは、其の鋭い眼光が失われてはい無い。
己に報いが訪れるより先に、然るべき報いを与えねばならぬ者が居る。
其の邪魔をする者も、断たねば成らない。
主の歪む視界の中で、式王子は剣風を横に薙いだ。
- 208 名前:モリガン・アーンスランド ◆4EmpreSs 投稿日:02/10/02 22:48
- モリガンvsガルアードvs悪アギト『鎮魂歌は誰が為に』
レス番纏めね。
前スレ分はここ。
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/540
>51 >76 >106 >118 >163 >199 >201 >204 >206
感想はこっちにね。
ttp://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=029002304
- 209 名前:ロング・ファング ◆lOnGFAng 投稿日:02/10/02 23:07
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>186
……よくその体で立ってられるもんだよ。
銀のナイフを後生大事に握り締め、ぼう、と、俺を見つめつづけるダンテ。
その表情からは、雑多な感情が抜け落ち、ただ殺意だけが残っている。
それだけが俺を捉え続ける。
く、く。
それでいい。殺しに来いよ、化け物を、さ。
奴が駆ける。まっすぐと、俺のほうへ。
俺はそれを、ただ突っ立ったまま待ち受けた。
地面すれすれ、ナイフが死角から跳ね上がる。
ほとんど意識するでもなく、俺はそれを受け止めていた。
手のひらを貫き、なおも腹腔にもぐりこみ、目指す心臓まであと数センチ――
「そろそろ、終わりにするかよ……」
ナイフごと奴の手首を握りつぶし、俺は左の抜き手を奴の背中に突き込んだ。
- 210 名前:ダンテ ◆mjyDANTE 投稿日:02/10/02 23:48
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>209
手首から先が、ない。
文字通りだ。潰れた肉と骨は腕とのつながりを失い、ただの肉となって、落ちる。
痛くもない。熱くもない。ただ黒くしこる喪失感だけがあった。
背から身体を貫き、腹から突き出る腕の感触。
穴から漏れ出る内臓の、生々しい赤黒さ。見えなくてもわかる。
致命傷って奴だ。
大剣も無くし、
ナイフも無くし、
左手をも無くし、
もう命さえも無い。
ごぽ、と腹腔から血がこみあげた。
床に垂れるヘドロのような黒の音は――笑い声、そのものだ。
かち、と金属の音。銃身を引き抜いたときの鍔鳴り。
だが、まだこいつだけはある――この銃だけは、生きている。
何千何万と繰り返した、銃撃という行為。腕は勝手に動き、銃口を心臓に突き刺す。
いくらなんでも、ここからじゃ避けられないよな――
「……ジャックポット、だ」
血反吐でくぐもった声で、言う。
ドン、と鈍い手応え。
リコイルに耐え切れず、オレの身体は崩れて落ちた。
- 211 名前:ふみこ・O・V ◆nLFumIKo 投稿日:02/10/03 05:57
- >205
狙いは……付けられていない。いや、付ける余裕すら無かったのか。
だが、標的を捉えないとはいえ、三連続で射出されたグレネードの爆発
は十分人を殺傷しえる物だし、衝撃だけでも相当なものだろう。
私はMGを捨てると、その場から走り出した。
あらぬ場所に着弾したグレネードが、二つ同時に爆発する。
衝撃は強化ガラスを粉々に打ち砕き、巻き起こる炎は静寂のオフィスを
紅く照らし出す。
三発目のグレネードが、私の頭上を通過する。
足を早める。目標はもちろん、未だデスクへと突っ伏しているあの女。
背後での爆発。巻き起こる業火が、オフィスを三度紅に染める。
直後、破砕物を伴って、私の背中を衝撃が襲った。
「ぐっ……!」
苦痛に思わず声を漏らす。
だがこの衝撃は、何もデメリットのみを与える物ではない。
衝撃に後押しされた私は、その足を一気に加速させる。
デメリットは、背中全面へのダメージ。メリットは……相手の予測を超え
る速度を得られる事。
通常なら三歩で進む距離を、一歩で踏み越える。
あと三歩……私は腰に差したナイフを引き抜き構える。
あと二歩……目標が銃を構えなおす。
あと一歩……その指がF2000Aのトリガーに掛かり――――
「……遅いわ」
だん、という最後の強い踏み込みと共に、銃身の内側まで潜り込む。
同時に、その無防備な喉へ向けて、逆手に持ったナイフを振り払った。
- 212 名前:友永遥香 ◆mYHELLOWgk 投稿日:02/10/03 13:53
- >211 vsふみこ・O・V
私の反応速度を軽々と超えたふみこ・O・Vの踏み込み。
彼女は半ば宙を浮くような姿勢のまま、逆手に構えたナイフを小さく振り払う。
「ぐっ……」
懐に潜り込まれてはヒューマノイドタイプの私に抗する術は無い。人間を模したこの身体が仇となった。
暴風吹き荒れるオフィス内に、静かに弧を描くナイフの切っ先が私の喉を捉え、迷うことなく切り裂く。
擬態機能が灼けるような痛みを再現。喉が噴きだした朱色の疑似血液が、ふみこ・O・Vを赤く汚す。
偽りの血煙の先でナイフを突き立てる魔女。その顔は、機械の私よりも遙かに冷たい。
ナイフにより受けた喉のダメージを把握する暇もなく、衝撃が身体を襲った。
爆風の力を利用し、此処まで突進してきた彼女が、勢いを殺せず、私に体当たりを仕掛けたのだ。
瓦礫と貸したデスク群を突き破り、宙に吹き飛ばされる。
若干ノイズが走ったが、大したダメージは無い。むしろ、喉の方が深刻だ。
一部の発声機関が、ナイフに持っていかれてしまった。声が出ない。ショートも起こしている。喉から鮮血と
共に火花が湧き出ていた。
く、と心の中で呻きながら、姿勢を立て直し着地。立ち上がり様に、サバイバルナイフを引き抜いた。
ライフルは先の衝撃で取り落としてしまっている。シグ・ザウエルはエレベーターのなかで木っ端微塵。
今の私の獲物は、ナイフのみだ。“アイトール・ジャングルイーグルT”。肉の厚い刃を低く持ち構える。
気圧差により外部から流れ込んだ空気が暴風を作り上げるこの状況では、地の理はまだまだこちらの方が有利だ。
膝を曲げ、身体を深く沈めると、バネのように跳ね上がり、低く跳躍。
一瞬で間合いを詰めると、私は魔女へ向けて刺突を繰り返す。
- 213 名前:ふみこ・O・V ◆KgnLFumIKo 投稿日:02/10/03 17:27
- >212
裂かれた首筋から吹き出る鮮血、その奥に見えるのは……火花を散ら
す剥き出しの機械。
そこに至って、私はようやくこれの正体を知る。
喉を切り裂く事には成功した、だが、致命傷に至ってはいない。
刺し出される凶刃をかわそうとする、しかし、暴風吹き荒れるこの場所で
は、バランスを上手く取る事が出来ない。下手に動けばその瞬間、態勢を
崩して倒れてしまうだろう。
それでも何とか上体を逸らし、直撃は避ける。しかし、不完全。突き出さ
れたナイフはその刀身の右半分を肉に埋めた。
声は出さない。
痛みには慣れている。この程度の傷で騒ぐほど、柔には出来ていない。
食い込んだナイフに力を込め、胴体を両断しようとする女の腹に、爪先
を食い込ませる。そのまま、宙に浮いた女の頬を、趣味の悪い、異様に棘
の付いたナックルガードで殴りつけた。
機械を殺すにはどうすればいい? どこを狙えばすぐ殺せるのか?
そればかりを考えながら、私の身体は独りでに、追撃のナイフを繰り出し
ていた。
- 214 名前:友永遥香 ◆mYHELLOWgk 投稿日:02/10/03 17:46
- >213 vsふみこ
頬に抉り込まれた鉄の拳を、重心を逸らす事で何とか受け止める。
エネルギーに逆らわず受け流した代償は、衝撃に身を任せ、紙のように吹き飛ぶことで払われた。
こそぎ取られた頬から、血に濡れた人工筋肉と色とりどりの配線が配線が覗く。
無機頭脳の処理効率が著しく落ちている。これでは動作の最適化は望めない。
やはり、頭部へのダメージは危険だ。
高く吹き飛ばされた身体を、緩やかな弧を描かせながら反転。天井を蹴り、弾丸よろしくの速度で跳躍した。
声が出れば、私は掛け声を上げていただろう。
本来ならば必要の無い行為だが、いつもの習慣を成せぬのは、なかなかにペースを狂わせてくれる。
この人間を切り刻み、好きなだけ言葉を発せるようにならねば。
私はふみこ・O・Vの頭上目掛けて跳びながら、ナイフを逆手に持ち直し、大きく振りかぶる。
- 215 名前:レイオット・スタインバーグ ◆LOSJACkEtA 投稿日:02/10/03 19:55
- ……ん?
またあんたらか。
ほんとに懲りないな……その根性だけは色々と感服するが。
さて――それで、なんだって?
>4 そして伝説へ……
……伝説?
一体何のことだ?
ここのことを言ってるんなら、それはお門違いってもんだ。
ここは伝説なんかにはならない。
戦場なんてのは、いずれ地の底に埋葬されるもんだ。
それを酔狂な奴が歴史だのなんだのに書きこのす。
そんな物好きもいないだろうがね。
>26 もっとも軽蔑すべきものは?
はて……難しいことを聞くな。
だが、少なくとも俺には思いつかん。
人間なんて、それこそその気になればなんだってやれるし、なんだって許容出来る。
それが例え同族食いなんてものであってもだ。
倫理やら何やらは、平時に於いてのみその効果を発揮する。
生きるか死ぬかって時に、そんなことを気にする奴なんていないからな。
>178 嵐は好きか?
ああ……ちょっと前に通り過ぎていったよな。
あの時は色々と迷惑した。
正直、勘弁してもらいたいね。別に晴れが好きだって訳じゃないんだが……
雨やら嵐やらは、色々と気が滅入る。
- 216 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/10/03 21:19
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>207
ふん、相変わらず迅え。鬼さんが放った剣斬は、プルチネルラの胴体に切り込んできやした。
歯車が軋みやす。滑車が悲鳴を上げやす。
我慢だ我慢。もうちょいで全部終るからな。
「そら、これでアイコだぜ!」
おし、今度は手応えあり。
鬼さんがこっちの人形を輪切りに掛かってる隙に、振るわせた一刀を叩き返してやりやした。
おっとあんた、さっきみてえにドロンする暇は与えてやりませんぜ。
あたしは全ての指を思い切り引きやす。
プルチネルラの片手で鬼さんの躯を捕まえて、四つ足を最大速度で駆けさせる為に。
互いに互いをぶっ刺し合い、鬼と人形、操られる化物二体は一つの方向へ動き出しやした。
プルチネルラの機動力を存分に生かした、いわば相撲のぶちかましが、鬼さんをご主人である
黒い旦那の方に押し付けて行くんでさぁ。
死んでまで金貰いたかねえし、そんな危ない橋渡るなァ、あたしの性にゃ合ってません。
だけどねえ、流石に急所をやられちまっちゃあ、泣き言ほざいても始まりませんや。
まあ、これでもプロの端くれなんでね。
最後くれぇきっちり終わらせねえと、「黒賀の人形使い」の名が泣くってもんですな。
- 217 名前:阿紫花英良(M)投稿日:02/10/03 21:20
- >216 続き
勢いに乗ったプルチネルラはもう止まりやせん。首にあたしを引っ掛けたまま、鬼さんを押し押し
ひたすら突っ走るだけです。
その疾走に揺れながら、あたしは胸ポケットから煙草を摘み出して口の端にぶら下げます。
ふう。随分と手が震えやがる。
ん、湿気ってると思ったら、こりゃ血塗れなんじゃねえか。
そんでもって寒い。
そろそろかね。
何だ、それなりに愉しい人生でしたよ。もう一回やろうたぁ思わねえですが。
あたしゃこう考えるんです。
どんなに別の生き方をしてみようったって、結局はまたおんなじように馬鹿やって、そしてまた
おんなじように死ぬんじゃねえか――ってね。
だから、死ぬの生きるのなんざ一回で充分なんでさぁ。
ライターを探る力はもうねえが、これは右人差し指をちょいと曲げるだけで事足ります。
いえね、プルチネルラの体内にある自爆装置を起動させられるんで。
煙草の火にゃ、少々でかいがね。
段々と旦那が近付いて見え、おや、どうしなすった。顔色が悪いですぜ。
旦那、と声をかけやすが、はは、えらいかすれた声しか出ねえ。人の事ァ言えねえか。
「連れがあたしじゃご不満でしょうが……地獄の底までお付き合い願いますよ」
くいっと引いた人差し指で、ついでに人生の幕も引いて。
はい、お後がよろしいようで――。
- 218 名前:犬神博士投稿日:02/10/03 21:22
- 犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>216>217
轟、と大気が唸りをあげ、爆発が犬神博士の眼を覆い尽くした。
其れ迄に式王子を戻して居れば、或いは彼の身が炎に巻かれる事は無かったやも知れぬ。
だが、其れをし無かったのは、何故だ?
犬神博士は、そう己に問うてみる。
最早操る力も失ったか、はたまた其れを自分の運命と悟ったか。
焼かれた脳髄は、己の死因を考えるにも足り無かった。
只、己の周りを覆う白煙を、朦朧としながら見つめて居る。
其の煙の中に、犬神博士は人間の眼球を見た。
首やら腕やら臓腑やらを撒き散らした、教師の眼球を。
顔皮を剥がれ、桜色に蠢く筋肉を剥き出しにした、外道使いの巫女の眼球を。
口と鼻と耳から、血の筋を濁々と流した、小男の眼球を。
無数の、犬神博士が呪い殺して来た者達の眼球を。
眼球は螺旋状に成って、怨嗟の念を持って犬神博士を見つめて居る。
呪詛への報復の念に充ちた其の眼は、ありじごくの様な空間を作る。
そして犬神博士は、幾千もの怨嗟の中で、死ぬ。
- 219 名前:灼き爛れた熱泥の如き投稿日:02/10/03 21:26
- 血肉と残骸が宙を舞った。
犬神と人形、それを使役する者ども。爆風と火炎に押し流され、ばら撒かれた彼らの全ては、
大地に落ちて妙なる綾を形作る。
それは死闘を演じた者たちが、身命を以って描いたレス番纏めでもある。
犬神博士vs阿紫花英良 犬と人形のマジック
>116>117>119>120>121>122>124>161>162>164>165
>166>180>181>184>185>197>203>207>216>217>218
その時――雲の谷間から少しく月光が降り注ぐ。
しかし、下界の惨状を見せまいとするかのように、雲海は夜の女王の面を覆って行くのだった。
- 220 名前:ロング・ファング ◆OClOnGFAng 投稿日:02/10/03 22:20
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>210
無様にしりもちをつく。
何か言おうとして、咳き込んだ。肺もズタズタだ、もう治りもしない。
どうやら、死ぬらしい、と思い至る。
劇的でもなんでもない、下らない死に様だ、と思い、俺はちょっとばかり失望した。
間抜けなことに、自分にふさわしい生き様死に様が用意されていると、
そんな期待を、思い上がりを、気づかぬうちに持っていたらしい。
だれが用意するってんだ、そんなもの。
自虐に笑おうとしたが、腹に力が入らず、血泡混じりの息を吐き出しただけだ。
神様に期待してたのか? 大っ嫌いな神様に? それこそとんだお笑い種だ。
「くそったれ……すこし、遊びすぎちまった、よ――」
深刻ぶるのに飽きて気取った台詞をはいてみても、聞く相手は一人もいない。
女の腕の中、なんて贅沢はともかく、見取ってくれる奴が一人もいないのは不満だ。
俺を殺した当人は先におネンネ、まったく、生きてりゃちょっとした英雄になれるだろうに、
これでも俺ァ、ちっとは名が通ってるんだぜ?
応える相手は、もちろんいない。
……化け物にゃ、お似合いの末路だ。ああ、そうだろうさ。
やることも考えることも無くなって、俺は天を仰いだ。
何が見えるわけでもなく、照明の失せた天井には闇が広がるばかり――
意識が拡散するまでの間、俺はその闇を、ただ、見つめつづけていた。
- 221 名前:ダンテ ◆JvmjyDANTE 投稿日:02/10/04 00:46
- 吸血鬼禍 〜 ロングファング vs ダンテ
>220
しゃり、と指先に触れるものがある。
灰だ。
そうか。死んだか。
殺し殺され。恨みっこなし。すっきりしたもんだ。
くだらんしがらみまであの世に持ってくのはつまらねえし。
笑おうとしたが、それほど活力が残ってないらしい。ぴくりとも震えない。湿気たもんだ。
今度逢ったら、また酒でも飲むか。
安っぽい約束、ひとう。
薄明かりが目の前を包む。
行くのは天国? どうせなら、地獄がいいか。
悪魔どもを殺しまくれるし、もしかしたら、こいつもどっかにいるかも――
- 222 名前:暗黒騎士ガウザー ◆vQsChIjITA 投稿日:02/10/04 21:20
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>115
突きの目標は、忽然とガウザーの前から掻き消えた。
薙がれた空気は彼に手応えを伝えることはなく、ただ風切り音だけを聞かせる。
敵の消滅に驚愕する間もなく、背後からもう一度風切り音。
「がっ!?」
ヤツの狙いらしき脊髄は外したものの、背中を裂かれてうめき声が漏れた。
姿を消す上に、次は背後からの攻撃か、どこまでも卑怯な。
舌打ちしながら、ガウザーは柄を握り、その柄で背後の敵を殴りつけた。
見えない敵に、自分の勘がどこまで通用するか。
- 223 名前:エピローグ投稿日:02/10/04 21:40
- 吸血鬼禍 〜 エピローグ
>221
源吸血鬼の消滅とともに、市街に繁殖していた吸血鬼の7割は呪詛を解かれ、
そのほとんどは人としての生活に戻った。
残った吸血鬼達に対し、公安当局は数度の殲滅作戦を実施。
しかし、地下に潜った一部の狡猾な吸血鬼達の殲滅は困難を極め、
当局がはっきりと”根絶”宣言を出すまでに実に半年を擁した。
吸血鬼禍によって失われた人命は都市人口の3割に達し、復興には長い時間がかかることとなる。
以後、歴史に”長牙”の名が刻まれることは無く、
また、かの吸血鬼を倒した男の名も、吸血鬼学者達の記述に僅かに顔を出すのみで、
やはり忘れ去られていった――
- 224 名前:ダンテ ◆JvmjyDANTE 投稿日:02/10/04 21:48
- 吸血鬼禍 −レス番まとめ−
前スレの分
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/541
>56>64>66>75>100>167>168>169>170>171>179>182>183>186>209>210>220>221
――――ん?
よう、また逢ったな。親友――――
- 225 名前:ダンテ ◆JvmjyDANTE 投稿日:02/10/04 21:49
- 吸血鬼禍 −レス番まとめ− 訂正
前スレの分
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1032336944/541
>56>64>66>75>100>167>168>169>170>171>179>182>183>186>209>210>220>221>223
――――ん?
よう、また逢ったな。親友――――
- 226 名前:仮面ライダーベルデ(M) ◆McVERDE6nY 投稿日:02/10/04 21:50
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>222
「はは、どうした、都知事さんよ? 俺は此処だぜ?」
背後から攻撃に来たのならば敵は背後に居る。
そんな訳は無い。
既にベルデは忍び足でその場を移動。遠間で空振りする様を見届ける。
「相変わらず愚直だな。人間よりよっぽど人間らしいよ、アンタ」
嘲り笑いながら、腰からカードを引き抜きカードキャッチャーへ。
獲物を捉えたカメレオンの舌のように、カードはバイザーに収納される。
『ホールドベント』
透明化された、ヨーヨーに良く似た武器がベルデの手元に出現した。
これもカードの持つ力の一端。その力は様々な道具の召喚をも可能とする。
糸を伸ばし、高速で回転する車輪を騎士に向かい襲い掛からせる。
位置を悟られぬよう、毎回違った方向から攻撃を。
「こっちだ、こっち」
位置を変えるたび呼びかけ、声で混乱させる。
狡猾な戦法でもって、ベルデはじわじわと相手の体力を削っていった。
- 227 名前:暗黒騎士ガウザー ◆vQsChIjITA 投稿日:02/10/04 22:08
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>226
柄はやはり、何の手応えも伝えることはない。
耳に響くのは、ベルデのせせら笑う声と自分の身が打たれる鈍い音のみ。
その音を頼りに刃を振るうが、全て読まれているのか、空を切るばかりだった。
風切り音と鈍痛と嘲笑のサイクルに捕らわれ、ガウザーは着実に消耗していく。
ベルデはこのまま真綿で首を絞めるように、じわじわと黒岩を倒す気だろう。
「一息にとどめを刺さないのは、趣味じゃないな・・・」
そう嘯く、ガウザーは刃を逆手に持ち替えた。
そして、自らの腕に押し当てる。
鮮血の雫が、辺りに舞った。
- 228 名前:仮面ライダーベルデ(M) ◆McVERDE6nY 投稿日:02/10/04 22:40
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>227
遂に狂ったか?
その行動は全く理解出来なかった。
自傷癖があるという話は聞いていないが。追い詰められたら何をするか分からない。
獲物を仕留める際、最も注意すべき点は其処だ。
「人の趣味に口出しするんじゃねぇよ」
車輪を叩き込みながらカードを抜き、装填。
『アドベント』
「降臨」の意味を持つ言葉が響くと同時に、鏡の中から舌が伸びた。
黒騎士の足に瞬時に絡みついた舌の先には―――鏡に映る、異様な姿のカメレオン。
ベルデの力の源、とも言える契約モンスター、バイオグリーザだ。
カードの使用はあくまで、カードに宿ったバイオグリーザの力を解放しているに過ぎない。
彼のライダーとしての力も、契約モンスターによるものが大きい。
「まぁいい、お望みなら、今すぐトドメをくれてやる」
車輪は空を切り、後に続いた糸は騎士の腕に巻きついて動きを拘束する。
「じゃあな」
弾丸のような前蹴りが、高層ビルから黒騎士を叩き落さんと迫る。
- 229 名前:導入投稿日:02/10/04 23:01
- 天色優/片倉優樹
「片倉巡査部長」
そして、片倉優樹は振り返った。
周囲を慌しく警官が行き来する。緊急捕縛部隊EATの隊員だ。対NBC戦用防護服は
フルで二十キロを超える。あれだけ走り回っていれば、きっともう汗だくに違いない。足り
ない人手をカバーするには、それも必要なのだろう。通常の警察官はひとりもいない。
情報によれば、今回の目標は神経擾乱系の気化毒を撒くらしい。防護服なしではただの
足手まといにしかならないだろう。そんなことをぼんやり思いながら、自分に近寄ってくる
ひとりの隊員に目を向ける。
「そろそろ作戦開始時間です。準備を」
「わかってるよ」
――捜査六課に出動要請があったのが、今から三時間前。
人型の怪(アヤカシ)――甲種と目される生物が、都心の一角に現れ、同時刻よりその一帯
にて行方不明及び未知の毒による意識不明症状を発して倒れる事件が続出。両者に関
連があると考えた警視庁はEAT、そして六課の出動を指令。周辺区域は封鎖され、現在
怪はオフィスビルに逃げ込み、以来そこから動いていないことが望遠で確認されている。
被害者の数は確認されているだけでも二十人を超える。下された命令は、当然のように
捕殺だ。
催涙弾と特殊閃光音響弾を発射し――どれほど効き目があるかはさておき――それに
まぎれて優樹が突入。EATは万が一優樹が取り逃がした場合に備え、ビル周辺で待機。
手筈確認。軽く身体をほぐす。準備万端、体調良好。
- 230 名前:導入投稿日:02/10/04 23:01
- >229
「巡査部長」
作戦開始の伝達に来た隊員の声に、優樹はもう一度振り向いた。
「ん? なにかな」
ヘルメットごしに見える顔は、随分と幼いものだった。優樹と変わらない上背のなさといい、
少年と呼んだほうが相応しいだろう。顔に覚えもなく、新人なのかもしれない。それにしては、
妙に場慣れした脈の音だった。
「巡査部長――今回の目標には、捕殺命令が出ています」
「……うん、わかってるよ」
「殺すのでしょうか」
「いや――捕縛する。殺すのは嫌いだよ」
「――そうですか」
「うん。時間だ、行くね」
優樹はいつもと変わらない足取りで、ビルの中に入っていった。
割れた自動ドアをまたぐ寸前、ぼんやりと形を成していなかった疑念が、明確な像を取る。
(そういえば、彼、私に怯えていなかったな……)
だが、喜んでいいはずのそれは、奇妙に暗く、優樹の胸に不安を残した。
- 231 名前:暗黒騎士ガウザー ◆vQsChIjITA 投稿日:02/10/04 23:01
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>228
真紅の粒が、物凄い勢いで迫って来る。
そう、黒岩自身が流し、ベルデに付着させた血の雫だ。
自らの腕を裂いたのも、全てはこのためだった。
「趣味が良くなくては、力を得る資格はないな」
両腕を封じられながらも、暗黒の騎士は仮面の奥で余裕の笑みを零した。
どう来るかさえ判れば、どうするべきかも自ずと答えは出る。
僅かに体を横にずらし、勢いを付けて体を回転させた。
遠心力が糸を通してベルデに伝わり、緑のボディが過剰に前進する。
緑の騎士が向かう先は、黒騎士がぶつかるはずだった窓ガラスだ。
- 232 名前:マンティコア投稿日:02/10/04 23:03
- 天色優/片倉優樹
>230
催涙ガスと撃音。来たのだ、追っ手が。マンティコアは身を竦めた。同時に、身体の
奥で昏い氷塊がのしかかるのを感じる。研究施設から逃げる際に負った傷は深く、十
人以上を“喰った”今でも完治には至っていない。脳幹に銃弾が埋まっているせいで
擬態が出来なくなっているのは何より痛かった。巧く人間に化けて逃げることもままな
らず、気がつけばこの様だ。追跡者はやってくる。疾く、違えず。逃れられはしない。
今の力では応戦すら難しいだろう。
死ぬ。
親指の爪を噛む。歯が震える。うまく噛みあわずに爪を切ってしまった。切れた爪を
苛立ちをぶつけるように剥ぎ取る。爪は半分ほども剥げて血を噴き出させた。舐める。
甘い。埃臭い階段の踊り場。牙を指に突き立て、さらに啜る。もっと味わっていたい。
人喰いの名を持つ少女は、生まれて初めて『死』を卑近に感じた。背筋が震え続けて
いる。甘い。もっと吸っていたい。
かつこつと、無造作に響く、階段を昇る足音。
背筋が強張り、身体が突っ張った拍子に掃除用具のロッカーに頭をぶつけた。派手
な音が右左上下問わず響き渡る。位置を知られた。やるしかない。ほとんど泣きながら
爪を引き伸ばす。骨も断つ十本のナイフ。奇を突いて一撃。それ以外にはないだろう。
足音はぴたりと止まった。こちらの意図をすべて見抜かれている気がした。
「こんばんは。私は日本国内閣総理大臣公認甲種指定生物、公認番号010018、
警視庁刑事部捜査第六課所属、片倉優樹巡査部長です」
――だが、聞こえてきたのは、マンティコアが想像したようなものではなかった。
- 233 名前:マンティコア投稿日:02/10/04 23:03
- >232
「貴方には日本国内閣府外局特異遺伝因子保持生物管理委員会から甲種指定生物
の嫌疑がかけられています。手元にはありませんが、同委員会が発した捕縛令状が
あります。並びにこの近辺で発生した行方不明及び昏倒事件に関する重要参考人
として、警察への出頭も求められています。私の指示に従っていただけることを期待
します」
少女のような、だがはっきりと強い意思を感じさせる声が、先のロッカーにもまして
狭い空間に響いて抜ける。
言葉のほとんどは、人間社会について知識のないマンティコアにはわからなかったが、
ひとつだけ理解しえたことを、縋るような声音で、確かめるように訊いた。
「……統和機構の追っ手ではないのか?」
返答は、言葉の意味すら掴みあぐねているような困惑で充分だった。
ひょっとすると、自分は助かるかも知れない。マンティコアはそう考えた。どうやらここ
を包囲しているのは公機関の人間らしい。彼らに捕えられれば、統和機構もそうは簡単
に自分を殺せなくなるだろう。その間に傷を癒し、擬態能力を取り戻せば――
一歩踏み出す。相手もその気配を感じたのか、一歩近寄ってくる。次の一歩。また次の。
一歩ごとに二歩分の距離が縮まる。そして、声の主が視界に入る。
白色の髪をもつ少女に、マンティコアは両手を挙げた。緩やかな笑みすら覚える。
「投降するわ。あなたの言うことに従いま――」
「片倉巡査部長」
ぎょっとした。白髪頭の後ろから、防護服に身を包んだ男が現れたからだ。
- 234 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:05
- 天色優/片倉優樹
>233
月の光も届かない闇の中で、その銀髪は一際輝いて見えた。片倉優樹。日本最初に
して最後、唯一のダブルブリッド。人と怪の混血児。
優樹は慌てているようだった。鼻息を荒げ、近寄っていくEAT隊員に言う。
「!? 赤川さんが突入命令を出したの? 今大事なところなんだから――」
「巡査部長に連絡です」
優樹の言を遮るように言い放つと、つかつかと歩み寄る。不満げな表情はしたものの、
優樹はとりあえずこちらの言うことを聞くつもりのようだ。その耳に手を添え、小声で
ぼそりと囁く。
「忘れろ。おまえはアレを“捕殺”した」
優樹がその言葉を反芻する間に、すべては終わった。
隊員は飛んだ。二十キロのウェイトを無いもののように十数段の階段を一跳躍で超え
ると、そのままレミントンM870をマンティコアの右足にきっかり二射。零距離から叩きこ
まれたスラグ弾が肉も骨も一緒くたに破壊する。マンティコアがあげた悲鳴は、再度左
足が挽肉に変えられる音にかき消された。両足が弾着の反動で空をきりきり舞う。人喰
いは耳を切り裂く絶叫とともに床を這いずり、それでも両手だけでなんとか逃げようとし
たが、隊員はそれに雑作も無く追いつくと、足で背を踏み付け、剣で突き刺すように
ショットガンを腕にめり込ませてトリガー。丁寧に両腕を吹き飛ばす。
ひゅーひゅーとマンティコアの喉が鳴っていた。隊員――合成人間ユージンは
ヘルメットを脱ぎ捨て、くぐもらない声で語る。冷え冷えとした、独り言めいた声だった。
「やってくれたなマンティコア。たとえ統和機構でも、ここまで事が大きくなっては
隠蔽も容易にはいかない。――だが、おまえはもう終わりだ」
レミントンの銃口が、体液でどろどろに汚れたマンティコアの顔を睨め回し、最後に
後頭部を捉える。そのまま、ユージンは銃爪を引いた。
- 235 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:10
- 天色優/片倉優樹
>230>232>233>234
例えるならば、梅雨が明けた次の日の。朝靄のような硝煙の中。
あたしの任務・・・捕縛対象は・・・むごたらしく、息絶えた。
一人の男が放った、それはもう世界の総てを否定するような銃撃で。
“かわいそう” そんな感情すら、既に湧いてこなかった。
目の前の生物だったモノの肉片は不条理さの代名詞、とでも言うのだろうか。
「君は――」
あたしは冷静だ。自分の置かれている状況はサイアク。目の前のEAT隊員に扮した男が
人ではない『何か』で・・・捕縛すべき対象がこの時点で、明確に変更になった事を
悟る位には。それでも、その先に言うべき言葉がナカナカ見付からない。
あたしが捕殺。この人は、確かにそう言った。うん・・・そうなのかもしれない。
この人が割って入り、跳躍してからの数秒間。独り動けなかったのは、このあたし。
化け物と恐れられ、煙たがられてる片倉優樹だ。
あたしを恐れないヒト。それはどうして・・・こんなに生命を疎かにするんだろう・・・!!
馬鹿みたいだ。自分が情けなくて、悲しい。
「すまないね・・・。・・・君が誰かは、知らない。知りたくもないよ。
それでも、一つだけ言わせて欲しい。もうあなたには・・・ヒトは、殺させない」
――勿論、自分のために。
トレッキングシューズが階段を蹴り。カンッ ていう乾いた音と共に、あたしの躰は闇を走る。
『神経融合』
交感神経を最大限に反応させた、常人には認知不能なあたしの極限速度で彼に接近する。
目的は彼の戦闘能力の減衰。
あの銃を掴み、捻じ曲げれば・・・きっと少しは早く、決着が付く筈だから。
- 236 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:12
- 天色優/片倉優樹
>235
折れて曲がるレミントン。手を弾く銃把。疾る灼熱。残る痛み。
きっと見据えてくる優樹。その頬をユージンは叩いた。防護服の凍えるような寒さと
硬さが骨を強打する。脳髄まで響く音。
ホルダーからナイフを抜き取る。
「殺させない――か。
それを『殺すためだけに』存在するぼくに言うのは、どうなんだろうね」
まだ少し眩暈に捕らわれている優樹をトン、と押して。
階段から突き落とす。
離れていく顔。伸ばされる手。その水鳥の羽先のような指が空をかすめ、そして落ちて
いくのを、無感動な瞳が眺めている。最後まで見届けることは無く、ユージンは踵を返し、
階段を駆け上がった。走りながらナイフを自らの喉元に突き刺し、一気に引き下ろす。
強靭な防護服が、インターゲーン・ナイフの前に紙屑同然に解体されていく。
「大人しく手を引け。すべて見なかったことにして、言ったとおり報告すれば
何もかも円く収まる。だが、おまえが飽くまで意地を通すつもりならば――」
このまま逃げ切れるとは、ユージンも思っていなかった。ただ、優樹が言葉に屈したり、
躊躇うことがあれば逃げることは充分可能だし、追撃してくるとしても、上を取れること
は格段に有利といえる。――殺人には。
そう――
「――ぼくはおまえを、殺さなくてはならない」
もう殺し合いは、始まっている。
- 237 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:16
- 天色優/片倉優樹
>236
『殺すためのソンザイ』
そんな言葉をあたしの耳は聞いたような気がする。
・・・ダメだ、頭部の鮮痛は痛覚遮断が追いつかない。
落 下 --------。落下っていうのは。落下って言うのは、意外と心地いいものだ。
それでも、あたしは鳥じゃないから。
だから、快楽の等価の代償として苦痛も漏れなく味わえる。生きてる限り、当然に。
生きてる、限り。
「…丸く治める、か。それはどうも」
こきこき。
首、肩。指。足首。その他の間接をくるくる回しながら、あたしは憂鬱なコンクリート
の床から立ち上がる。
軽く息をリズムに乗せてはき、心身のバランスを整えながら。
あの程度の衝撃は日常茶飯事・・・っていうのは我ながら大げさだけど。
身体を宙で捻り、受身を取ったので、落下によるダメージ自体は余り大きくない。
即座に彼の後を追うように、階段を跳ね上る。
「君がここで黙って投降してくれたら。・・・それはそれで丸く収まる気がするね、うん。
EATのみんなは無能じゃないから、君がこのビルから逃げきるなんて、果たして出来るだろうか」
ハッタリなのはわかってる。
それでも、こんなビルの上だったら幾ら彼でも脱出は非常に困難なのは間違いない。
焦らし、自らの有利な展開に持ち込む。これは、仲間内では非力なあたしの常套手段だ。
- 238 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:22
- 天色優/片倉優樹
>237
どうにも――こうにも。
ユージンは立ち止まり、ナイフを爪先まで通す。防護服の最後。刻まれてばらける。
ナイフはしまっておいた。何に使うとも知れない。そうとも、片倉優樹を殺すのだ。殺す。
冷たい痺れを握り潰した。震えているわけじゃない。これは違うものだ。奥歯を噛む。
いつもどおりだ。
結局、殺すしかない。
偽善だ。
殺人しか行えない自分が、殺人を拒んでいる。
「ならば、もう、容赦はしない」
そう、口に出しただけで。
身体の奥、熱い部分が唸りをあげる。激しく猛る血流のプレリュード。拍数が自然に
跳ね上がる。痛いほど響く腱の軋み。しんと静かに張り詰めながら、体内で何もかも
破壊する螺子が切り切り舞う。荒ぶる奔流の渦。どうしようもなく昂揚する。
殺すためだけにある存在は。
殺すときのみに喜悦を覚える。
身体機能の全てを解放する歓び。むせ返るほど息を吸い込み、それをすべて燃焼
させる快楽。ユージンは自覚した。自分は片倉優樹を殺すことを望んでいないが、躰
は、初めて全力をもって当たらねばならない獲物に興奮している――
床を蹴った。
消火器を掴み上げ、手摺の隙間を縫って投げつける。追って昇ってきた優樹の目前
に流星のような激突を見せた消火器が、粉々に弾けて消化剤を噴霧した。一瞬で、
三十cm先も見通せない白濁が展開される。ユージンは華奢な片腕でロッカーを持ち上
げると、階段を駆け下り、優樹がいた場所に放り投げる。そして自らも追うように飛んだ。
- 239 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:25
- 天色優/片倉優樹
>238
あたしの問いかけを、半ば無視するように…彼は死刑宣告をとうとうと詠み上げた。
『容赦はしない』・・・なんてね。ヨウシャハシナイ。何度言われても嬉しいセリフじゃない。
と、規則正しいテンポを刻むあたしの靴音が乱れる。
手垢や誇りで鈍い光沢の手すりの隙間から、駆けるあたしを出迎えたのは
濁り酒のような混濁した白い世界だった。
消化剤!!大量に吸い込んでしまい、あたしは思わずむせ返る。
これは罠、囮だ。より強力な攻撃の前に行う、即興の陽動。
それは分かっている。でも、正常さを失っている世界では即座に正常な思考が働かない。
――集中しろ、優樹!!!
今日、二度目の神経融合。きりきりと神経節が反り返るような痛みを覚えるけど仕方ない。
- 240 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:28
- 天色優/片倉優樹
>239 続き
----------0.006秒後。
揺らぐ視界の向こうに、あたしよりも大きなサイズの影が映る。
直方体のそれはすぐに、六課にもあるような普通のロッカーだと認識できる。
----------0.08秒後。
消化剤を総て肺腑に吸引するような気合で、あたしは裂帛の気合を込める。
神経のパルス、血流。総てをあたしの右腕に集中させるように。
----------0.1秒後。
身を屈め・・・迫り来るスチール製の直方体にあたしは足をかける。
ここを足場に上の段へ跳躍・・・なんて。上手くいけば出来すぎな想像だった。
そこであたしは、自らの影と誤認するような位置に鋭く潜む彼をはじめて認識する。
「!!!!!!」
-------1秒後。
宙では当然、身を翻すのにも限界があって。
なりふり構わず、山形に撓った状態で腕を、ロッカーの側面に潜む彼へと、突き出した。
- 241 名前:仮面ライダーベルデ(M) ◆McVERDE6nY 投稿日:02/10/04 23:28
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>231
(―――野郎ッ!)
仮面の奥でギリ、と歯噛みする。
さっきの血は自分の姿を浮かび上がらせる為の物だったか。
見抜けなかった屈辱を反省する間も無く、全身に衝撃が走る。
直後、体は硝子に叩き付けられ宙を舞う―――
「チッ、バイオグリーザッ!」
カメレオンの舌がベルデの足を捉える。
落下に使われる筈だったエネルギーが、今度は壁へと叩き付ける力に変化した。
即座にヨーヨーを全力で引き、騎士を同じく宙へと引きずり出す。
ぱ、と舌がベルデの体を放す。
(やってくれたな。このまま楽になんて死なせねぇ)
壁面に突進しつつカードを一瞬で抜き、叩き入れる。
『ファイナルベント』
バイオグリーザが鏡から飛び出し、屋上に跳躍。
アンテナに舌を引っ掛け、更に下へ伸ばす。
落下する騎士にタイミングを合わせ、まず一回壁面を軽く蹴る。
今だ。
- 242 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:29
- 天色優/片倉優樹
>239-240
拳の速度は、尋常なものではなかった。少なくとも、人間が避けられるものではない。
だが、それは所詮不安定な姿勢で不安定なまま繰り出された――素人紛いの攻撃。
合成人間ユージンの酷く冷徹な視線が、じっと観察を続ける。
真っ直ぐ伸ばされる手。
これを避けるには、簡単だ。動けばいい。だが、どうやって動く? 宙にあるという条件
は同じだ。つまり、動きようがない。空中でも身体は動く。だが身体の位置は変わらない。
どこか哲学じみている。笑う。
じゃあ、動くか。
ロッカーを殴りつける。べっこりとへこんだ直方体が素っ飛んでいく隣、その反動で
ユージンは頭ひとつ分動く。
それだけで、片倉優樹の拳は回避できる。
下手な攻撃が命取りだとばかりに、蛇のような貫手が柔く見える喉に疾る。
- 243 名前:仮面ライダーベルデ(M) ◆McVERDE6nY 投稿日:02/10/04 23:33
- >241続き
「ハァッ!」
裂帛の気合と共に壁を両足で蹴り、地表に背を向ける形で跳ぶ。
逆さになったベルデを何処までも伸びる舌が捕まえて軌道を修正。
振り子運動で、黒騎士を捕獲する。
舌が脚を離し、凄まじい勢いがついた二人の体は空中で姿勢を何度も入れ替える。
最後には騎士を逆さに固定した形で拘束。
もう、逃れられない。
「落ちろバケモノォッ!!」
むしろ、地表が近づいてきているのでは無いだろうか。
そう錯覚させる程の速度で、二人は落下していった。
- 244 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:33
- 天色優/片倉優樹
>242
・・・殆ど等速直線運動を続ける世界の行方は、まだ・・・あたしも知らない。
自ら繰り出した腕を、目で追う。 ───彼は、比較的、無表情。
歪む、ロッカー。 ──────彼を求める腕は、すかっと宙を切り。
──────後悔の念。 ───残酷な力学。───流れる世界で・・・
─── 手、手。手。 ─── 肉の芽状に隆起する、右肩。
赤。──────
っっっ・・・!!!!!!
ざく。がん。がらがらがら。どさっ。
「くわぁあああああっっっっ」
神経融合を繰り返したあたしの身体は、すでに痛覚遮断を困難にしていて。
彼に一瞬のうちに抉られた、胸から右肩にかけての痛みは全身を苛む。
夏でも湿気を十分に含んだコンクリートを朱に染め、あたしは一瞬だけ倒れこんだ。
・・・彼の気配を感じ、あたしはなんとか立ち上がる。全身の意思を足へと集中させる心持で。
「・・・いくよ」
血管から吹き出たあたしの血液は、これからの見るに耐えない惨状を暗示するように、階段をヴェール状に
覆い尽くした。「マトモな日常」に言い訳するような緋色のヴェール。
そう。あたしは自らの血液を操り、霧状に放射したんだ。
・・・突貫。
長期戦は、元々得意じゃない。
力に張り詰めた左腕を、血濡れの世界に居る彼へと必死にくりだそう。
次に一度彼を掴んだら。もう一度掴む自信なんて、あたしには・・・ない。
- 245 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:35
- 天色優/片倉優樹
>244
「なるほど……自分の血で、視界を奪うか」
一面が朱に染まる。濡れた暗い、緋の空間。血で作った幕というのは秀逸だろう。
鉄の生臭みが体臭すら覆い隠す。
視界を奪ったのなら、次は奇襲しかない。
ナイフを引き抜いて、だらりと下げる。
前後左右――これだけ視界が悪ければ、目の位置は関係なくなる。30cm、これ以
上は合成人間の視力をもってしても見通せやしない。
……逆に言えば、その圏内にさえ入ってくれば、攻撃だとわかる。
――――ひ
幽かな音に反応して、ユージンはナイフを突き出した。
相手の手は、とっくに避けられる位置には無い。
ぃっ……
掌圧で逆巻く音が、遅れてついてくる。耳にキンと響く。
寸瞬速かった優樹の手がユージンを掴み、それで狙いのずれた切っ先が優樹の胸
元、肩甲骨をぎりぎり掠める程度に刺さり、それで体勢の崩れた優樹がユージンを下
敷くように倒れこむ。
押し倒されながら、ユージンはナイフを動かす。筋を骨沿いに解体する鈍い快楽。
空気中の血が目に入り、零れて耳に伝っていくのだが、瞬きひとつをする気になれな
い。
血の涙を流しているようで、それが気に入ったのかもしれない。
- 246 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:38
- 天色優/片倉優樹
>245
半径数メートルの、ぬくもりの世界。そこは・・・母親の胎内に居るみたいな、ふしぎな環境。
繰り出したあたしの「手」と彼の「腕」。
もう、無機物である事すら忘れられた様な、抜き身の切っ先。
あたしたちは、狭い世界で繋がっていた。
しかし彼は、あたしの捕縛対象。あたしは、彼の殺害対象。
純粋に生きることにもがきあって、そして、元の「世界」へ戻れるのはきっと、一人。
「くっ・・・あああああ・・・はぁ・・・ああああああ」
痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。
痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。
神経伝導の9割を「苦痛」が、駆け抜ける。
・・・「行為」っていうモノ。
あたしは、知らないけれど。そういうイメージなのかもしれない。
身を削られて、苦しんで、温もりがあって・・・ああ・・・。
相手がいて、心拍数が高くて、絶望的で、閉鎖的で、相手の恍惚が見えて。闇の中で。
不自由にぷらぷらしてる右腕を開いては閉じ、開いては。
収まりが悪くて、彼の服の襟元をぎゅっと握って。
・・・ただ、コンクリートは相変わらず、冷ややかだったけど。
- 247 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:41
- 天色優/片倉優樹
>246 続き
・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!
コロスノハ、イヤ。 デモ、アタシノナカニシンニュウシテクルテキ。
シヌノモイヤ。 ナラ、アタシハ・・・。
あたしは。
雫が頬を伝い落ち。暴走した神経伝導が右手を大きく腫れさせて・・・
年下にしか見えない、中性的なその頭部を壊滅的な握力で押さえ込んだ。
血に濡れて狂気に満ちた、でも、純粋な彼の目。きっと、その目を見るのが恐ろしかったから。
- 248 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:44
- 天色優/片倉優樹
>246-247
骨が軋む音が、耳すら介さずダイレクトに脳に響くのは――何度味わっても、
気持ち、悪い。そう思える。
人間らしさ。合成人間には不要な感情。でも、確かにこのぼくの中にも――
それは、ある。間違いなく。
朱くない涙が、彼女のおとがいから落ちて、唇の端をかすめる。塩の匂い。
痛い。
ナイフを捻る。
傷に最後の深みを与えて、血濡れの刀身が抜け落ちる。
手からナイフが抜け落ちて、床に当たり、からん、と音をたてた。
拍、心臓が鳴る。気の緩む間。
ユージンの足が閃いた。靴底が優樹の腹を捉えると、彼女の身体が爆発にで
も晒されたように浮く。
そこから先はまさに電光。身体を反らせた反動を脚に伝えると、アキレスを切
りかねない力を込めて身を起こす。罅割れた頭蓋に激痛が走る。高速起立に
視界がブラックアウト。脳が骨の罅型に潰れている気がする。目を閉じ、開ける。
世界が墨で塗り潰されている。優樹はまだ宙。肩から毀れる血が、どろりと赤く。
鮮烈な貫手が、その赤を突き刺す。
瞬時、リキッド。肌から噴く紫の毒が、彼女の中を冷ややかに焼いていく手応え。
他人事のように速い。
――はは、殺った。
速すぎて笑えた。
彼女の涙がまだこびりつく唇が歪む。終わった。これで。
- 249 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:47
- 天色優/片倉優樹
>248
今日、何度目ともつかない落下。
・・・右腕の末端組織が鬱々と痛む。彼に飛ばされた時の一瞬の攻撃。
自分の中に、うごめく「何か」が揺ら揺らと入り込み、あたしの身体を這いまわった。
痙攣する全身。本能レベルで刷り込まれた「進入」への忌避。
その本能が「進入」に対して・・・自分の肉体を見捨てる事を選択させた。
血のめぐりを全て末端組織で留めて、そこで噴射。
その血液が噴き出るのとほぼ時、同じくあたしの感覚は消え失せていた。
少し、嫌だったけど、首を80度横にずらして、自分の身体の現状を眺めてみる。
ああ。はは・・・無いものが痛むなんて、なんて、不可思議だろう。
自分の肉と血と。色々な分泌液のカクテルの中にあたしの首と、下半身が浮んでいた。
あたしに「手」があったなんていう事実は、歪んだ顔。口元で笑いを堪えるような
表情の彼の顔に残る、あたしの手形だけ。
彼は・・・あたしを傷つけて楽しいのだろうか。
世界は、本当はこんなにも赤く爛れた場所ではないのに-----------------。
「心臓を取り出されても死ななかった因果なあたしの身体は、こんなモノじゃ
死ねないんだよ・・・」
血の海で只管輝く、彼が使った緋色のナイフ。それを口に咥え・・・左足をブースト。
無茶な力の過負荷に筋組織を撒き散らしながら、あたしは、彼の腹部。
一件たおやかで、割れてもおらず無防備に見える彼の腹部へとナイフを口から射出して。
ブーストにより限界値までバネを貼った下半身の力を膝に乗せ、喉下へと・・・・・膝蹴り。
体勢を崩す彼を視界の隅に入れながら、あたしは虚ろと正気の狭間を彷徨っていた。
人の善悪に興味は無いけれど・・・望まぬ戦いを作り出す社会の善悪を少しだけ呪いながら。
- 250 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:51
- 天色優/片倉優樹
>249
ひどく、胸が痛んで。
その痛みに終わりを知る。
ほら、終わった。
ぼくの負けでも――それは違いない。
気を弛ませた一瞬に、何もかもは決着していた。ユージンは嘲り嗤うと唇を舐めた。
乾いた音。何を嘲ったのかは、知らない。
腹からナイフが落ちる。優樹と自身の血で生々しくてかる刀身が、奇矯に綺麗で、
心得ず泣きたくなった。自分はあの色を知っている。
激突で少し罅割れた壁に寄りかかり、もう一度傷を確かめる。
放っておいても死なない。だが、動けば死ぬかもしれない。
なんとも絶妙に痛めつけてくれたものだ。
「……つくづく嫌になるよ。これで死なない君にも――これで死なないぼくにも」
片倉優樹は両手を無くし、両脚からは血を噴き出し、折に刻まれる痙攣に震える。
今なら殺せるんだろうか。無論、身体が動けば、という条件付で。
否、とユージンは目を細めた。
無理だろう。
何故なら、殺す理由がない。統和機構からはそんな命令は受けていない。
最初から――私的な闘争だったのだ。それになんだかんだと理由をこじつけて、彼
女と戦うことを正当化していた。
そうすれば、丸く収まるから。
嫌っているつもりで、殺したいだけだ。
少なくとも、任務だと割り切って、誰かを殺していれば――その間は、ぼくは『合成
人間ユージン』だ。『天色優』じゃない。
それに縋って、逃げていただけだ。
- 251 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:51
- >250
だから、あの笑みは、ぼくのものだ。
「――友達がね、死んだんですよ」
独白する。告解に近かったかもしれない。片倉優樹は聞いているかどうかも判らな
い。沈黙。聞いていると仮定して、ユージンは続ける。
「何故闘ったのか、聞きたそうだったから。――大事な仲間だったんです。命令以外
はからっぽだったぼくを、仲間だと言ってくれました。人形でさえいればよかったぼく
に、人間らしさを与えてしまった彼等を、ぼくはこの上無く憎んで――その何倍も好き
だった。
けど、守れなかった。死んだんです。たぶん、みんな。
そして、ぼくばかり生き残っている」
酸素不足が幻覚を見せている。意識が掴み所なく拡散して暴走している。
潰れた喉が未練がましく声を出しつづける。
「またできたからっぽを――埋めたかった。苦しかったから。
命令に従っていれば……頭が真っ白になるぐらい、命令に従っていれば、何も感じ
ずに済むから――
捜査六課の片倉優樹なら、埋めてくれるだろうと思ったから」
戯言のように繰り返して。
それが理由だと、小声で付け加えて、ユージンは宙を仰いだ。
- 252 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:52
- 天色優/片倉優樹
>250>251
「君はあたしを襲った。そんな理由でね・・・。それはきっと、君が人間だから・・・。
悩み、傷つき、矛盾を憶え・・・迷い、戦う。それは十分人間の行動じゃないか」
そう言って、一息つく。
何故だろう・・・。
あたしは泣いていた。・・・顔中、体中。血か、涙かわからない液体でぐちゃぐちゃだ。
彼の話が途切れた矢先。自分の中の自分じゃない存在が暴れ始めている。
神経系の制御は、度重なるブーストと痛覚遮断の影響で行えず、あたしの口は勝手に嗚咽を
ひねり出し、瞳は溢れる液体に霞んでた。
- 253 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/04 23:55
- 天色優/片倉優樹
>252 続き
はらはらと流れ逝く雫。赤い世界で、唯一透き通っている液体。
泣くたびに、あたしは数少ない、子供の頃の楽しい思い出が浮んでくる。
眠れない夜、母に読み聞かせてもらった童話集のあらすじ。
小さな女の子が、雪の国へと連れ去られた友達を助けようと・・・必死になって努力して。
・・・凍りついた彼の心を現へと取り戻したのは、なんだったろうか。
・・・そう、彼自身のナミダ。彼女の献身。
――でも、あたしはアヤカシで。人の社会では異端児で。彼もきっと・・・。
そんなあたしに、そんな彼は・・・何を望むのだろう。
甘えるんじゃ、ない。
君が自分の弱い心に従って好き勝手にしても、真実のパズルは完成しませんよ。
君には誇りがないんですか・・・もっと・・・自分を信じて生きなさい。
・・・応援くらいならしますよ。それだけで、君が明日を平穏に生きれるのなら」
ありえない。
人と触れ合うのは嫌なのに、彼に手をさし伸ばしたい気分だった。
・・・もっとも、その腕は既にあたしの自由にはならない状態だったけど。
一件、高校生位にしか見えない二人が、闇と血の交錯する世界で上下対照に仰向けに寝転んでて。
それを芝生の上で授業をサボって日向ぼっこしてるカップルみたいだな、なんて考えている自分。
やっぱり、ありえないや。
でも、その手を本気で掴む人、実際にさし伸ばす人なんて居ないんだよ。
あたしは偽善者で・・・無責任で、・・・人に縋ろうとする彼に多分、少し嫉妬しているから・・・
- 254 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:57
- 天色優/片倉優樹
>253
懐かしい声を、聞いた。
はっとして、手を伸ばしても、もう届かない――
濡れた手を、目の前に翳した。掌紋の支流から、太い筋へと朱が伝い、手首へと滴って
毀れていく。赤い。
くつくつと喉の奥が震える。激痛で身を捩じらせながら、緩やかに眠りかけている。傷を
受けた体が冬眠モードに入ろうとしている。莫迦にされているのも同じだ。この女は、片倉
優樹は、結局のところ何も解っちゃいない。
解っていない、くせに――
その言葉に、あの日の五人が――
「くくく……ああ、はは、ちくしょう。くくく――ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。はは、ちくしょう。
ああははは。ちくしょう、はは。ちくしょう――ちくしょう」
やりなおせというのか。ぼくに。もうみんなはいないのに。立てと。縋らずに立って見せろ
と。
その残酷さに、涙が出るほど笑えて、ユージンは静かに震える。
ずっと考えていた、考えた末に苦しくなって放棄した、あの事件で自分が生き残った意味
を、もう一度考える。
逃げずに、見据えたい。今更ながらそう思う。
みんながそう願っていることを――片倉優樹は、思い出させてくれた気がするから。
- 255 名前:暗黒騎士ガウザー ◆vQsChIjITA 投稿日:02/10/04 23:57
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>226
轟!
緑の颶風が、眼の前で膨らんで来る。
勢いを付け、凄まじい勢いでベルデが迫る、迫る、迫る。
あのカメレオンの舌が、遠心力からそのスピードを弾き出したのか。
驚嘆に値する速度で接近する緑の騎士の動きを、ガウザーはその眼でしっかと捕捉した。
遅すぎても、速すぎてもダメだ。
それだけで凶器になりうる速度を前に、矛盾した表現だが必死に冷静な思考を作った。
そして、接触する寸前、刹那の中の更なる刹那。
「むん!」
ひと声。
剣が、投げられた。
- 256 名前:暗黒騎士ガウザー ◆vQsChIjITA 投稿日:02/10/04 23:57
- >255
その剣は―――――緑の騎士をかすめる事もなく、飛んで行く。
当然だ。
剣が狙うのは緑の騎士でなく、その奥にあるカメレオンの舌。
緑の騎士と黒騎士が衝突するのと、カメレオンの舌が断たれるのは一瞬だった。
ほんのわずか、衝突するタイミングがずれた。
そう、それはあまりにほんのわずかで、2人の体は宙に投げ出される。
風が轟々と耳元で騒ぐ。五月蝿い。
もっとも、これを聞いていられるのもほんの一瞬だろう。
そう、一瞬で俺は、こいつを仕留められる。
わずかなタイミングのズレは、技のかかりもわずかに緩めていたのだ。
大気の産む騒音を聞きながら、ガウザーは片足を拘束から、無理矢理剥がそうとする。
あと少し、あと少し。
重力の制裁を受けるのも、この足が解放されるのもあと少し。
果たして、どちらが先になる!
- 257 名前:天色優 ◆DWSTiGMaE. 投稿日:02/10/04 23:58
- >254
――その視界の隅、ガラス越しに見える、向かいのビル屋上。
そこに、スーツの女が見えた。
(あ、あれは――!?)
それに気付くと、ユージンは顔を青褪めさせて、バネ仕掛けのように飛び起きた。傷の
具合などまるで省みず、一身に手を伸ばして、それを片倉優樹に届かせようとする。
(く、くそっ、間に合え――)
間に合わせなければならなかった。
それが、彼の仲間との絆だった。
それこそが、きっと、みんなが望む、自分が生き残った意味だと――
手の先が、トン、と優樹を押し――
拳銃弾が、トン、とガラスを叩き――
――そして、全てが爆発した。
- 258 名前:リセット ◆5tResetVwE 投稿日:02/10/05 00:00
- 天色優/片倉優樹
>257
半分以上が吹っ飛んだオフィスビルを眺めながら、リセットは屋上で、拳銃を手に
文句を言っていた。
「所詮は、反逆者でしかなかった――といったところね。
壊れたものは、二度と正常には戻らない。それは統和機構が一番よく知っている
でしょうに……」
たった一発の拳銃弾でその破壊を起こした女は、そこまで響く轟音を気にした風も
なく、どこへともなく拳銃を仕舞う。
彼女にとっては、合成人間ユージンが何を思ったのかということも、中枢の思惑も
関心の外にあり、ただ任務をこなす事だけが大事なのだ。
踵を返そうとして、ふとリセットの足が止まる。あの爆発で、片倉優樹が生き残れる
とは思わない。狙撃という事で、彼女に問い掛けることが出来なかったのは、リセット
の心残りだった。
(唯一のダブルブリッドである片倉優樹は、死ぬときに、悔しさと絶望の、どちらを選
ぶのか――)
それを知ることが出来なかったのが、残念といえば残念だったろう。
だが、もし――もし、あの爆風のなかで、片倉優樹が死ぬ事もなく、そして絶望では
なく、悔しさを選んだのだとしたら――
「……彼女は、統和機構に牙を剥くのかしら?」
それも、リセットにはどうでもいいことだった。
今度こそ、彼女は振り向くことなく去っていく。かつかつと足音が響き、やがてそれも
聞こえなくなった。
- 259 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/05 00:02
- 天色優/片倉優樹
>257>258
彼は死んだ。何者かは知らないけれど・・・誰かの破壊で。あたしを助けながら。
勝ちとか負けとか。勝負で生死の価値基準を判断するのなら、あたしは何時も敗者でいい・・・
いつだって・・・敗者でいたいのに。
彼は死に、あたしは生きている。この違いは何処にあると言うのかな?
夜は何処までも昏いから、あたしは物事を見失いそうになる。
彼は責任を果たした。この惨事の代償として・・・あたしなんかの言う事をまじめに聞いて。
人に縋り生きる事は「甘え」とか「弱さ」じゃない・・・らしい。
あたしは友人に支えられている自分が居て、支えているつもりの自分がいて。
彼は、それを失っていた。だから・・・・・・・・・・・・だから?
そう言えば、懐に焼酎のボトルがあったっけ。
瓦礫の作るオブジェの中、あたしは身を捩ってボトルを床に置き、一気にラッパ呑み。
犬のように身体をブルブル揺すると、鱗のように全身を覆うコンクリートがかたかた音を立てた。
――――痛かったね・・・本当に
――辛かったね。きっと
―・・・
背中に残る、ツメタイ彼の体温はあたしに何を問い掛けるのだろうか。
笑顔も泣き顔も・・・。あたしは、どうしたらいいのかな・・・?
流しすぎた血液が眼窩に滴り、開かない右目の逆の目を床に落とす。
雲が開け、世界は再び日常に戻る。轟き始めるEATの進行音。
・・・足元。
気紛れな月が照らした足元の彼のカオは、確かに微笑んでくれていた。
片倉優樹を間違いじゃないと信じた彼は、確かに居た。
・・・だから、彼の心を守る為にもあしたを生きよう。ひたすらに―― (Fin.
- 260 名前:暗黒騎士ガウザー ◆vQsChIjITA 投稿日:02/10/05 00:18
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>256
足が何もない空間に放り出されて、一瞬不安になる。
これは解放された証拠だ。落ち着けガウザー……いや、黒岩省吾。
自分に言い聞かせ、その踵を思いっきり後へと逸らす。
届くか……隣のビルの壁に!
硬い感触が、次は安堵を伝えた。
よし・・・!
渾身の力を振るい、踵で壁を蹴りつけた。
コンクリートの穴が穿たれ、破片が地表に散らばる程の蹴り。
その反動が、高見沢の体を高見沢自身のビルに叩き付けた。
衝撃が伝わったのか、ベルデの拘束が解放されていく。
その瞬間、世界全体にスローモーションがかかったように、黒岩は感じた。
ゆっくりと、緑の騎士は暗黒騎士を解放し。
ゆっくりと、暗黒騎士はビルを蹴って態勢を立て直し。
ゆっくりと、緑の騎士は地表へと落ち。
ゆっくりと、暗黒騎士は遅れて落ちて来た剣を掴み。
斬。
地面に落ちる前に物が断たれる音が響き、スローモーションは解除された。
- 261 名前:片倉 優樹 ◆UQY.K.lIyA 投稿日:02/10/05 00:20
- 天色優/片倉優樹 レス番纏め。
>229>230>232>233>234>235>236>237>238>239>240>242>244>245>246>247
>248>250>251>252>253>254>257>258>259
…(天井を見上げ、物思いにふける。時々思い出したように酒を飲む)
感想なんかもしあったら
ttp://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=029002304&ls=50
こちらにでも書き込んでくださいよ。
- 262 名前:仮面ライダーベルデ(M) ◆McVERDE6nY 投稿日:02/10/05 00:32
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾
>260
「――――あ?」
間抜けな声だ、と自分でも思った。
「おいこら、テメェ、ちょっ、と、待、」
全身の感覚が無い。
痛い? 熱い? 寒い?
やけに視界が暗い。今は何時だ。此処は何処だ?
「お、れは――力を―――」
手を空に向かって伸ばす。
何も握れない。
視界は真っ暗な状態から、段々紅色に染まっていく。
誰だ、死ぬ時に闇に呑み込まれるとか言ったのは。
嘘吐きは何処にでも居るものだな、と。
そんな場違いな事を感じながら、ずれる自分の体を認識する間も無く。
彼の意識は、消えうせた。
(高見沢逸郎:死亡)
- 263 名前:暗黒騎士ガウザー ◆vQsChIjITA 投稿日:02/10/05 00:48
- 高見沢逸郎vs黒岩省吾 エピローグ
>256
雨が降りしきる中、倒れた高見沢の体を静かに見下ろす者があった。
言うまでもなく、東京都知事・黒岩省吾である。
全身を濡らしながら、黒岩はしばらく高見沢の死骸を見つめていた。
「何のために力を使うべきか、それがわからぬ者に、力は与えられんよ」
黒岩はもう物言わぬ、力を求めた男にそう言い残した。
髪から雨の雫を零して背を向けると、心の中で付け加えた。
もっとも、俺もそれがわかっているとは言いがたいがな……と。
- 264 名前:レッドアリーマー ◆99Arremerg 投稿日:02/10/05 00:53
- レッドアリーマーvsレイオット・スタインバーグ 〜導入〜
今は逢魔ヶ刻―――黄昏を過ぎ、世界が夜の闇に包まれんとする刻限。
ニ匹の異形が、閑散たる廃墟にいた。
片や直立する、影。
筋骨逞しい紅の巨躯に獣の爪と牙、そして蝙蝠の羽を備えたその異質な姿。
それは正に、ヒトが思い描く悪魔そのものであった。
片や『悪魔』の眼前に崩折れているのは、無様な異形―――否、肉塊。
辺りに散乱する消し炭は、失われた四肢の成れの果てか。
そして、肉塊の頭部から胴体にかけて穿たれた大穴。
それらの傷は、紛れもなく致命傷であった。
不釣合いに小さく醜い顔も、今は弱々しい苦悶の声を漏らすのみ。
それは魔族――――魔に溺れた者、偽りの眷属。
永い時の果て、闇の住人の二つ名は人間共の蔑称へと変じた。
その事実を、真の悪魔は赦さない。
「…屑が」
爪に纏わり着く血と脳症を振り落として、悪魔―――レッドアリーマーは吐き捨てる。
悪魔の鋭い鉤爪が、偽者の頭部を抉り、引き裂く。
一際高い断末魔の奇声が上がり、肉塊は蠢くのを止めた。
他愛ない、脆弱な相手だった。
魔力の相殺―――偽りの魔族が持ちえていた力を、元来の悪魔が持たぬ道理はない。
その存在を魔力のみに頼った相手は実に脆く、弱い。
己の骨肉持つ腕を以って、臓腑を抉り、潰す。碌な心を持たぬ筈の魔族から、漏れ出る恐怖。
虫の様にもがき苦しみ、赤子の様に泣き喚く相手。
抵抗のつもりか、魔族が力を展開させた時にはもう遅い。
破壊の炎を吐き放ち、歪んだ躯を打ち砕いた。
- 265 名前:レッドアリーマー ◆99Arremerg 投稿日:02/10/05 00:55
- >264続き
実に下らない戦いだった。
偽りの眷族を滅ぼし、怒りと蔑みの感情のまま飛び去らんとするその時。
―――――奴が、いた。
鎧を身に纏う、一人の戦士との邂逅。
それは――――運命とでも言うべきものなのか。
「そうか…」
甦るは、憎悪。
古の記憶が、倒せと叫ぶ。
同胞達の―――魔界に生き、そして滅ぼされた者達の怨念が、殺せと命じる。
「生きていたか…!」
湧き上がる、歓喜。
復讐心とも言い換えられる、黒い悦び。
待ち望んだ仇敵との再会に、口元を歪ませ、浮かべるは邪笑。
それは見る者を凍りつかせる、正に悪魔の笑み。
悪魔は嗤う。
憎悪の炎に身を焦がし、歓喜の悦楽に体を震わせ。
悪魔は襲う。
獣の如く身を屈め、地を駆ける。
跳躍し、間合いを詰める。刃に等しい、右手の爪を突き出して。
全ては復讐の為に。
全ては待ち望んでいた、戦いの為だけに。
- 266 名前:レイオット・スタインバーグ ◆LOSJACkEtA 投稿日:02/10/05 00:57
- >265 レッドアリーマーvsレイオット・スタインバーグ
「――――!?」
―――唐突に、それは視界に飛び込んできた。
それが一体何であるのかを認識する間すらなく。
黒い全身鎧……<スフォルテンド>と銘の刻まれたタクティカル・モールドにその身を包み
込んだレイオットは、携えていたボルトアクション式ライフル―――ウェルザーMkIVカスタム
を咆吼させていた。
ごく近距離で炸裂した弾丸は、違わずその紅い影に吸い込まれるかと思われた。
だが―――強力なマグナム・ライフル弾は本来の対象を捉えること叶わず、ただ大地に
深々と弾痕を刻み込むに止まる。
木霊する銃声は、そんな彼を嘲笑うかのように響き……銃弾が回避されたことを理解した
彼は、半ば転がるようにその場から離れていた。
「――今のは?」
起きあがり―――同時に、背中のマウントに保持されている長大な機械に手を伸ばす。
一見、機関銃と電動鋸の合いの子のようにも見えるそれは、スタッフと呼ばれる魔力の収
束、増幅を行うための魔法装置だ。
地面に降ろすように、右腕にスタッフを。
そして左腕には次弾を装填したライフルを構えて、どこか倦怠的な雰囲気を浮かべながら
も、彼は注意深く周囲を伺っていた。
空は既に暗く―――
太陽を駆逐した夜が、その裡に白銀の月を浮かび上がらせる。陽光に取って代わり世界
を埋める冷たい輝きは、黙したまま控える戦術魔法士をも照らしていた。
- 267 名前:レイオット・スタインバーグ ◆LOSJACkEtA 投稿日:02/10/05 00:57
- (>266 続き)
―――が。
影が……レイオットを覆い尽くす。反射的に見上げた空は雲ひとつ無く。街灯すらもない
この場所にあっては、通常であれは視認することもない小さな星々までが、数多のきらめき
を放っている。―――月は、変わらず空にある。
しかし……レイオットの意識は、そのどれに対しても向けられてはいなかった。
見上げる空。
見下ろす月。
そのふたつを隔てるように、巨大な翼をわずかに羽ばたかせ、それは無言で宙にある。
背に月光を受け浮かぶその姿は、人のようにも見えた。だが、翼持つ人間などはいない。
闇の中にあっても爛々と、ぬめりを帯びた輝きを放つ双眸は、まっすぐにこちらに向けられ
ている。
そこに、暗い喜びを感じ取ったのは……果たして、レイオットの気のせいだったのか。
「……悪、魔?」
一体、それがなんなのか理解出来なかったので―――
レイオットは、ただ思った通りを口にした。
- 268 名前:バイオグリーザ(M) ◆McVERDE6nY 投稿日:02/10/05 00:58
- 契約を失った高見沢の死体を、舌で巻き取り鏡の中に引っ張り込む。
入れ替わるようにして、はらり、と鏡の中から一枚の紙(レス番纏め)が落ちる。
高見沢逸郎vs黒岩省吾
>102>103>105>107>108>109>110>111
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裏には小さく、こんな走り書きが書かれていた。
『感想等はこちらへ』
ttp://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=029002304&ls=50
- 269 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 02:38
- アリッサって処女?
- 270 名前: ◆/qbKINGcog 投稿日:02/10/05 02:54
- >269
(#゚∀゚)ニ○(,,)´Д`)
哈!
(見よう見まねの発勁を叩き込む)
大殲の未成年は、みんな紳士&淑女協定を締結しているのだっ!
だからみんな清い体なの!
- 271 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 02:57
- で、この板でやる意味を教えてください。
それがはっきりしないから集団オナニーとか同人小説とか言われる罠。
- 272 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:01
- >270
紅丸さんですか?
相変わらずわけわからん。
ただ、少しはなりきりというものを考慮してもらいたいんですが・・・・
>271
いや、十分キャラネタしてると思いますけど。一ROMとしては。
- 273 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:05
- >272
例の留さん?
- 274 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:15
- ためぞう
- 275 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:25
- だめぞう
- 276 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:29
- >一ROMとしては。
いちいち、名義するあたりがあy(以下略
- 277 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:30
- 留蔵ハケーン♪
- 278 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:32
- >272
口調同じだからいつもバレバレ。自分は神だ思ってるの?あーあ痛いね。
- 279 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:36
- スキル的には、
アーロン>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ためぞう
- 280 名前:ためぞう投稿日:02/10/05 03:37
- うるさいぞお前らみんなバカだ!
もう大戦なんか飽きたよ!二度と来ないからな!
お前たち大戦キャラハンは煽るぞ氏ね!
- 281 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:39
- ,,-''lllllllllllllllllllllllllllllllllllllll 、
/||||||||||||||||||||||||||||||||||||||ii;、
/ ̄ ̄\||||||||||||||||||||||||||||||||||||ii;゙ヽ,
/ ヽ!!|||||||||||||||| ||||||||||!!,/
/ / ゙!!!|||||||||||| |||||||!!
\____/ ゙゙ヽ、ll,,‐''''""
______
/ `ヽ
/ `、 \ ___|_|」
/ ̄ ̄\ | ヽ / |__ |
'" ̄ヽ ヽ!! |,," ヘ < | |
ヽ ゙!!!、 ,,-' iヽ── / 丿 /
|||l ゙゙ヽ、ll,,‐''''"" | ヽ||||||||| ヽ/
|||l ___,,,,,, ゙l ,,,,, \||||||||| _
||!' /ヽ、 ;::''“”“~`゙>┴<;''“”~` /\ |'" ̄| | |
\ / |ミミヽ──‐'"ノ≡- ゙'──''彡| |、 | | | |
 ̄| |ミミミ/"~( ,-、 ,:‐、 ) '彡|| |、/ / | |
ヽ、l| |ミミミ| |、─\\\\ |彡l| |/ /_ | |
\/|l |ミミミ| \_/ ̄\\\\''|l/  ̄/ | |
\ ノ l|ミミミ| \二二\\\\ フ | |
 ̄\ l|ミミミ|  ̄ ̄ ̄\\\\ \ | |
| \ ヽ\ミヽ  ̄ ̄"' \\\\ / |_|
/ \ヽ、ヾ''''ヽ、_____//\\\\ /
/ ヽ ゙ヽ─、──────'/| \\\\ ̄/
. / ゙\ \ / / \__\\\\
───'''" ̄ ̄ ゙゙̄ヽ、__,,/,-'''" \\\\
- 282 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:40
- >>270>>271>>272>>274>>275>>276>>277>>278>>279>>280>>281
留蔵が悔しがって荒らしてる?
ワラタよ。ある意味。
- 283 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:41
- >282
そういうお前がためぞ(略
- 284 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:42
- >>282
留蔵が悔しがって荒らしてる?
ワラタよ。ある意味。
- 285 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:43
- いや、留蔵はお前たちだ!そしておれ達だ!
- 286 名前:以上、自作自演でした。&rlo;AYONIHSOY:DI &lro;投稿日:02/10/05 03:44
- ┌──────────┐
..┌┴──────────┴┐
.. └┬──────────┬┘
│ ..│
│ 吉野家 .│
│ .. │
│ 牛丼・並 .. │
│ ..│
\_________./
- 287 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:44
- だめぞう
- 288 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:45
- ∧_∧ 誰だよこんなところに
( ´∀`) 留蔵捨てたのは
ズルズルズル し つ
∧∧ノっ/ ∧ ヽ
................(;-:;゚::)っ(__)(__)
- 289 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:45
- >286
微妙に懐かしいネタを出すという事は…
貴様、『名無しの常連』かァ!!
- 290 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:45
- 結論:
「留蔵はみんなの心の中に居る。」
- 291 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:46
- 留蔵〜…まだ生きていたのか(w
- 292 名前:271投稿日:02/10/05 03:47
- 結局祭りですか…
このシリーズも吉野屋スレの分家みたいなもんでファイナルアンサー?
- 293 名前:以上、自作自演でした。&rlo;OPNITOSUK:DI &lro;投稿日:02/10/05 03:47
- 何か?
- 294 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:47
- 吸血の人気コテ=留蔵
- 295 名前:留蔵投稿日:02/10/05 03:49
- ていうかどうでもいいよ興味ないからねさっさとお前ら寝たら?
- 296 名前:(□一口)ゲンドゥ ◆2LEFd5iAoc 投稿日:02/10/05 03:49
- >293
いえ、特に何も。
- 297 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:49
- ああどうしよう誤爆してしまった。
ごめんなさいもうきません。
- 298 名前:以上、自作自演でした。&rlo;wgl9XuKg:DI &lro;投稿日:02/10/05 03:50
- test
- 299 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:50
- >295
>297
騙りと見せかけた本物のとめぞうの自作自演?
- 300 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:51
- Tくんはもう寝ました。
彼がアーロンの騙りでも無い限りね。
- 301 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:51
- IDってどうやるの。
- 302 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:52
- 298 :以上、自作自演でした。wgl9XuKg:DI :02/10/05 03:50
test
これってどうやるの?
- 303 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:52
- >298
貴様がその八桁に敢えてこだわる理由を述べよ
- 304 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:52
- >1-1000
君達、ぼくの名を語られては困るんだ。
ぼくの顔にどろをぬるような行為はやめてくれよ。
- 305 名前:以上、自作自演でした。&rlo;uozemot:DI &lro;投稿日:02/10/05 03:53
- test
- 306 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:53
- ここに居そうなコテ:
だめぞう
名無しの常連
ほか、吉野屋関係者
- 307 名前:以上、自作自演でした。&rlo;wgl9XuKg:DI &lro;投稿日:02/10/05 03:54
- >301-302
mail欄にfusianasanと入れる。そして、投稿したい文の一行目に、IDにしたい文字を入れる。
これだけ。
- 308 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:54
- >306
大殲のひとはいないの?
- 309 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:55
- フュージャネイザン
- 310 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:55
- >302
かちゅでレス番指定すると答えがみえてくる
- 311 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:56
- >308
何となくのリストだから本気にしないように。
大殲関係者=吉野屋関係者の可能性もあるが。
- 312 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:57
- たいせんの人々はこの時間でも平気で起きてるのでつか?
- 313 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:57
- ベニマル兄さーーーん!!
- 314 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:57
- >312
粘着なので、全然OK。
- 315 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:59
- ベニマルって結局なんの作品の人?
- 316 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 03:59
- 二階堂だとしたら、
KOFだろ?
あとは知らん。
- 317 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:00
- >315
オリキャラ
- 318 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:02
- 大殲ってオリキャラOKなのか。
じゃあスタンド使って戦っていい?
- 319 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:03
- おい、ここには漏れと駄目蔵とお前の三人しかいないぞ
- 320 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:03
- 闘技場ネタかよアーロン!!
- 321 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:03
- 留蔵のスタンド能力ってなんなんだ?
あいつもスタンド使いなんだろ。
- 322 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:04
- >318
うそだよ。
EATERだよ、EATER。
ちょーのーりょく少女青子が出てくる。
- 323 名前:あぼーん投稿日:あぼーん
- あぼーん
- 324 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:07
- で、結局留蔵は何がしたいのさ
- 325 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:09
- >324
それは俺も知りたいなアーロンよ
いや、だめぞう?
- 326 名前:あぼーん投稿日:あぼーん
- あぼーん
- 327 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:10
- 留蔵は吸血掛け持ちキャラハンを晒せ!
- 328 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:11
- >323
なかなかいいAAですね。
そこで今日あなたにあることを教えようと思います。
このネット社会は世界中に広がってますよね?
そこでそのAAを全世界に発信するコマンドをアメリカ技術者が作ったんです。
その名はプログラムfusianasan(フュージャネイシャン)。
名前欄にfusianasanと入れて、メール欄にそのAAの名前を入れる。
これで発信は終了します。
まず、アメリカにある世界メディア管制センターという場所に送られます。
そこから全国に発信されるわけです。
fusianasanとは、ロシア語で「完全なる情報送信」という意味です。
また、もしそれが優良だと認定されれば、アメリカで売られている
「Great AA 2000」誌に載せられます。
ちなみにモナーはこれに載りました。
あなたも名前欄にfusianasanと入れて、
世界各国を揺るがすメディアの星になってください。
- 329 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:11
- ロゼット=留蔵だろ
- 330 名前:以上、自作自演でした。投稿日:02/10/05 04:13
- シグマ=リナ=留蔵=ロゼット=クロノ=セリオ
異論は?
- 331 名前:おい、ID出したいそこの君!投稿日:02/10/05 04:14
- 以上、自作自演でした。&rf&ru&rs&ri&ra&rn&ra&rs&ra&rn&&rrlo;(ここに好きな文字を入力。ただし、逆に表示されるので、右から左に書き込む事。)&&rlro;
これでIDが出るぞ。
- 332 名前: